女神と二天の冒険10

 ソラはひとまずアスティラちゃんに任せられそうね

 それにしても子供の扱いがうますぎるはこの子、さすが元の世界で孤児院を開いてただけのことはある

 なんでもその孤児院は人間族の実験による被害にあって見た目が人とはかけ離れた子や、天涯孤独な子、特殊な種族やら特殊な力を持った子

 とにかくあくの強い子が多いみたい

 そんな子達を日々相手していたアスティラちゃんとその旦那さん

 二人にはまだ子供はいないけど、孤児院のおかげで子供はお手の物ってことね

「目を覚ましたら私が面倒を見ます」

「ふむ、私も孤児たちと触れ合ったことはあるのだが、ここまでうまくはこなせないな」

 確かにリィリアちゃんは子供相手には苦手そう

 というか自分が面倒を見られるくらいの年齢・・・、あ、精神的には六十歳超えてるんだっけ?

 まぁ見た目の年齢に引っ張られることってどうしてもあるから、この子も多分子供に戻って来てるんじゃないかしら?

 時々ケーキとかお花を見て目を輝かせてるし、この前なんて花の冠を作ってハッとなってたし

 うん、それでいいのよ


 遡ること数時間前

 アスティラは大量の上位アンデッドたちと戦っていた

 その上位アンデッドたちはどうやら意思があるらしく、連携を取ってアスティラを取り囲んで攻撃している

「この動き、洗練されていますね。でも私の仲間たちほどじゃない」

 相手は強力でアスティラも全力を出さなければならない相手だ

 しかしその全力は力を出すことではない

 アスティラは連携を組んで襲ってくるアンデッドたちを最小の動きだけで裂けつつカウンターで剣を突きさした

 トスッと一匹目の急所を突き消滅させた

 そのまま流れるように次のアンデッドを斬り続けざまにどんどんアンデッドたちを消滅させていった

 彼女の剣技、フェザーステップというスピードに特化した剣技で、相手の隙をついて急所を貫くことに長けている

「セイ! これで最後です」

 上位アンデッドはアスティラに触れることすらできず消え去った

 その直後のこと、アスティラの目の前に何かがズドンとミサイルのように落ちてきた

 それは身長三メートルはありそうな大きなアンデッドで、大剣をアスティラに向けた

「あれをすべて倒すとはな。俺と戦え強き剣士。俺はテッドリー。アンデッドの姿ではあるが剣士として正々堂々挑ませてもらいたい」

「なんと、その気配、あなた聖騎士ね?」

「うむ、騎士として俺は死にたい、この俺を滅ぼしてくれ。人々を傷つけるよう俺は命令されている。体が言うことを聞かないんだ」

「分かりました」

 アスティラは誠実な聖騎士アンデッドの言葉通り、彼を苦しみから解き放つために戦うと決めた

「俺は操られている。グリンとかいう死霊魔術師だ。黒いローブを被った陰気な男でな。俺たちをこの世界に放ってどこかへと行ってしまった」

 大剣をふるいつつ彼はアスティラに自分の身の上を話した

「おれは、人々を守る聖騎士! せめて心は人としてアンデッド生を終えたい!」

 彼の太刀筋は豪快でありながら繊細で、横振りをしているかと思えば角度が急に変わって縦振りになる軌道は読みずらいが、数々の敵を討ったアスティラにはその太刀筋全てが見えていた

「そこです!」

 勝負は一瞬のうちについた

 正確にアンデッドの核となっていた魔石を貫いたのだ

「ありがとう強き剣士の少女。これでようやく俺もあいつらの元へ」

 サーッと砂のように崩れ去るテッドリー

 アスティラは彼のために祈ると我が女神の元へと戻っていった


 時を同じくしたリィリアは女神ファータと話をしていた

「でね、サニアちゃんとルニアちゃんって双子ちゃんだけあって双子コーデがすっごく可愛いの!」

 妹自慢が止まらないファータ

 氷の女神だが心はむしろ南国のようなあたたかさがあり、ルニアの天使であるリィリアを膝の上にのせて満足そうだ

「あの、ファータ様、私はそろそろ戻らなくてはならないのですが、ここの事後処理はお任せしても?」

「ええもちろんよ。そのために来たんだもの。そっか、忙しいものね。また会いましょうリィリアちゃん。ルニアちゃんにもよろしくね!」

 ファータにお辞儀をするとリィリアもまたルニアの元へと飛び去った

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