利善とレイド2

 気絶した二人を助け出した少女、彼女は目をパチパチと瞬きさせながら二人を介抱した

 粉々になった肋骨を綺麗に修復、その後気絶した二人をじっと見つめた

 既に傷は治って痛みもない

 二人の目覚めをただジッと待つ少女

 ほどなくして目を覚ました二人の口にいきなり水のような液体を流し込んだ

「ぶっ! ゲホゴホ!」

「うぶぅ、な、なんですか!」

「飲みな、いいから飲みな飲みな」

 その液体が入った容器を二人は見つめ、利善はガバッと飲み干した

 それに見習ってレイドもコクコクと飲み下す

「うんうん、いい飲みっぷり。それには傷を癒す効果があるよ。ディスが残した傷、綺麗に治ったでしょう?」

「は、はい、もう何とも有りません」

「最初に傷はある程度治しておいたけど、まだ神経とかちゃんと繋がってなかったからねぇ。内部から治すお薬です」

「あ、ああ、ありがとう。ところで君は?」

「おっと申し遅れましてだね。あたしはゼア。ディスの妹だよ」

 ディスというのは白いフードを目深にかぶったウルの幹部である女性のことだ

 彼女が二人を逃がしてくれた

「あの、なぜディスさんは私達を助けてくれたんですか?」

「んー? そりゃディスはスパイだもん。危なくなってる君たちを見てられなかったんだと思うよ。ディスはお人好しだからねぇ」

 それで合点がいった

 利善は危険を冒してまで助けてくれたディスに深く感謝し、いずれまた会えた時に必ず恩返しすると心に刻み込む

 同時にレイドも同じ思いだ

「さて、君たちは人質を取られてるんだったね。あたしとディズってば繋がってるからさ、あっちの情報ってばよく分かっちゃうのよ。でね、現状を言うと人質たちはほぼ全員無事かな? ある幹部がとってる人質たちを除いてね」

「ある幹部?」

「そ、プロフェッサーとか呼ばれてる変態かな? あいつってばどうやら非人道的な実験をしてるらしくてね。最優先で倒さなきゃどんどん犠牲が増えそうなんだよ」

 利善もプロフェッサーという名前に心当たりがあった

 他の幹部連中からも嫌われている技術顧問、それがコードネームプロフェッサーだった

 本名はアウル以外誰も知らない

 アウル以外の言うことを聞かず、時折勝手に他の幹部の人質を攫っては、実験をしているらしいことは広く知られていた

 そのためかアウルによくクレームが寄せられているのだが、アウルはそれもまた一興とある程度の苦言は呈するが、させるがままに放置していた

「まぁそれでも暴動が起きないのはひとえにアウルってボスのカリスマ性、掌握術、そして強さがあってこそなんだろうけど」

 ゼアはもう何年も前からディスや他の姉妹たちと共にウルの調査をしているらしく、様々な情報を持っていた

 それが神々に流れていない理由は、彼女たちが単独で動いていたからだ

 世界には時折神々よりも力を持った特別な個が生まれることがある

 それがこのゼアたち四つ子だったのだが、彼女たちの能力は情報収集に非常に長けており、ウルの内部調査をするにはうってつけだった

「でも何でたった四人でそんな危険な諜報活動を? 他に仲間はいないのですか?」

「いる、ううん、正確にはいた、かな。何せ皆死んじゃったから。だからこれはあたしたちのウルに対する復讐でもあるのさ。情報を集めてウルを倒そうとしてる善なる者に渡す。あたしたちにウルを打倒するだけの力はないけど、サポートはできるって寸法よ」

 パチンとウィンクを決め、ゼアはフワフワのパンと目玉焼き、カリカリに焼いたベーコンをさらに乗せて渡した

 見ているだけで、臭いが鼻に吸い込まれる度に、二人の食欲を刺激して涎を流させ、腹を鳴らさせる

 それほどにゼアが作った料理は完璧だった

「ありがとうゼアさん」

 二人は感謝しながら料理を堪能し、体力の回復に努めた

「それを食べたら移動するわ。まずは私の妹たちの元へ行きましょうね」

 ゼアはルンルンと鼻歌を歌いながら食べ終わった食器を片付ける

 片づけを終えると二人について来るよう促して今いる廃墟のような場所から歩き出した

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