精霊の国4
かなり大きなトラブルはあったものの戴冠式は何とか終えることができた
車いすのような魔道具に乗った母さんをエルリウラさんが押して僕の傍まで寄せてくれた
神様三柱と母さんは楽しそうに話してる。家族って感じだね
その輪に僕も加わってもいいのか迷っていると、イナミリアさんが僕の手をガシッと掴んでその輪に入れてくれた
「それにしてもシルフェインの娘ですか・・・。何とまぁ昔のあなたによく似ていますね」
「そうですか?兄様」
「ええ、この意思の強そうな目などそっくりではないですか」
三柱の神様に見つめられて少し恥ずかしい
「しかしこの生き人形はどこからきたんでしょうね? 僕達がかつて冒険していたころにはこんなものはいませんでしたよ。あ、リディエラちゃんはルニアとサニアにあったんだったっけ? あの二人と一緒に僕もかつて世界を冒険していたんだ」
イナミリア様は元々こことは別の世界で血のつながっていない人間の両親に育てられたらしい
最初は性別のない女神の幼体だったけど、その世界でルニアさんとサニアさんに出会って女神として覚醒したんだとか
光の女神は元々イナミリアさんのお母さんである大神だったんだけど、遥かな昔大きな戦いがあって、その時亡くなった
その大神様が死ぬ直前に生み出したのがイナミリアさんで、時空の大神様に頼んでイナミリア様は現代へ飛ばされた
それを拾ったのが人間の夫婦だったらしい
幼体だったイナミリア様には性別もなく、醜い姿だったけど、両親は可愛がって育ててくれた。ただ男の子として育ったために物凄い美少女な姿の今でも僕という一人称だ
あ、それを言うなら僕もそうか・・・
その後家族水入らずのような感じで楽しく話をし、その日はお開きとなった
母さんもすごくうれしそうでよかったよ
神様たちが帰った後僕はずっと母さんにべっとりと抱き着いていた
もうあんな悲しい思いはしたくない
「ふふ、心配をかけましたねリディちゃん。あれは私もかけでしたから・・・。襲来があってからすぐにエルリウラに連絡したものの、魂の保護まで間に合ったのは幸運でした」
「ううん、いいんだ母さん。僕は母さんが無事だっただけで嬉しいよ」
でもいつまでもこうしてはいられない。僕はもうすぐこの世界から旅立つ。戻るのはいつになるかもわからないし、もう帰ってこれないかもしれない
母さんはそれを分かって送り出してくれるんだ
僕もしっかりしないとね
「ではリディちゃん。ハクラちゃんとクロハちゃんを連れて妖精の国に行きなさい」
「はい! オベロン王とティタニア女王に何か伝えることは?」
「いいえ、あの子達にはあなたの言葉でしっかりと挨拶なさいな」
「はい!」
母さんの自室を出て外で待っていたクロハさん、ハクラちゃんと合流した
「精霊様? 女王様は・・・」
「うん、元気そうだよ。しばらくしたら魔力も回復して歩けるようになるみたい」
「ほっ、それは良かったです。では行きましょう精霊様。ほらハクラ、精霊様をお守りするわよ」
「うんお姉ちゃん!」
白と黒の鬼神を連れて僕は隣国、妖精の国アヴァリアへと飛んだ
ちなみに他の鬼神たちは鬼ヶ島を守らないといけないから戻っちゃった
それにしても鬼神たちってあんなに強いんだね。驚いたよ
妖精の国につくとそこにはすでにカスミがいた
カスミは精霊の国に住む妖精で、僕のお付きでもあるんだ
人間族の国にある僕の家の管理を任せていたけど、妖精の国に行くことが決まるとすぐに僕らの案内を買って出てくれた
「お任せくださいリディエラ様、それに鬼の王女様達ですよね? 以前お会いしたときと雰囲気がかなり変わられていたので分かりませんでしたよ」
確かに二人ともさらに綺麗になってる
クロハさんなんて母さんに負けず劣らずのダイナマイトなボディになってるし
ハクラちゃんは、うん、綺麗になった。胸はあれだけど
ドンマイ、僕だって大きくなったんだからきっとハクラちゃんも
「あの、精霊様、どこ見てるんですか? そ、そりゃ精霊様みたいに大きくはなりませんでしたけど、私の魅力は胸じゃないんです!」
あ、見てるのばれちゃってた
ぷんすか怒ってるのが可愛い。クロハさんもそんなハクラさんをハァハァと鼻息荒く見てるね
このお姉さんはちょっとハクラちゃんを性的な目で見てるから怖いよ
「では皆さまこちらへどうぞ。妖精王オベロン様がお待ちですので」
カスミに案内されて森の最奥へ行くと、そこには樹木に囲まれたような場所があって、中央あたりに二つの玉座が見えた
その玉座の前に綺麗な羽の妖精二人が立っていた
二人は僕にうやうやしくかしづくと男妖精の方が僕の手の甲にキスをした
「お待ちしておりました王女様、私がこの国を統べるオベロンにございます」
「同じくティタニアです」
緊張してるのか、ティタニアさんは声が少し上ずってる
「僕が精霊王女リディエラです。それとこっちが」
「おお、鬼神ですね! 初めて見ましたがこんなにも力強いのですね。周囲が歪むほどの闘気に神力・・・。素晴らしいです」
「恐縮です。妖精の王にそう言われるのは嬉しいものですね」
とりあえず二人に立ってもらって僕は要件を伝えた
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