世界に選ばれし者たち13
エーテは考えていた
ウルを倒すためには強力な力が必要だ
確かに自分たちは世界の種に選ばれて力を手に入れたし、アモンは悪魔だ
そこいらの敵ならば特に労せず倒せるだろう
しかしながらウルの幹部は自分達と同じくらいの強さかそれ以上
「壁を突破する必要があるねぇ」
一人トイレに籠ってつぶやくエーテ
落とし紙で拭き個室を出ると宿から外に出た
「やあやあお待たせ、さぁ行こうか次の世界へと」
エーテのトイレ待ちだったが全員がそろい街の外へ
街中で転移門を開けば当然騒ぎになるための配慮
街の外から少し離れた茂みに入るとアモンが門を開いた
「あれ? マリーちゃんとライナは?」
「ホントだいない」
突然二人がいなくなっていた
街に戻って二人を探すが目撃者もいないらしく、二人は本当に忽然と姿を消してしまった
「心配だ。僕、他の街も見て来るよ」
アモンは怖がられないよう姿を消して悪魔へと戻り、空中へ飛びあがると空から二人を探し始めた
悪魔の契約をしているためライナとは繋がっている
それにもかかわらず全くと言っていいほど彼女とのつながりが感じられなかった
考えられる理由は二つ
一つは既に別世界に行ってしまった
そしてもう一つは
二人共すでに死んでいる
考えたくはない結論だが、悪魔の契約は契約者が死ねば回線が切れて気配を感じれなくなる
異世界にいれば同じ世界に行けばまた回線は繋がる
「どうやらこの世界にいないみたいだ。恐らく攫われた・・・。くそっ! 僕がついていながら」
恐らくだが二人が攫われた理由はマリーだろう
マリーの記憶には封印がかけられている
その記憶には必ず何かある
エーテは考えていた
ウルでは攫われた子供達が洗脳や改造によって支配されていいように利用されていた
それにもかかわらずマリーは記憶のみを消されている
彼女の力は時に関する強力すぎるもの
それを記憶だけ消して放り出すなどどう考えてもおかしいのだ
(マリーの記憶はウルの仕業じゃあないさねぇ・・・。裏で誰かが動いてると考えた方がいいねぇ。今言うのは少し無理そうだね。私の中でとどめておくか)
二人がどこに攫われたのかは分からないし目撃証言もない
忽然と姿を消した二人を探すためにアモンは転移門を開く
(僕が少し目を放したばかりに二人が・・・。この責任は必ず取る)
転移門から出る
灼熱の太陽が地面を照らし、その反射熱でさらに熱くなっているようだ
ここは砂漠が一面に広がる世界
あまりの熱さでりえが倒れそうになりふらついていた
自分で結界を張ろうにも力が出せないほどに一気に体力を奪われた
「ふむ、気温六十三度、生物が住める温度じゃないねぇ」
汗をかきつつも白衣を脱がないエーテはアモンに結界を頼んだ
アモンはうなづくとすぐに結界を張った
りえの周りには二重に張っておく
それによりようやくりえも落ち着いた
この中で一番小さなりえだからこそ体力の減りが激しかったようだ
「さぁてねぇ、この世界はあっついねぇ。私が調べたところによると生命があまりいない世界みたいだよぉ」
灼熱の大地に覆われた不毛の世界
まるでウルによって既に滅ぼされた世界かのようだった
だが多少の生命はいる
その生命が知識生命体であることを信じて彼らは歩いた
ただひたすらに歩いた
だが歩けども歩けども生命の痕跡すら見つからない
「もう、ダメ、です」
やはりりえが真っ先に倒れた
備蓄していた水を与え、ここからはアモンが背負って歩くことになった
汗で背中が濡れるがアモンはまったく気にせず、りえを優しく背負う
歩き始めてから数時間後、エーテとレノンナがフラフラになる
このままでは全員が倒れると思い一番体力的にも勝っているアモンがどこかに休めるところが無いかを探しに行くことに
「じゃあ行くよ。すぐ戻るから三人を頼んだ」
「ああ、お前も気を付けろよ」
三人の少女をアーキアに任せてアモンは翼を広げた
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