利善とレイドの異世界旅13
最初の地点に戻ってみたが、どこにもあのウルたちの気配がない
「おかしいわね。見張りくらいは立ててると思ったけど」
アインドーバは周囲を警戒してみる
彼は炎の力の持ち主だが、その目は熱源探知までできる
暗闇の広がるこの世界ではもってこいの能力である
本来ならクルルが探知などをする役割であったが、現在完全に子供に戻っているクルルでは役に立てそうになかった
それでアインドーバが警戒はしていたのだが、どういうわけか一人もこの場にいない
まわりにはおかしいくらいに誰もいないのだ
「ふむ、アインさん、そのまま見ていてくれないか? 少し周りを探ってくる」
「ええ気を付けてね利善ちゃん」
利善はスッと立ち上がるとクルルがぱちりと目を覚ました
「あれー? 利善どこいくの? クルさんも行きたい~」
「駄目だ師匠、危ないから」
「やだ行く! 行くの! クルさんも行くーー!!」
ギャンギャン泣き始めたので仕方なく利善はクルルを抱きかかえた
「いいか師匠、声は絶対に出さないでくれ」
「うん、クルさん声出さない! 指きり!」
指切りで約束してからクルルと共に駆けだす
空間の力で周囲にシールドを張り突然の奇襲にそなえ、さらに空間把握で半径二メートルほどの範囲を探りながら慎重に
クルルも子供ながらに声を出してはいけないことをちゃんと理解し、おとなしく利善の腕にしがみついている
「師匠、何か感じることはないか?」
一応クルルに聞いてみた
「ないよ。何もいないよ」
目をギョロギョロと動かしているクルル
どうやら探知をしてくれているようだ
しかしこの周囲には本当に何もおらず、結局危険もないまま探索が終わった
「いないぞ何も、追手もいつの間にかいないし、どういうことなんだ?」
「あたくしに聞かれてもわからないわよ。あのウルの幹部らしき男、なんか適当だったし、飽きたんじゃないかしら?」
確かに口調や性格などからそれが一番の線だろう
だがこの世界を納めているのはここを闇に包み込んだ大幹部ダート
能力こそ誰も知らず理解できないが、すでに四人は見つかっているだろう
それでもダートは仕掛けてこない
基本めんどくさがりだからである
それでも実力は大幹部になるほど折り紙付きだ
「まあいいじゃない。これで安全にここで仲間を待てるわ」
そうこうしているうちに仲間との待ち合わせ時間となった
突如として開く転移の扉
そこから次から次へと仲間たちが飛び出してくる
「アインドーバ、それに・・・、えっと、あれ? クルルかこのちっこいのは」
「ええそうよ。転移したとたん一度殺されたの。まさかこんな形で復活するなんて知らなかったわ。ねークルちゃん」
「きゃきゃきゃ」
クルルをあやすのが格段にうまくなっているアインドーバ
「さて、君たちが利善、そしてレイドちゃんだね。俺はカーヴィー、今来た部隊のリーダーだ」
カーヴィー率いる闇世界攻略チーム
人数はおよそ三十人で、全員がAランクを超える実力者だ
それぞれが闇払いに特化しているためこの世界でもウルに有効打を与えれるだろう
「心強いです」
レイドもこれほどの仲間たちがいる中で勇気を奮い建てられたようだ
「よし、では反撃開始だ」
この世界にもはやまともな住人はいない
闇に覆われた時住人はいなくなったのだ
ウルへのこの世界からの反撃が始まる
「待って頂戴。ウルの幹部についての分かりうる限りの情報を伝えておくわ」
アインドーバは遭遇したあの幹部についての情報をすべて伝える
その情報をしっかりと頭に叩き込んだカーヴィーは部下達に作戦を伝え、一斉に行動が開始された
しかしアインドーバにはどうにも心に引っかかるものがある
はたしてあの幹部は本当に飽きて持ち場を離れたのだろうか?
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