新世界より7
人の死体で出来た不気味な人形を消し去り、ギルドの調査隊が出る前に私達は次の街へと急いだ
さっきまでいた街はそこまで大きくないけど、次に向かってる町は聞いた話によるとこの国の副都だから相当に大きいらしい
とりあえず聞き込みでウルを探しがてら観光もしてみることにした
大変な事態が起きてるのは分かってるけど、今できる最善のことは聞き込みだけだし、それに疲弊しては元も子もないからね
たまに異世界を楽しみつつやれることをやるだけだ
でまあ僕らの移動速度なら馬車で数時間かかる距離もあっという間だった
まあ馬車で数時間だからそんなに距離はなかったってことだね
そしてまた街の大きいこと
僕の世界にあった人間族の国の街に引けを取らないほどの大きさだ
「広いですね~。それに壁も建物も大きいです。一体どんな食べ物があるのでしょう」
「ハクラちゃん、ご飯を食べに来たんじゃないんだよ」
でもまあ腹ごしらえは大事だ。美味しいものを食べると活力が湧くからね
街に入るとまず酒場に行ってみた
酒場には様々な人が来るから情報収集にもってこいなんだよね
でもまずは料理を頼むことにした
酒場とは言っても僕たちはお酒が飲めないから飲み物は水とか紅茶なんだけどね
メニューは壁に貼ってあってそれを頼めばいいみたいだ
で、僕とハクラちゃんは本日の魚料理、クロハさんとサニアさんは本日の肉料理を頼んだ
まあその二つしかメニューになかったんだけどね
それでもこれだけはやってるってことはきっとおいしいに違いない
頼んで数分でもう料理が運ばれてきた
見栄えはお世辞にもいいとは言えないけど、ボリュームもあってかなりおいしそうだ
魚料理はフィッシュアンドチップスで、魚丸々のフライとジャガイモのフライがついている
魚は骨までカリッと香ばしく揚げられていていい香り
ナイフとフォークで切り分けてムシャムシャとあっという間に食べつくしてしまった
ジャンキーな感じがまた素晴らしいです
肉料理は豪快なステーキとパンにスープがついたもので、これまたボリュームがすごい
さすがに食べきれないんじゃないかって思ったけど、ハクラちゃんに負けず劣らずな大食漢のクロハさんは上品に平らげてしまった
そしてその横で一生懸命切り分けて食べていたサニアさんもきれいに食べきる
ハハハ、皆食欲すごいんだね
で、肝心の情報収集だけど、聞いてもいないのにたくさんの情報が舞い込んできた
まああれだけ皆大声で話してればいやでも耳に入ってくるんだけどね
その情報によると、なんでもこの街の東にあるジャバウォックの森という場所で、いつも見られていたジャバウォックという魔物の姿が、ここ最近めっきり減ったらしい
人を襲う魔物だから定期的に退治はされていたけど、森に近づかなければ襲ってくることもないのでそこまで警戒はされてなかったらしい
それなのに減った
これは明らかにジャバウォックよりも上の捕食者か何かが現れたに違いないと酒場はこの話でもちきりだった
上位の捕食者ってことはそれだけ危険な魔物か何かが現れたってことだ
でもウルと関係あるかまではつかめなかった
まあみんなが困っているなら向かわないとね
というわけで気力も十分に養った僕たちはそのジャバウォックの森へとやってきた
不気味な雰囲気で時折変な鳥の鳴き声がする
今にも幽霊やらなにやら出そうで怖い
それなのにサニアさんはすたすたと歩いて奥へ奥へと進んでいってる
「サニアさん、怖くないの?」
「え? だって出てきてもゴーストとかでしょう? そんなの浄化すれば倒せるじゃないの」
た、頼もしすぎる
まあ女神様だから浄化なんてすぐできるのか
あ、僕も女神になってるからそのくらいはできるんだっけ?
まあ精霊の時も浄化はできてたから大丈夫と言えば大丈夫なんだけど、怖いものはしょうがないじゃない
ちなみにハクラちゃんはビビりでクロハさんはサニアさんと同じく全く動じないみたい
ハクラちゃんと手をつなぎながら恐る恐る進んでいると、案の定ゴーストが数体現れてこちらに向かってきた
「ひぃいい!」
ハクラちゃんが怖がりすぎてやたらめったら氷の力を撃ち付けてる
それをクロハさんが制止させてサニアさんが一気にまとめて浄化させた
恐ろしく速い浄化、何か能力を発動させる気配も感じさせないほどの速さだった
やっぱり経験が違うんだろうね。これで鬼神サクラさんより弱いって言うのが全然信じられないよ
それからも幾度となくアンデッドたちに襲われ、その都度僕も協力しつつ浄化して奥へと分け入って行った
それにしてもここまでジャバウォックの姿を一度も見ていない
この森の名前になるほど多いはずなのにやっぱり変だね
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