神と白黒鬼神29

 そのとたんだった

 この世界から不快な何かが消えた感覚が全員にあった

「これは・・・。全く分かりませんでした。まさか悪意を広げて洗脳を」

 サニアはどうやら気づいたようで、その洗脳があの紳士風の男の力であることが分かった

 全世界に竜は悪しき存在で狩らなければいけないという洗脳を施していたのだ

 世界そのものにかかる洗脳

 神でもここまでの力は無理だろう

「やはり大幹部は侮れません。でもこの世界はどうやらもう大丈夫のようです」

「ハッ! 仲間たちを見てきます!」

 紳士が指し示した洞穴に走るフラザニア

 紳士の言うことが本当ならばその洞窟で竜たちは無事生きているはずだ

 あくまでも紳士の言葉を信じるならばだが

 

 洞窟は意外と近くにあり、フラザニアは慌てるようにその中へと入って行った

 中では人間化した竜たちが気絶した状態で横たえられており、誰一人として怪我はしていないようだった

 どうやら竜の力を消す魔法も彼らを傷つけるものではなかったようだ

 紳士風の男はその見た目通り紳士的に彼らを捕縛していたのだ

 何かの目的のために


 しばらくして目を覚まし始めた仲間の竜たちに抱き着き涙を流すフラザニア

「ああよかった。皆無事だったのね!」

「あ、ああフラザニア、助けに来てくれたのか。君ならきっとやってくれると思ってたよ」

 同じ海竜である仲間たちや、陸竜、空竜たちも自分達を救ったフラザニアを称えた

 そんな中洗脳の解けたエルフたちが洞窟までやってくる

 彼らは一斉に竜に膝ま付いて頭を地面に擦り付けるほど謝り倒す

「申し訳ございませんでした! なぜこのようなことをしたのか、今では自分で自分たちが信じられないです・・・。この罰、いかようにも」

「いいえ、あなた達は操られてやらされていたにすぎません。愛しいヒトの子ら、私達はあなたを許します」

 どこから現れたのか、ひと際光る美しい女性が現れた

「竜神、様」

 フラザニアの言葉で彼女が竜の神であることが分かった

 この世界の竜はみんな彼女の眷属、つまり子供達だ

「め、女神様!」

 エルフたちも彼女を神と認知している

「ありがとうございました、サニア様、それに若き神々のみなさん」

「このフラザニアさんが助けを求めて世界を渡っていなければ、私達にはしれないことでした。ですので、お礼ならこの子に」

「ええ、フラザニア、よく頑張ったわね」

 ママだ。この女神ママだよ完全に

 見てたら僕も母さんに会いたくなってきた。久しぶりに召喚してお話しようかな?

 

 そんなこんなで無事フラザニアさんの世界は救われたわけだけど、あの紳士がなんで竜を集めたのかは全く分からなかった

 何せ竜たちは何かされている間ずっと気絶していたらしいからね

 特に体に異常もないことから問題はなさそうだった

 木にはなるけど、またあの紳士に遭遇したとき聞いてみよう

 ウルだけど、あの紳士はまだ話ができそうだからね

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