帝国1

 星詠み族はその半数が亡くなってしまった

 悲しいことだけど、今は前を向いて生きていくしかないと王女は言った

 なら僕ら精霊はその言葉に答えて尽力するだけだ

 復興支援として僕はたくさんの精霊達を呼び出した

 彼らがいれば復興もかなり速いはず

 特に癒しの精霊カイユや建築の精霊トロトン達に任せておけば、怪我した人たちの治療や壊れた建物の修繕なんかもあっという間に終わるだろう

 星詠み族の人達にすごく感謝されたけど僕は精霊としての役目を果たしただけなんだ

 それに、僕たちがもっと早く間に合っていればこんなことにはならなかった

 だから僕は落ち込んでいた

 それを慰めてくれたのは意外にもクロハさんだった

「精霊様、確かに星詠み族には多大なる被害が出ました。しかし悪いのはあの男であってあなたではありません」

「でも、僕がもっと早くにここに来れていたなら結果は違っていたはずなんだ」

「そうですね。その通りだと思います。しかしです精霊様! 過去はもう変えられないのです。私達の両親が帰ってこないように、亡くなった星詠み族達も帰っては来ません。そんな彼らの分も生き残った星詠み族達は生きるでしょう。彼らを忘れないために」

「僕は精霊失格だ」

「そんなことはありません・・・。精霊様、私は魂の声を聴くことができます。アンデッドとならず天に召される前の魂たち。彼らの声を私は聞けるのです。それを精霊様にお見せいたします」

 クロハさんは僕の肩に手を置いて神力を流した

 すると僕の周りにたくさんの亡くなった星詠み族達が立っているのが見えてきた

「これは・・・」

「死者の魂たちです。彼らの声を聞いてください」

 耳を澄ますと彼らの声が段々とはっきりしてきた

 その声は非難ではなく、僕への感謝だった

「精霊様! 家族を守ってくださってありがとうございます!」

 そう言ったのはおばあさんとおじいさんの星詠み族

「子供達は精霊様のおかげで生きながらえることができました」

 それは夫婦の星詠み族の言葉

「王女様を助けてくださりありがとうございます」

 王女の侍女だった女性

「精霊様、落ち込まないで下さい。私達は死にましたが、この国は精霊様のおかげで救われたのです。だから、そんな悲しい顔をしないで下さい」

 彼らはこの国の大臣たち・・・。王女を守って死んでしまったらしい

 そして死者達は誰一人として僕を恨んではいなかった

 僕は思わず涙がこみあげて来る

 その涙をハクラちゃんがぬぐってくれた

 二人には感謝してる

 この二人がいなかったらもっと被害が増えていたかもしれない

 消えていく死者の魂たちは満足そうな笑顔を僕に向けてくれた

 もっと・・・、もっと強くならなくちゃね


 復興も進んだ頃、召喚した精霊のうちの一人が気になる情報を持ってきてくれた

 彼女は雲の精霊フウワといって、その名の通りフワフワとしたゆるフワガール

 そんな彼女が先日カリュバート帝国の上をフワフワと浮いていたところ、帝国周辺が騒がしいのが見えた

 かつては世界征服を企んでいたという帝国も、僕が生まれる前には全ての国々と同盟を結んで邪悪な先代魔王と戦った

 そこからは精霊を敬いかつての過ちを正しながら国としていい国になったって聞く

 そんな帝国で何か問題が起きている

 フウワの話によると帝国の皇帝が住む城と領地のすぐ近くで、たくさんの魔物が蠢いていたという

 領土を襲ってはいなかったけど、時間の問題かもしれないから僕に報告してくれたらしい

「わかった、ありがとうフウワ」

「はいですぅ。では私は作業にぃ、戻りますねぇ~」

 よし、復興は精霊達に任せて僕たちは帝国に行くとしよう

 皇帝のアークロンさんは温和な人で話しやすかった

 事情を説明して協力して魔物退治といこう

 それにしてもなんで魔物がそんなに発生したんだろう? 先代魔王が消えた今、そこまで魔物が発生するような瘴気は無いはずなのに

 もしかして、まだ僕らが見つけていないここを襲ったやつと同じようなやつがいるのかも

 そうだとしたら放っておくことなんて絶対にできない

 この世界は僕が守るんだ

 僕らは急ぎ帝国へと飛んだ

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