勇者の成長3
翌日、魔族国を揺るがすような事態が起きた
恐ろしいほど感染力と殺傷力の強い疫病が逸り始めたのだ
魔族国の中心、そこには瘴気の溜まった魔族でも近づけない場所がある
かつての邪神、今サニアという女神となった邪神が滅んだ場所だ
そこでは未だに禍々しい瘴気が溢れ、魔物が生まれている
そこからどうやら疫病が発生したらしいとのことだ
「早速この力が役に立ちそうだな」
話を聞いたアイシスはすぐにキーラと共に疫病の出た村へと急いだ
その病は少しでも感染者に触れればあっという間に感染し、一日で体中に赤黒い発疹が出、それが全身に現れると数日で死に至る
今まで長く生きた者でも一週間ほどしか持たなかった
さらに直接患者に触れなくてもいずれ空気感染するとんでもないウィルス
キーラは国中の名医や研究者を集めて調べさせたが一向にワクチンや解決するための魔法などができない
そのためアイシスが自ら向かうことになったのだった
「よし、この新しい力ならできるはずだ。まずは感染した者を急ぎ完治させる。その後はウィルスを解析してワクチンを作る」
アイシスがワコから授かった力にはもう一つの別側面があった
それは病などを解析してその根治方法を見つけ出すこと
そう、ワコからの力は一人病院と言うにふさわしい力だった
「よし、まず患者を見るから案内してくれ」
村では患者に触れないように徹底した対策がとられていたが、それでもどこからか感染し、どんどん患者が増えていっている状況だ
ひとまずキーラを村長宅で待機させてからアイシスは村にある簡易的な病棟へと走った
そこでは死屍累々、死体に触れても感染するためそのままにされている
そこでアイシスはすぐにワコの力を発動した
今度は夢の中で使った程度の力ではなく、本来の力でだ
「黄金騎士ナンバーナンバー3、犬!」
黄金の鎧
トコの力以来本気で使ったことはなかったが、この病には本気で挑まなければならないと思ったのと、解析には黄金騎士としての力が必要だったからだ
「行くぜ! 癒しの風!」
ヒューと春風のような爽やかな風が吹き荒れ室内にそよぎこむ
それにより周囲を覆っていた瘴気とウィルスを消し飛ばした
さらには病に倒れた人々からも瘴気とウィルスが消えていき、苦しんでいた人々は一命をとりとめた
かなり体力が衰えていたためまだ予断は許さないが、とりあえずの危機は脱したようだ
アイシスは周囲を見てまだほんの少し残っていたウィルスを確保
それを解析してウィルスのワクチンをあっという間に作り出した
これで次にまたこの病が逸っても大丈夫だろう
ワクチンは誰でも簡単に作れるよう徹底的な研究を能力でしているため、他の研究者でも増産が可能だ
「ありがとうございます勇者様!」
村長宅で報告を終えたアイシスはそう感謝された
照れて顔が赤くなるが、自分も役に立てたことで笑顔でその感謝を受け入れた
「さすがアイシスだ! 我の親友だけのことはあるぞ!」
村人たちの前だからか、魔王としての言葉遣いになるキーラ
だがキーラの本来の口調は村どころか街、そして国中に知られている
村長も当然知っているのでそんなキーラのことを微笑ましそうに見ていた
疫病対策も無事に終え、アイシス一行は魔王城に戻る
そしてたちまちの問題を洗い出した
「まぁあの瘴気をどうにかしないことにはこれからも問題は起きるだろうな」
「うん、私もそう思う。だから何とか瘴気を浄化できないか精霊様達と対策をしているところなの」
「お、偉いぞキーラ」
アイシスはキーラをほめちぎる
ただ精霊と魔族だけではこの問題は解決できないだろうとも考えていた
それほどに魔族国の瘴気は強いのだった
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます