女神と二天の冒険1

 お姉ちゃんと私はいつでもどこでも繋がっている

 双子女神ならではの能力で、私とお姉ちゃんの絆の証

 それを使って私はお姉ちゃんと連絡を取ってみたわ

 呼びかけると優しいお姉ちゃんの声が頭に響いてきた

「どうしたのルニア」

「ごめんねお姉ちゃん、実は・・・」

 私はありのままこの世界で起こったこと、それと女神でも勝てないほどの相手がウルにいることなどを説明した

 お姉ちゃんは黙って聞いてくれてる

 話し終えるとお姉ちゃんがまた念話で話しかけてくれた

「そう、そこまでの存在がウルにはいるのね。でもこちらにだって鬼神とリディエラちゃんが、それにそっちにだって天使二人と大魔導士がいるじゃない」

「ええ、でもこの子たちはまだ未熟だから危ない橋は渡せられない。せめて私と同程度には強くなってもらわないと」

 お姉ちゃんの考え込むようなうーんという念話が飛んできた

「そうね、確かにそれは大切だわ。それならルニア、あなたが鍛えて上げなさい」

 そのつもりだったからお姉ちゃんと意見が一致して嬉しいわね

 でも鍛えるってどうすればいいのかな? お姉ちゃんなら色々とやり方があるだろうけど、私なんて破壊くらいしか取り柄がないし、下手をすれば二人が消し飛んじゃう

「大丈夫よルニア、あなただって成長してるんだもの。それは私がよく知ってるわ。だからどんと胸を貸してあげなさい」

 お姉ちゃんにそう言われると途端にできる気がしてきた

 うん、気がしてるんじゃなくて確信してる

 単純なものね私も

 私は二天に向かって手招きをした

「ねぇ、これから次の世界に行くつもりなんだけど、少し行きたい世界があるの」

「行きたい世界ですか?」

 あら、首をかしげるリィリアちゃん、結構可愛いわね。ってそんなこと考えてる暇はない

「ええそう、これから向かう世界ではあなた達を強くするためのいろいろな試練を受けれるわ。そこであなた達を鍛え上げる。で、私も強くなる。一緒に頑張ってみない?」

「「是非!」」

 よかったわ、二人共賛同してくれた

 それならとすぐに扉を開き、私は二人の手を引っ張った

「善は急げ、思い立ったが吉日、聞いたことあるでしょうあなた達なら。さぁ行くわよ!」

 思わぬ前世でのことわざに二人は少し微笑んでくれた

 うん、だいぶ打ち解けてくれたってことかしらね

 私が地球の言葉を知っているのはお姉ちゃんの中にいたから

 お姉ちゃんは地球で何度か生まれ変わりを経験している

 その時私もその体の、心の中にいて同じ経験を共有していた

 だからそう言ったことわざとかを覚えてたのよね

「じゃ、行くわよ」

 二天と魔導士としてほぼ最強の魔力を持った少女ラナの手を握る

 あ、この子はまだ慣れてくれてないみたいね

 でもまあそのうち打ち解けるでしょう


 転移、この独特な浮遊感と頭のクラクラにはかなり慣れたわ

 まあ慣れざるを得なかっただけなんだけどね

 お姉ちゃんは私よりもその点では丈夫だったみたいで、私みたいに眩暈とかには襲われないみたい

 あと二天はだめみたい

 今ぐるぐると目を回してリィリアちゃんに至ってはその場で口からヴォエヴォエと、ちょっとあれだからキラキラとした光のエフェクトをかけておいたものが出てる

 で、ラナはと言うと

「いえ、何も感じませんでしたが?」

 本当に私達がなぜ苦しんでいるのか分からないって顔でこっちを見てる

 まあたまにいるのよね。転移に全く影響を受けないのが。お姉ちゃんとかね

 というか何この世界、ボコボコとところどころに空いた穴から泡がポコリと出てきて、それがフワフワとシャボン玉みたいに空中に浮いて行く

 木、のようなものがまばらに立ってて、そのすぐ近くに水辺があるんだけど、この水なんだかゼリーみたい

 とてもじゃないけど飲めそうにないわね

 それから生物もなんだか蛙みたいなものがピョコピョコとジャンプしてるだけ

 ただその蛙がものすごく大きくて、二十メートルはありそう

 顔はかなり可愛らしくてゆるっとしてる

 ジャンプする度に地面は揺れてるけど、見た感じおとなしいわね

 それから食べ物はあの池の中にあるゼリーみたい

 下をビヨッと伸ばして舐めとって美味しそうな顔をしてるから間違いない

 辺りを見て回ったけど知的生命体は全く見当たらなかった

 いえ、あの蛙ちゃんたちがその知的生命体なのかも

 ちょこちょこと前を歩いたりしてるけどこっちを気にもせずにゼリーをペロペロしてる

「特に、本当に何もないですね。平和そのもの、どこかで悲鳴が上がってる様子もないですし」

「ねぇラナちゃん、ここではあまり魔法を使わないで」

「え、どうしてですか?」

「あの蛙ちゃんたち、凄くのほほんとして平和でしょう? いたずらに驚かせたくないの」

「なるほどです。なら私無音の魔法を使えるので、もし魔法が必要になったらその魔法を使ってから撃ちますね」

 おお、出来る子だわね

 とりあえずはこの世界にはウルもいないみたいだし、二天プラス魔法使いの少女を休ませることにした

 二天は大丈夫そうだったけど、ラナちゃんはまだ心の整理がついてなさそうなんだもん

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る