新世界より11

 ジャバウォックの森にいた魔物は何とか倒せた

 でも気になるのはこの世界にいないはずの魔物が出たってことだ

 どうやらそう言う魔物を生み出す、もしくは召喚する誰かがいるみたいだね

 サニアさんが言うには召喚の痕跡があの魔物にあったらしい

 しかも人為的に強制進化させられて痕もあったという

「その召喚者の場所って分かります?」

「いえ、やはりウルの偽装は完璧のようですね。全く居場所が掴めません。ただ次元が揺れてはいないので恐らくウルのメンバーはまだこの世界にいるはずです」

 サニアさんは目をつむり、集中して世界に対する感知を開始した

 この時のサニアさんは他の力が全く使えなくなるらしく、その間は僕たちが守らないとね

「ハクラちゃん、クロハさん、周りの警戒を怠らないでね」

「「はい!」」

 二人も敵の気配を感じようと周囲を見回しながら最大限に感知能力を発動させている

 僕もそれに続いて回りに感知を張り巡らせた

 

 数分後、サニアさんが目を開いてふぅと息を吐いた

「見つけました。見つけたというより異変の起こっている場所を把握したと言った方が正しいですね」

 どうやらジャバウォックの森からそう遠くない道端でその居場所を見つけれたみたいだ

 ここから走れば五分とかからずつきそうだ

 悲鳴が上がってるらしいからとにかく急いで現場へ向かう

 途中にまだアンデッドが残ってたけど、サニアさんが一瞬で浄化したから足止めにはならなかった

「このあたりです」

 サニア様に続いて街道らしき開けた場所に出てきた

 そこでは先ほどと同じようなリッチブランドーらしき魔物が街道を利用していた人たちを襲っていた

 リッチブランドーに掴まれた人は一瞬でその生気を吸い取られてその場でゾンビ、あるいはスケルトンと化している

 サニアさんがアンデッドになってしまった人たちを浄化して僕らはリッチブランドーを取り囲んだ

「クロハさんは休んでて。ここは僕達が!」

「しかしですねリディエラ、こいつらは浄化魔法が効かないのでは?」

「正確には効かないのではなく効きにくいのです。ですからこのように、リディエラちゃん!」

「はい!」

 僕とサニアさんで神力を一緒に練り上げる

「合成古代魔法、エルヒルドホリアス!」

 サニアさんに続いて僕は神力をその合成魔法にたらふく練り込んだ

 それによりリッチブランドーを一気に殲滅できた

 ただこれ、かなり疲れる

 魔力と神力の消費量が普通の魔法の比じゃなくて、かなりの魔力量を誇っていたはずなのにそれでも疲れる

 リッチブランドーが消えたおかげでやはりその召喚者が姿を現した

 まるで骸骨のようにやせ細った気味の悪い男

 そいつはかなりご立腹のようで顔がとにかく怖い

「何なんだ貴様ら! 僕の最高傑作をよくもよくもよくも!」

 ブチ切れているところ悪いけど、こいつには話を聞きたいからハクラちゃんに凍らせてもらった

 目くばせだけで気づいたハクラちゃん、結構信頼関係ができてきたのかな?

 カチコチに凍った男をひとまずサニアさんが収納して、僕らは土地つける場所でそいつを解凍した

「よくも! クソ! あれを作るのにどれだけ苦労したと思って」

 うるさく騒ぐ男をクロハさんが呪力で押さえつけた

 どうやらこいつは手に持っていた大杖がないと魔法などが一切使えなくなるみたいで、哀れな痩せ男は地面に転がって恐怖を浮かべた目でクロハさんを見た

「これ以上騒ぐなら苦しめて殺します。指先から順々に切り刻み、その傷口に塩を塗り込みつつ皮もゆっくり剥がしてあげましょう。死なないように気をつけないといけませんよねぇ」

 クロハさんの笑顔がかなり怖い

 でもそれで男はおとなしくなった

「な、何を聞きたいんだ。何でも話すから命だけは助けて下さいお願いします」

 すっかり従順になったね

 で、話を聞きだそうと色々と質問をぶつけた

 ウルが動いてる理由や組織の幹部やトップの名前、その能力などだ

 男はその質問に答えようと口を開いたとたん、下半身が吹き飛んだ

「はえ? え? なん、で? 僕は従順、だったのに、爆発、死、やだ、まだ死にたく、な・・・」

 そのまま今度は上半身が粉々に吹き飛んだ

 そこまで激しい爆発じゃなかったけど、人一人が吹き飛ぶには十分な爆発

 男の遺体はなぜか残っておらず、細胞レベルで消されたんだ

 とっさのことでサニア様でも救うことができなかった

 どうやら裏切りが発覚した時点で体を消し飛ばす爆薬が仕掛けられているらしいことが分かった

 今まで無理やり従わされていた人たちは情報を持っていなかったから爆薬を仕掛けられていなかったけど、こいつは情報を持ってたってことなのかな

 人体に爆薬を仕掛ける何者か、ウルには非情なやつもいるらしい

 ここでは情報は得れなかったけど、この世界にウルが来ていることは分かった

 次なる異変を探すため、再びサニアさんが集中し始めた

 犠牲になったこの男には悪いけど、今は振り返っている暇はない

 早くウルを止めなきゃこの男みたいな犠牲者が増えるからね

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る