守り人3

 次女ニニミミは手に持った本をめくりながら今時分がいる世界について調べている

 彼女の生体武器である覚本NNMMは自分の存在を隠し、さらに様々な事柄を調べることができる

 本に書かれたこの世界の事柄は種族間でのいさかいが多い世界だと分かり、一番弱い種族は人間のようだ

 ただこの世界では人間は希少価値があるようで、全ての種族によって保護されているらしい

 ペラペラとページをめくるニニミミ

「ふむ、種族間の抗争、エルフとドワーフの同盟と獣人、魔族、翼人族の同盟による戦争状態ですか。原因は人間族の保護をどの種族が優先的に行うか・・・。確かに人間族は他世界に比べて圧倒的に少ないようですね。その弱さと文明を発展させる発想力、他種族は人間を保護して自分達の文明を発展させたいのでしょう。そこはまあ思考回路としては当然でしょうが、文明は発展すべくして発展するもの。独占するものではありません、が、世界の事情に突っ込むべきではないでしょう」

 ニニミミは争いは嫌いだが、世界を変えるようなことはしない

 その世界世界の事情はその世界で解決すべきだと考えているからだ

 本を閉じると自分のいる街を見回す

 この街は主に獣人が暮らしているようで、様々な動物の耳を持ったヒト種が歩いている

 特に珍しい景色でもないためニニミミはそのまま他にこの世界特有のものではない問題が起きていないかを本を使って調べ始めた

 だがそのとき、いきなり後ろから走ってきたやせ型の男によって本を奪われた

「あら、盗られちゃいましたね」

 冷静に本を持っていた手を見つめて今の状況を自らに言い聞かせるようにしてため息をつく

「戻って来なさい」

 一言そう言うと本は再び彼女の手の中に戻った

 生体武器である彼女の本は少し離れると自動で元に戻る

 そのため盗まれようが落とそうが問題ない

「えーっと、問題は何かないかしら?」

 この国にある問題点を色々と記していく本

 そのほとんどがこの世界特有のものばかりで大した問題ではないとニニミミは考えた

 だがやはりいくつか気になる点もある

 この街から西にある別の街にフードを被った数人のあやしい人物が現れ民衆に何やら吹き込んでいる

 魔族の国でも同様に数人のフードが何かを民衆に吹き込んでいるらしい

 それは戦争に関することだった

 人間を巡った争いをさらに大きく発展させるような言動により世界が荒れ始めている

 エルフ側も同じように吹き込まれているようで、今にも大きな戦争が起きそうだ

「はぁ、全くもう、本来なら私は主様のために働くのですが、異世界人が他世界を脅かすというのならば許してはおけません。主様のお母様が作り出した世界ですからね」

 本をぱたりと閉じてしまう

 そしてその場から消えた


 隣町

 フードを被った者たちが裏路地で何やら話している

 その中心にいきなりニニミミが現れた

「え?」

「な、え?」

「うわっ!」

 それぞれが別々の驚く反応を見せる

「本来は私の仕事ではありません。ですがあなた方の好意は看過できませんね」

 ニニミミはその場にいた四人を本の中に閉じ込めた

「しばらくこの中で反省してください。それから・・・」

 ニニミミは本を天にかざすと力を解き放った

「この者たちが言った事はすべて忘れなさい」

 街に広がる力

 それにより住人達は吹き込まれたこと全てを忘れ去った

「さて次は魔族の国ですね」

 その他の国や街でも同様にフードを被った怪しい者たちを本に閉じ込め、住人達の記憶を消していった

 この世界で全てのあやしい人物を捕らえ、人々の記憶を消したところでニニミミはまたふぅとため息をついた

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