アモンの旅5
世界についたとたん仙力の流れに圧倒されそうになる
この世界は魔力の代わりに仙力が溢れており、アモンには住みにくい場所だった
魔力がほとんどない世界であるため、力を消費した後魔力を回復するのに時間がかかる
悪魔たるアモンの弱いところだ
「この世界に仲間たちが・・・。きっと助ける」
魔力が少ない世界であるため探知は効かない
そのため聞き込みでしらみつぶしに探すしかないのだが、懐にしまったブローチを思い出して取り出してみる
淡く光っている
このブローチが光る世界は妖精がいることを示しており、呼びかけることで召喚することができるのだ
「えーっと、妖精たち、誰か僕の問いに答えてくれないか?」
話しかけてみるとブローチがさらにまばゆく光り、そこに大きな蝶の羽をはためかせて一体の妖精が舞い降りた
「呼びました?」
その妖精はエインセルという妖精種で、妖精の中でも上位に位置し、妖精王や妖精女王と共にいることが多い存在だ
リディエラのお付きの妖精たちもそのエインセルたちである
「その、このブローチを」
「それは! そうですか、あなたが優しい悪魔さんなのですね。エティン様に聞いています。仲間のことですね?」
「はい、どこに囚われているか分かれば一人で助けに行きます」
「それはいけません。聞いたかとは思いますが、この世界はウルという危険な者たちに襲われています。実力派だった仙人たちも半数以上がやられてしまいました。今のあなたではただイタズラに命を散らすだけです」
「でも! 助けに行かなきゃ仲間たちが!」
「落ち着いてください。貴方には世界の種が植え付けられていますね?」
「あ、ああ、そういえばアウルってやつがそんなことを言っていたっけ。仲間たちはそれで力が発芽したみたいなんだけど。僕は元々悪魔だ。力を得たように見せていただけで、この種は芽吹いていないよ」
エインセルはふむふむとうなづきアモンの胸に手を当てる
「この種は、あなたの中であなたに力を貸そうとしています。あなたは無意識にそれを拒絶しているようですね」
「無意識に拒絶? いや、どうせ僕には芽吹かないよ。僕は悪魔だ。人に仇成す悪魔なんだ」
「ですがあなたは人を好み、人を助け、悪魔と決別しました。種はその行いに答えようとしています。耳を澄ませなさい。きっとあなたに答えてくれます。そうすればこの世界のウルなんて敵ではないはずですよ」
エインセルは視る妖精だ
アモンの中にある未だ種のままの世界の種を見抜き、そして種が芽吹こうとしていることも理解した
アモンは目をつむり、拒絶していた自分を律して種を受け入れる
その瞬間、アモンの中で眠っていた種が発芽し、アモンに新たな力を植え付けた
「これは」
「はい、それがあなたの新しい力。きっと仲間たちを助ける手助けになるはずです。ウルの拠点はここから西に六十キロほど行った街にあります。元々仙人たちの街だったのですが、すでにその街の人々は戦って死んだか、別の街に逃げています。思いっきり戦っても被害は出ないはずです・・・。どうか、彼らの敵も取ってください。仙人たちは自然を大切にし、妖精たちとも仲が良かったのです」
「分かった。きっと僕がこの世界を解放してみせるよ!」
かたく握手を交わしてからアモンはぐっと一足を踏み出した
今までとはくらべものにならない速さで走れることに驚きつつ、彼は西の街へ急いだ
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