利善とレイド8

 アリアンナを助けてからおよそ五日が経過した

 ディスからの定期連絡を待っているとまさにその連絡が来た

「えーっとテストテストマイクチェックワンツーサンシー、聞こえてますか妹たちどうぞー」

「聞こえますよ。それで、人質たちはどうなりました?」

「うん、アリアンナだっけ? その子のお姉さんは見つかった。誰にも知られないようまたダストシュートに逃がすから、ゼア、お願いね」

「はい、他の人質は?」

「あ、そうそう、利善だっけ? 彼のお母さんも見つけたんだけどちょっと救出が難しそう。管理してるのがあのファーストなんだよね」

「それは確かに難しそうですね」

「ファースト? もしかしてあのファーストなのか?」

 利善は元組織のメンバー、ゼアはディスから聞いて知っていたファーストなる人物

 表立っての活動はしないものの、かなりの手練れで隙が全く無い

 アウルが最も信頼を置く幹部だった

 名前の理由は不明だが、最古参であることから最初にアウルの同志になった者だと推測される

 小柄なため女性のようだが、声を発したこともないためいまいちわからないようだ

「そうか、いやいいんだ、いつか俺が助け出す。それでレイドの弟はどうだ?」

「ごめんなさいね、そっちはまだ見つからないの。でもきっと見つけて保護してみせるから安心して」

 弟を人質として取られているレイドと利善にとって心にずっとその心配の種が付きまとう

 しかし戦うと決めた二人は必ず人質も救出するという気概も持っていた

「と言うわけでゼア、こっちに来てくれる?」

「はい、姉さんも気を付けて」

 通信が終わった

 彼女ら四姉妹には特別な能力がある

 それは一人が別世界にいた場合他の三人も同じ世界に飛べるという能力だ

 非常に便利且つスパイ向きの能力だが、如何せん敵には強者が多すぎる

 そのため比類ない力を持った四姉妹でも攻めあぐねていた

「さて、私は行きますが、お二人に話しておかなければならないことがあります」

「君たちは結構強い能力者だよね」

「いろんな世界、見てきたけど、二人共、なかなか」

「でもあなた達二人では、いえ、私達を含めて六人でもウルには決して対抗できません」

「そこでだ! というよりもう以前から進んでる計画なんだけど」

「二人も、加わってもらう」

 三姉妹が交互に話し、利善とレイドに目を向ける

「加わるってどういうことですか?」

「私達はウルに対抗するためにここではない世界に多数の協力者を募って来たのです」

「神々にも手伝ってもらってね」

「それに、すっごく強い、鬼神とかも、集めるの手伝ってくれてる」

「その鬼神さんは自分のいた世界からかなり強力な助っ人を送り出してくれてます」

「その子達も君たちみたいに打倒ウルを狙ってるから、もしかしたら会えるかもね」

「これからあなた達を送るとこ、いっぱい異世界人がいる。心配ない」

 三姉妹の言葉で二人は勇気が湧いたのか、その提案を受け入れた

「それじゃあ私は姉さんの所に向かいます。お二人はウェアと共にその世界に向かってください」

 指示だけするとゼアは扉を開き、利善、レイド両方に手を振ってあっという間に行ってしまった

 それを見送ってからウェアはニコリと二人に微笑んだ

「じゃあ、ディメ、留守番、がんば」

「うう、僕ばっかり留守番、ああ最後に生まれるんじゃなかった」

「何言ってるの、ディメ、一番かわいい、私達、心配、守る」

「分かってるよ姉さん、僕はここをしっかりと守るとするよ」

 ディメの頭を撫でるとウェアは自分の力を使って扉を開いた

「じゃあ、行く、準備は?」

「大丈夫だ問題ない」

「私も行けます!」

 二人はウェアの手を握り、打倒ウルを掲げる異世界人が数多くいる世界へと飛び去った

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