戦いの始まり2
大男は可愛そうなほどにボコボコにされ、顔面は二目と見られないほどにはれ上がり、体は氷でカチカチに凍らされていた
情けないほどにしょぼんとしてる大男は未だ怒ってらっしゃるハクラちゃんの説教に対し、コクコクとうなづいている
「はい、申し訳ないです。食べ物粗末に、ダメ、絶対。はい、もうしません」
約三時間ほどの説教を終えたハクラちゃんは、あの恐ろしい般若のような形相ではなくすっきりとした、いつも通りの可愛い顔に戻っていた
「ふぅ、全く不届き旋盤ですよね。ご飯は宝! ハイ復唱!」
「ご、ご飯は、宝」
「声が小さいです!」
「ご飯は宝!」
「はいよろしい。で、あなた誰ですか?」
大男はうなだれつつ話し始めた
「お、俺はただ戦いが好きなだけで、ウルに加わっただけだ。ウルに加われば強いやつといくらでも戦えると聞いてすぐ飛びついた。だがまさか最初の派遣先がここまで強いガキのいる場所とは思、ひっ、すいません! 女性、美しい女性のいる場所です」
クロハさんに睨まれ委縮してる
そりゃクロハさんはハクラちゃんより強いからね。感覚で逆らっちゃ駄目だってわかったんだろうね
ちなみにクロハさんが怒ったのはハクラちゃんをガキだって愚弄されたからだと思う
で、この男の名前はゴーンと言って、自分の元居た世界で無双をしていたらしい男なんだけど、まさしく井の中の蛙大海を知らずと言った感じで、その世界では強かったものの、ここではかなり弱かったらしい
「それで、ウルってなんです?」
そうそこだ、そこを聞きたかったんだよナイスハクラちゃん
「う、ウルは異世界人の強者を大量に集めている組織です。その、それ以上は知りません」
「っち、使えないですね」
うわぁ、ハクラちゃん全然許してないじゃない
ハクラちゃんの舌打ちに思わずビクッとするゴーン
何か可哀そうになってきたけど、襲ってきたのはそっちだし、ハクラちゃんが止めなければきっとこの世界に人達に危害を加えてたと思うと、あれ、ちょっと腹立ってきた
だから一発拳骨をしておく
「いてぇ! 何すんだこのガキ! あ、いえ、何でもないです」
今度は白黒姉妹両方に睨まれて小さくなった
まぁ自業自得なのでしっかりと反省してもらって、まぁ被害は出てないし(ハクラちゃんお手製料理以外)反省してそうだからこのまま返すことにした
まぁここにいても邪魔だしね
ただ彼の帰り際に気になることを聞いた
ウルという組織は様々な世界からたくさんの力ある人達を呼び集め、もしくは人質を取って無理やり従わせてるらしい
それは確か利善さんたちも言ってたね
こいつは自分から進んで手先になったらしいけど、根は悪いやつじゃないみたいだ
ただ強いやつと戦いたいってのが彼の望みだったから人に危害を加えようって思いは無いらしい
ペコペコと平謝りしながら彼は扉を抜けて帰って行った
「それにしてもまったく、私のご飯を滅茶苦茶にするなんて、もっと殴っとけばよかったです」
「ハクラちゃんこわ・・・」
後ろに下がってた異世界人二人もハクラちゃんのあの怖さを知って少し足が震えてる
ハクラちゃんが少し近づいただけで「ひっ」と声をあげた
「あの、怖がらないで下さい」
「は、はい」
あらら、すっかりおびえちゃってる
まぁ無理もない。精霊神となってる僕ですらあの姿のハクラちゃんに恐怖を覚えたんだもん
当然二人もその姿を見ていたわけで、それこそ震えあがっただろうし、そんなハクラちゃんにボコボコにされたゴーンも怖かっただろうね
「私、怖くなんてないもん」
少しいじけたハクラちゃんは元通りの愛らしい姿に戻っている
そう言えば前に一緒に迷宮に入ってからひょんなことで小さくなっちゃったんだけど、それ以来彼女元に戻れてないんだよね
まぁこれはこれで可愛いし、クロハさんなんて小さい頃のハクラちゃんが戻って来たって滅茶苦茶喜んでるし、まぁなんの支障もないからこのままにしてる
子供に見られるけど滅茶苦茶強いからね
「さてと、二人も天使になったことだし、あとは向こうの準備が整えばいよいよだ」
カイトさんが壊れたテーブルを何やら能力で修復している
驚くことにグチャグチャになってた白黒姉妹の手料理までが元に戻っていた
カイトさんの能力は概念を壊す力
相当に協力故に一日に二度しか使えない
それを料理を戻すのに使ったってことはカイトさんも料理を楽しみにしてたってことか
全てが元通りになったことでハクラちゃんもすっかり機嫌が戻ったみたいだ
「まぁご飯でも食べながら今後について話し合おうか」
全員が席に着いてからカイトさんとサクラさんは話し始めた
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