逸脱した女神13

 心配なのは自分達のことではなく姉や姪っ子のことだ

 自分は異放の力を手に入れてウルの大幹部にだろうと対抗できる

 だが姉は一女神であり、姪っ子も新米女神となったばかり

 愛しい家族である二人を守りたい

「でもだめ、私は私の戦いをしなくちゃ。お姉ちゃんもリディエラちゃんもきっと大丈夫」

 自分に言い聞かせるように独り言を言い、次なる世界へ行くための門を開いた

 神宮司やえりか達に見送られながら門をくぐる

「さて、次はどんな感じなのかしら?」

 門を閉じてから周りを見回してみるとうっそうとした森の中だった

 のどかな鳥の声が聞こえ、時折鹿のような可愛らしい動物も顔をのぞかせている

(あらら、はずれじゃないこれ? 動物ばっかだよこの世界)

(いいじゃない平和で。大当たりよ)

 脳内会話で意見が食い違う二人

 だがそれ以上は言い争わなかった

「今感知してみたけど、この世界は動物しかいないわ。ウルもいないし平和な世界みたい」

「おお、それなら女神様もゆっくりできますね」

 ラエトリアは働きづめのルニアを心配しているようだが、ルニアはまったくと言っていいほど疲れてはいない

 それどころか異放の力によって調子がいいくらいだ

 和気あいあいと話していると突如ルニアの感知に引っかかる世界の外から来る者があった

 それは世界の壁を突き破り、隕石のようにこの世界に振ってきたようだ

「何か来たわ! 三天、戦闘態勢!」

 三天は翼を広げるとルニアの指示に従って直ちに戦闘準備を整えた

 その何かはまっすぐこちらに向かってきているようで、ルニアは最大限に異放の力を使ってそれの突撃をガードした

 まさに隕石の衝突と同じかそれ以上の出力でぶつかって来たが、ルニアのガードの方が固くそれは数メートルルニアを後退させただけで止まった

「止められたか。アウル様の命令でお前を殺しに来た」

 漆黒のローブを着た男

 男はすぐにローブを脱ぎ捨てると構える

 格闘を使うようで特に力は感じなかった

 そのためルニアは相手を弱いと錯覚してしまった

 自分なら勝てると、何の力も使わない者に負けるはずがないと

 その一瞬の油断がルニアの胸を穿った

 異放の目でも見えない光速の一撃でルニアの胸に穴が開いていた

「あれ?」

 ドプッと出る大量の血液

「ぐふっ、あ、あぁ・・・」

 あまりに突然のことで膝から崩れ落ちるルニア

 男の手にはルニアの女神としての核となる部分が握られていた

「ふむ、これで終わりか、あっけないな」

 男はその核を砕き、そのまま空を仰ぐと軽くジャンプするかのように空の彼方へと消えてしまった

 ルニアはそのまま全く動かない

 突如奪われたルニアの命

 三天もソラもラナも動けず愕然とした

 動かない

 ルニアの体から出る血の量が絶望的な状況を語っていた

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