蛇人族の国2

 歓迎会の後の翌朝、すっかりレミラスちゃんに懐かれた僕は彼女の案内のもと迷宮への道のり、砂漠を歩いていた

 彼女には護衛が付いていなくて、僕達二人とレミラスちゃんだけだ

 護衛は必要ないのかお付きのおじいさんに聞いたけど、彼女がてこずる相手ならAランク以上だとのこと

 てことはこの子、強いの?

 その答えはすぐにわかることになった

 砂漠に出たとたんデスワームというワーム型の魔物に襲われたんだけど、リミラスちゃんはその一匹をいきなり掴んで振り回し、他のデスワームを巻き込んで倒してしまった

「どう精霊様? わらわ、強い?」

「う、うん、びっくりしたよ」

 自分の何十倍もありそうな大きさのワームを振り回すって、どんな腕力してるんだこの子

 いや腕力なはずないか

 どう考えてもあの細すぎる腕にあそこまでの腕力はない

 つまり魔力で筋力を補ってるってことか

 それも膨大な量の魔力じゃないとそんな芸当はできない

 僕達精霊やハクラちゃんみたいな精神生命体なら可能だけど、この子は肉体がある

 魔法を使うときは肉体を通すわけじゃないからそのままの魔力を放出できるけど、肉体を通す場合は十分の一にまで軽減されてしまう

 それをここまで放出させれるってことは、この子はすでに精神生命体に近い体になって来てるってことだ

 聞けばまだ七歳。女王に就任したのがわずか五歳で、その頃から力の片りんを見せてたらしいから末恐ろしいね

 この子は進化の兆しを見せているのかも。それもハクラちゃんと同じような

 これはこの子はよく見ておいた方がいいかもね

 母さんに一応伝言しておこう

 念話で母さんに連絡を取ると母さんも同じ考えだったみたいだ

「その子はいずれ次世代を担う力になるはずよ。しっかりと私達で育んでいきましょうね」

「そう言えばこの子の両親って何と戦ったの?」

「そうね、レミラスちゃんのご両親はかつてこの砂漠を襲った巨大なワームが進化した竜と相打ちになり、亡くなったの。私が駆け付けたときにはすでに息はなく、小さなレミラスちゃんを一人残して」

「そうだったんだ」

「でもこの子は周りのラミアたちに愛され育ち、こんなにも良い子に育ったわ。私もできうる限りのことはするから、リディエラちゃんもその子をお願いね」

「うん分かったよ母さん」

 母さんとの念話を終えて僕は再びレミラスちゃんを見た

 無邪気な笑顔で見つめ返してくれるのが本当に可愛い

「ここから一時間くらいかかるよ。わらわちゃんと道覚えたの! エラい?エラい?」

「うんエラいよ、よしよし」

「えへへ~」

 あれだけの力を持っているんだから力の使い方を間違わせないようにしないと

 帰ったらラミア族の人達にもしっかりと言っておこう

 ところでなんだけど、道中の魔物の数が尋常じゃないんですが

 ワームはもちろんバシリスクやら巨大サソリやらわらわら出て来る

 倒しても倒してもあとからあとから出てくるからさすがにレミラスちゃんも疲弊してる、かと思いきやパワフルに魔物を倒してる

 この子は魔力切れを起こさないのかな?

 もしかしてこの歳でもう効率的な魔力の制御方法を知っているとか?

 一応彼女の体内に流れる魔力を視てみると、まさしくその通りだった

 攻撃の瞬間にだけ魔力を必要量だけ流して攻撃してる

 天才だこの子

「あの、レミラスちゃん、その魔力制御方法って誰かに習ったの?」

「まりょくせーぎょー? それってなーに? 魔物倒すときはね、シュッときてドカーンなんだよ!」

「なるほど、精霊様、この子よくわかってないけど感覚で理解しているようですよ」

「天才だったか」

 そんな天才レミラスちゃんに案内されて無事迷宮までたどり着いた

「ここねー面白いんだよ! わらわもよくここで遊んでるよ! いっぱい魔物出てきて、それをどぱーんってやっつけるの! 楽しいよ!」

「え、もう迷宮攻略してるの!?」

「へ? わらわよく遊んでるよ」

「ああ、迷宮がどういうものかも理解してないみたいです」

「どんだけ強いのこの子・・・」

 まぁそんなこんなで迷宮の入り口にたどり着いた僕らはさっそく

「あれ? レミラスちゃんはどうするの? 一人で帰すわけにもいかないし」

「わらわいつも一人で来てるよ? 一人で帰れるよ?」

「でもこんな小さな子を一人で帰すわけには・・・。うーん」

「それなら母様に任せなさいな」

「え!?」

 いつの間にか僕の後ろに母さんが立っていた

 どういうこと?

「転移で来ちゃったわ。ほらレミラスちゃん、おばちゃんと一緒に帰りましょうか」

「わぁ! 精霊のおばちゃんだ!」

「ああ、そう言えば会った事あるんだったね」

「そういうことだからリディエラちゃん、ここは私に任せなさい」

「それからハクラちゃん、リディエラちゃんをお願いね」

「は、はい!」

 急に母さんが来たことにびっくりしたけど、僕とハクラちゃんは迷宮の門をくぐって中に入っていった

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