神と鬼神9

 そこでは巨大蜘蛛に襲われている妖精のような少女がいた

 声から察するにこの子が歌を歌っていた何かの正体だ

 凄くきれいなんだけど蜘蛛にとってはエサでしかない

 糸でからめとられそうになっているところを糸を切って助け出す

「エルヴェレス、ニトフェナ?」

 やっぱり何を言っているか分からない

 おかしいな、僕らにはサニアさんの翻訳の力が働いているはずだ

 どこの世界だろうとこれで言葉が分かるはずなのに

「リディエラちゃん! その子を連れて下がっててください!」

 ハクラちゃんは刀をすでに抜いていて蜘蛛の足の一本を斬り飛ばしていた

 そのまま二本目三本目を斬り、下にもぐりこんでお腹を切り裂いた

 ビシャァ!

 あ、ハクラちゃんが蜘蛛の体液でドロドロになっちゃった

「ひぃいいん、ぐちゃぐちゃですぅ」

 う、臭いが・・・

 ひとまず水を魔法で出してぶっかけておいたけど、あとでお風呂に入れよう

 それで助け出した妖精?なんだけど、蝶のような羽に複眼のような目、体や顔は人間とほぼ変わらない姿をしている

 でも言葉はまったくわからない

「これはもしかすると」

 サニアさんに何か心当たりがあるみたいだ

「この子は外世界から来た知的生命体なのかもしれません」

「外世界?」

「ええ、この世にはたくさんの世界がありますね?」

「うん」

「それは大世界という世界の集まりでひと塊に数えることができます。そんな大世界はここだけではなく、他にもあるのですよ」

 つまり今僕らがいるこの世界や僕の世界、地球なんかの世界が寄り集まったものを大世界といって、そんな大世界は他にもたくさんあるんだとか

 かなり大規模な話になるけど、この妖精らしき少女は別の大世界からこっちの大世界に紛れ込んだかもしれないとのこと

 そんなこと通常はあり得ないんだけど、かつて全ての世界を消そうとした異放者という者には可能だそうだ

 でもその異放者はもういないし、他にいるリルカさんやメルカちゃんもそんなことはしない

 とにかくこの子の話が分からないことにはどうすればいいのか分からない

 サニアさんもほとほと困り果てていた

「エシュアラロルベナッテ、レリンクルエロシタナッテ、テレリオンニトフェナ?」

 助けたことで飛びついて喜んでくれてはいる

 感謝を伝えてくれてるのもわかるんだけどこれは結構コミュニケーションに苦労しそうだ

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