蛇人族の国1

 さて蛇人族の国は馬人族の国から遠く離れてる

 一旦精霊の国に戻ってそこから東を目指して山を三つほど超えて、さらに広大な砂漠地帯の中心にあるオアシスにある国だ

 その名もジャルアジュラ共和国

 もともと小さな国だったのが、多種多様な蛇人族が集まって大きな国になった

 自然に感謝しながら生きる国で、仲間意識が非常に強い

 精霊への感謝を忘れない人たちだから僕が行けば多分警戒はされないと思うんだけど

 うーん、ハクラちゃんは大丈夫だろうか?

 まあ僕が一緒だから大丈夫なはず

「転移するから掴まって」

「はい!」

 ハクラちゃんの手を取って転移、一気に飛ぶとオアシスの目の前だった

「ふわぁああ熱いですねぇ。体が溶けそうですぅ」

「溶けてる溶けてる」

「あららら、うーーー、ふん!」

「あ、戻った」

「なんだかこの体になってから私さらに暑さに弱くなってる気がします」

「何でだろう。鬼神さんに会ったらきいてみようよ」

「そうですよね、その方がいいですね」

 とりあえずこんな熱いところで話してても仕方がないから国の門番のところまで来た

 その門番さんは明らかに僕らを警戒して槍を構えてる

「何だお前たちは、どこから来た? ここはレミラス女王様の治め、る・・・。もしや精霊様、ですか? ここここれは申し訳ありません! すぐにご案内を! お連れ様もこちらへ! さぁさぁ!」

「う、うん、ありがとう」

「あ、わ、わわ」

 ハクラちゃんも僕も腕を引っ張られて連れていかれた

 ぐいぐいくるなこの人、足はやっぱり蛇で、砂漠だからスルスルと歩きやすそう

 で、国の中は水路がたくさんあって、やっぱり妖蛇族と同じくその水路をラミア族の人達は泳いでいた

 オアシスって言うだけあってすごい水の量

 それもそのはずで、ここには母さんの加護がいきわたってるから水が枯れることがないのだ

 綺麗な湧き水が滾々と常に湧いている状態だからね

「こちらです精霊様! 女王様にお会いください!」

「ひ、引っ張らなくてもちゃんとついて行くから」

「あ、も、申し訳ありません! つい興奮してしまいまして。私何分新人なもので、精霊様にもお会いしたことが無くて」

「そうなの?」

「はい、この辺りは精霊様が少なく、目撃されるのは砂の精霊様と精霊女王様くらいなのです。それ故に私のような若い者はほとんどそのお姿を拝見できないのです」

「なるほど、そっかぁ、でも下手に姿を現すわけにもいかないしなぁ。しょうがないから今度僕が加護を与えに来た時は全体公開でいいよ。あんまり見られるのも恥ずかしいけど、見たい人に見てもらうくらいなら特に加護に影響もないしね。あなた達なら危害も加えてこないでしょう?」

「き、危害なんてとんでもない! そんなことをしようものならラミア族全員に殺されますよ」

「まぁそう言うことだから、その女王の、えっと」

「レミラス様です」

「そうそのレミラスさんにも言っておこうか」

「そ、それは、我々としても願ってもないご提案です。嬉しいです!」

 この門番さん、精霊を見れたことがよっぽど嬉しかったみたいで涙している

 そんなに嬉しがられたら僕も悪い気しないな

 と言うわけで今度から公開で加護を与えることになったよ

 まあ女王にはこれから言うんだけどね

 彼が言うには女王は気さくな人だからすぐそういう風に取り図ってくれるだろうって話だ

「では私はこれで!」

 ビシッと敬礼をして門番さんは戻って行った

 さて、ここが女王のいる王座か

 この辺りは砂金が豊富で、金色煌びやかな装飾が施されてる

 扉をノックして開けると、誰か小さな子が飛びついてきた

「ふわぁ! 本当に精霊様だ! 嬉しい!」

「うわっぷ、き、君は?」

「わらわ? わらわはレミラス! この国の女王だよ!」

「え、小さい」

「むー、わらわ小さくないもん! すぐ大きくなるんだもん!」

「レミラス様! 駄目ですぞ、精霊様にそのような」

「ああ大丈夫大丈夫、えっと、レミラスちゃん、僕はリディエラだよ。よろしくね」

「うん! 精霊様のお話、ずっと聞いてたよ。絵本にね、いっぱい乗ってるの! ほら、これとかこれとか!」

「わぁほんとだ。いっぱいもってるね」

「うん! ずっと会いたかったの精霊様!」

 なんだろう、凄く可愛い。小っちゃい、抱っこしたい

「あの、抱っこしても?」

 お付きらしいおじいさんに聞いてみた

「そ、そのようなお手を煩わせるわけには」

「僕がやりたいんです」

「そ、そうですか。レミラス様、精霊様がレミラス様を抱き上げたいそうです」

「ほんと!? わらわ、抱っこされるの好きだよ!」

「ふふ、じゃあお言葉に甘えて」

 持ち上げると思いのほか体温が低い

 ひんやりしてるけど、肌はスベスベで柔らかい

 鱗の部分もつるんとしてて気持ちいいかも

「ふわぁ、可愛い、やわらか~い」

「精霊様、くすぐったいよぉ」

 小さい子特有の柔らかさを堪能してから僕は今日来た目的を話した

 レミラスちゃんはまだ小さくてよく分かってないみたいだったけど、お付きのおじいちゃんが理解してくれたのでよかったよ

 レミラスちゃんのご両親は数年前に砂漠に現れた巨神と呼ばれるゴーレムとの戦いで命を落としたらしい

 だから少し幼いけど、世襲制のこの国でまだ幼い彼女が女王となったらしい

 で、無事今度からの加護は公開、それから迷宮までの案内を頼めることになった

 迷宮はこのオアシスから離れた場所にあるみたいで、案内が無いと迷っちゃうらしい

 あ、今回は加護はないよ

 少し前に母さんがやってるからね

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