世界を巡るルニア4

 助け出せたのはこの城の人達の一部と、王と王妃、それから王女のハーミアだけ

 街の人達はとっくに魔物たちに食べられてしまっていた

 そこら中にその残骸が見えてたから、そうじゃないかって思ってたんだけど

 ハーミアや王にとっては本当に悲しい結果

 国は民がいなければ成り立たない

 とまぁ悲観するのはここまで

 何せ今ここに私がいるというのが幸いしたわ

 死体はもはやただの残骸でどうしようもない

 魂だけになってしまったこの国の住人達

 でも、私の権能である破壊と、異放の力が合わされば死という概念を一度だけ破壊できる

 この力は死んでしまったものを一度だけ死の概念を壊してこの世に呼び戻し、再び生を与えるというもの

 理不尽に奪われた罪なき清浄な魂

 それを呼び戻して再び肉体を与えるの

「さぁいくわよ。アスティラちゃん少し離れてて」

 この力の魔力にあてられてアスティラちゃんの体が裂ける可能性があるから、少しの間離れててもらう

「これ成るは大いなる大秘術! 神々すら今はその力を失った世界の理を外れるもの!・・・。ありがとうツキ、あなたの力のおかげでこの力が使える。さぁ理不尽に散らされた魂たちよ! 蘇りなさい!」

 街中にあふれていた魂が視認できるほど輝きだして形を得る

 体が再生されて人々は自分達の死んだ場所で蘇った

「これでよし、まだ目は覚まさないだろうけど今のうちに一気にやっておくわよ」

 私はパチンと指を鳴らすと街並みが元通りに戻る

 ふふふ、前よりも綺麗にした自信があるわ。これぞルニアクオリティ!

 美しい街並みね

「こ、これは、まさか女神様が」

「あら、目が覚めたのね。もう少し休んでいなさい。まだ体がエルフに戻ってから順応してないからね」

「は、はい、ありがとう、ございます」

 よかった、笑顔で眠りについてくれたわね

 この子、心に深い傷ができたと思うけど、これなら大丈夫そう

「さてアスティラちゃん、あの街に戻るわよ」

「え? 王達が目覚めるのは待たないのですか?」

「めんどくさい」

「めんど、くさい、ですか・・・」

 十中八九崇められるのが見えてるからね

 それにしてもあの袋の中から出てきたのはこの城のエルフたちだけ

 肝心の王女を魔物に変えた奴らがいなかった

 てことは逃げたに違いないわ

 またこんなことを起こさないとも限らないし、不安の種は取っておくに限る

 というわけでいったん街に戻ったんだけど、まあ案の定ここにそいつらの情報はないわね

 分かり切ってたから私は一人で探すことにした

 あの王女に埋め込まれていた宝石、魔核

 あれが一つであるはずがない

 気配は覚えてるからその気配を辿れば見つかるわ

 

 みんなには街で待ってもらって私は一人でその気配を追う

 すると王都からさらに東に抜けた先にある森の中に大きな館が見えた

 その館からあの魔核の気配と同じ気配がする

 少し外から透視して様子を見てみると、ここは研究施設みたい

 中には王女と同じように人間から魔物へと変質された人が何人か鎖に繋がれている

 声を盗み聞くと

「王女の失敗のおかげで問題点が洗い出せた。これで俺たちもいよいよ侵略に乗り出せるぞ」

「ああ何せ魔核は無限に作れるからな。これも全てあの方のおかげだ」

「あの方って誰よ」

「そりゃあベルディス様に決まっている。これで、世界は俺たちのも・・・。誰だ貴様!」

「通りすがりの女神ですよろしく~」

 挨拶もそこそこにその施設を全部破壊。魔物に変えられた人たちも魔核を丁寧に取り出して人間に戻しておいた

 それからこの施設の馬鹿達は全員縛って檻に閉じ込めておいたわ

 恐怖する馬鹿どもに話を聞くに、こいつらを支援していたのはどうもウル臭いわね

 ローブを常にかぶってたから顔は知らないって言ってるし

 でもいたのが数ヵ月前か、もういないわねコレ

 全く本当にろくなことをしない!

 早々にウルは片付けないと

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