利善とレイドの異世界旅6

 吾輩の敵は虎の獣人か

 虎獣人とは何かと因縁があるな

 俺は元の世界で英雄と呼ばれたが王にはなれなかった男だ

 王になったのは義弟の虎獣人ガオス

 まぁあいつの方が頭がよかったし、それについては俺も納得している

 いや今はそんなことはどうでもいいな

 俺は世界を守るためにわざわざこうして打倒ウルを目指しているんだ

 義弟だが俺の大事な弟、家族、そして民を守る

 それが俺の使命だ

「どうした? かかってこないのか?」

 虎獣人はどこからか槍を取り出した

「それは生体武器か」

「ああ、知っているようなら話が早い。お前も出せるんだろう?」

 その通りだった

 生体武器は特別な訓練を受けた者がある一定確立で体内から生成できる武器だ

 その力はそれぞれで異なるが、俺の場合だと大剣を生成し、カマイタチのような風を起こせる

 その威力は無類

「大剣、獅子噛み」

「ほお、大剣か、俺は見ての通り槍、虎無槍という」

「貴様は武人のようだが、なぜウルのような悪辣な組織に属している」

「ふん、より強き者と戦うため。それが俺の生きる意味よ」

 これ以上の言葉はいらない

 俺は大剣を構え、相手は槍を構えた

 そして始まる戦い

 俺は剣を振り下ろし、相手はそれを容易く槍で受けた

 成体武器はその意志の強さによって硬さや能力の強さも増す

 この男は相当におのれを鍛え上げているのだろう

 だがそれは俺も同じことだ

「一噛み、大牙!」

 大きく跳ね、上空から刺突する一撃

 ただの槍使い程度なら何が起こったのか分からぬまま死んだだろう

 だが虎獣人はその刺突をなんと槍先で受け止めたのだ

「この程度か。つまらん、死ね」

 槍で押し返される

 この膂力、俺よりも強いかもしれん

 しかしそれだけだ。俺の生体武器は意思が強ければ強いほどその能力をどんどんと上げていく

「俺の心が折れぬ限り俺は負けることはない。空撃天噛み!」

 風の力が大きく虎獣人を包み、体中に傷ができる

「ぐ、中々やるようだな。俺に傷をつけるとは」

「ここまでだ。お前じゃ俺には勝てない。槍を納めてウルから足を洗うなら見逃してやる」

「ハハハ! そんなわけないだろう! 俺はまだまだ強き者と戦うのだからな! お前よりも!」

 虎獣人は槍をクルリと回転させると俺の天噛みを消した

 そのままの勢いでこちらに突っ込んでくる

「神殺しの槍、一槍啄み!」

 速い! 俺の目で追えないだと?

 いくつから皮膚をかすめ俺も血を流す

「薄皮が切れた程度だな」

「ハハハ、もうお前は終わりだ。俺の武器がかすったな」

「まさか毒か?」

「そんなこざかしい真似などするわけないだろう? 俺の生体武器は少しでもかすれば殺すまで止まらぬ突きを放つことができる。さぁ死ね、俺に生を味合わせてくれ!」

 虎獣人が槍を突き出した

 とんでもない速さで連続での突きが俺を襲う

「く、ぐぅ」

「オラオラオラオラァ!」

 このままではまずい

 俺が、負ける? だめだ、そんなことを考えては

 意思を強く持て

「意思を強くだ!」

 大剣でガードしていたのを解くと槍が突き刺さるのもかまわずそのまま振り抜いた

 虎獣人はそれにより縦に真っ二つに斬れた

「かぺっ」

 断末魔の後、虎獣人は二つに分かれて死んだ

 だが俺もやばい

 突き刺さった槍は俺の心臓を少しかすめ出血が止まらない

 意識がもうろうとする中、少女が俺に近づいてきてその胸に触れた

「エリア、回復!」

 少女の力か?

 温かい光に包まれて俺は眠りについた

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