勇者の成長16
次の日のこと
リコの力を試そうとした矢先にキーラとリドリリが慌てた様子で訓練場にやってきた
息を切らしつつ、駆け込んできた二人は切迫した表情で、アイシスもそんな二人の様子を見てただ事じゃないことが分かった
「何があった?」
「街に、街に超巨大な魔物が突如飛来したんです。あれは魔法などでどうにかなるような大きさを超えています。恐ろしい、このまま魔国は滅んでしまうのでしょうか?」
その魔物を見てきたのであろう二人はかなり怯えていた
キーラに至ってはショックすぎて何も話せないような心理状態にまで陥っている
「俺が行く。二人は人々を安全な場所まで避難させてくれ」
アイシスは訓練場から飛び出すとすぐにリコの力で黄金の鎧をまとった
いきなりの全開放である
超巨大魔物の魔力から感じ取ったのか、今すぐにでも排除しなければ魔国は滅びるであろうことが彼女にもよく理解できたのだ
やっと瘴気が消え、他国との交流も順調に進み、魔族たちも世界に受け入れられてきたところにこの脅威
アイシスは怒りを静かに蓄え、その魔物を目に見据えた
「でかいな。頭は雲にまで届いてやがる。八つの頭・・・。ヒュドラに似てるが何なんだあれは」
正体が気にはなるが、アイシスは雷を体に流して光の速さで動いた
リコの力はその速度と雷、そして生体武器だ
その力を発揮したとき、アイシスの体から刃のついた棒、なぎなたのような武器が握られていた
彼女は武器を一振りしてみる
「なるほど、まるで長年使ってきた相棒のように手に馴染んでるな。これならあのデカブツとも戦えそうだ・・・。よし、お前の名前はライデンだ」
生体武器に名前を付けたことで、ライデン自体も喜んでいるかのように輝いた
生体武器は使用者が実力をあげることでどんどんと進化する武器であるが、すでに自力が高かったアイシスのライデンはすでに神具ほどの力を秘めているようだ
「さぁライデン、俺にその実力を見せてくれ」
バチバチと雷が体とライデンに走ると一振りしただけで周囲に雷がいくつも落ちた
それらは全てがヒュドラのような化け物に当たる
硬そうな鱗に覆われた表皮だったが、その雷によって黒く炭化している
避けるまでもないと思ったのか、予想以上に強力だった攻撃におって魔物は怒りをあらわにしてうなる化け物
その大きな口から毒の霧のようなものが排出されたが、それらは全てトコの力によって浄化された
状況に応じて黄金鎧を切り替えられるようになったアイシス
その力はすでに神と肩を並べられるほどに強くなっていた
「大勇者アイシス! 手伝いに来ましたよ」
浄化している最中に突如声が上空から響く
見上げると桜色の髪を持つ美しい鬼がフワフワと優雅に浮いていた
「あなたは、サクラさん?」
初対面ではあるが、鬼ヶ島に最強の鬼神が帰って来たことは知っていた
そしてその特徴も聞き及んでいる
「そうです! ああまさか大勇者と一緒に戦えるとは思いませんでした。長生きはするものですね」
遥か数万年を生きる鬼神
彼女はこれまで大勇者など見たことがなかった
世界をまたにかける勇者などそうそう誕生するものではないからだ
以前誕生した際は守りの大勇者としてとあるパーティと旅をしていた
その頃はサクラもまだ力が完全に回復していなかったため、その時の危機には参戦してはいなかった
そのためその大勇者のことはしらないようだ
「さて大勇者、この魔物、いえこれは神獣に近いモノですね。名をヤマタノオロチ、伊吹大権現、様々な呼び名がある大厄災です。ですが私とあなたの敵ではありません」
サクラは腰に下げている刀を抜いた
「神明刀、無明」
刀を抜いた動作をしただけ、たったそれだけでヤマタノオロチの首がいくつか落ちた
「すっご・・・」
驚愕でその一言しか出なかった
だがアイシスも負けていない
「ライデン、頼むぞ」
周囲に落ちていた雷がアイシスに集まり体の中で統合され、ライデンへと集まった
その雷を纏った雷電をヤマタノオロチの胴体部へと振り下ろすと、的確に心臓に食い込み一瞬で絶命させた
ヤマタノオロチは神話級と呼ばれる魔物の中でも最強クラスに強いのだが、それを一撃で屠るアイシス
その力はすでにこの世界の守護者であるカイトと並んでいるようだった
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