神と白黒鬼神18

 しかしいくら飛んでも一向に大陸はおろか島らしきものも船も見えない

 本当に人がいないかのような世界だ

 そんな中ふとハクラちゃんが言った

「これってもしかして海の中に世界があるってことはありませんか? ほら、人魚の国みたいに」

 僕らの世界の人魚の国は確かに海底にあった

 てことは水中で生活できる種族がこの世界にいるというのは大いにありうる

「確かにその可能性には思い至りませんでした。探知をさらに深くしてみますね」

 どうやらサニアさんは海面にしか探知を向けていなかったらしく、その表面近くにいた生物くらいにしか反応していなかったみたいだね

 僕らは空中で止まったままサニアさんの探知が終わるのを待った

 そして数分後

「なんと、ハクラちゃんの言う通りでしたね。この下には広い街が、いえ国があるようです。住人も驚くほど多いようですよ」

 サニアさんはかなり嬉しそうだ

 なんでも昔から人魚たちが好きなんだそうで、人間だったころに一度だけ読んだ人魚姫の話が忘れられないらしい

 なんだかんだサニアさんも一人の女の子、歳は・・・、数万歳を超えているけど見た目相応の考えも持ってるってことだね

「さぁ行きましょう! メトちゃんは私の力で水中でも活動できるようにしておきました」

 速い、サニアさんはあっという間にメトちゃんに水中活動用の能力を授けると、メトちゃんを抱っこしながら水中に飛び込んでしまった

 それに続けと僕、ハクラちゃん、そしてクロハさんが飛び込んだ

 ザボンと一気に飛び込んだけど、僕らは精神生命体だから水にぬれようが空気が無かろうが特に問題ない

 まわりに神力や魔力などと言った力さえあればどこだろうと活動できるのですよ

 そして水中の中を下へ下へと進むこと約一時間

 予想以上に深い場所にその国はあった

 どこまでもどこまでも 広く広がる広大な街並み

 そこには人魚やマーマン、ダゴンらしき種族やらスキュラ、ウミヘビの獣人みたいな人、たくさんの水中に関する種族が集まって、超巨大コロニーを形成しているみたいだった

 彼らは特に僕らを警戒する様子もない

 ああそっか、ここには鬼人が水中に適応した種族や、鰓のある人間、水の精霊や妖精なんかもいるんだ

 そりゃ僕らを見ても全く驚かないわけだ

 それに珍しどころでは翼の生えた人も見かける

 その翼、どうやら鱗が変化したものらしくて、ヒレのように動かして水中を泳いでるんだ

 うん、海に適応した多種多様な種族がいるんだね

「面白い進化をしていますね。海しかない故に全ての知恵ある種族が水中に適応したのでしょう」

 サニアさんの見解は多分当たってるんだろう

 僕らはそんな彼らにイロイロと話を聞きつつ街を見て回った

 さっき僕がコロニーを形成していると表現したのは、この世界は一人の女王によって統治されていて、その女王の元全ての種族が平和に暮らしているからだ

 一人一人に仕事が与えられていて、それぞれの長所を生かせる仕事につけているらしい

 子供時代はその才能を見つけるための訓練が行われてるんだって

 女王の名前はキュリアラス女王と言って、リヴァイアサン族という人型リヴァイアサンらしい

 まだ若いけどその才覚はまだ若くして亡くなった先代を凌いでいて、国がより良くなるよう導いているらしく、賢王と呼ばれているようだ

 幼賢王、是非とも会ってなでなでしたいところ

 思わずほくそえんでいると

「あのリディエラちゃん、気持ち悪い笑顔してますよ」

「んえ、あ、いやその何でもないよ」

 ハクラちゃんに見られてたか・・・。気を付けないと

 いや僕はただ可愛い子供を見守るのが好きなだけだよ?

 子供は精霊たる僕らにとって守護対象だからね

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る