大事件の幕開け

 絵画のように美しい男が報告書に目を通す

 そこにはこう書かれていた

『エフィレポートNo.21 連日に及ぶ巨大な力の流れはおそらくあの・・・世界は何度目の崩壊・・・見えぬ災厄・・・もう間もなく訪れる。また世界は繰り返す。セレニアの悲劇を忘れてはいけない・・・・・・は未だ動かず沈黙したままである・・・またレギナントの車輪が回り始めたことで・・・詳しくはレポートNo.15を参照のこと。ラフエルの斜塔にて・・・エフィ』

 男はそのレポートを懐にしまうと歩き始めた

「プリシラを呼び戻さなければ。エイシャも無事だったことですし、双子には引き続き調査をお願いするとして、それにしてもまさかあの方がこのようなものを持っているとは思いませんでしたね」

「兄様、あの方というのは?」

 傍らにいた真面目そうな眼鏡をかけた少女が問う

「あの方は我々よりも後に生まれ、我々をしのぎ、異放者ですら簡単に倒せる実力を持った鬼神です」

「鬼神? 鬼神はここ数万年で生まれた新しい種族ですよね?」

「ええそうですキュカ。貴方でもあの方の気配を察知することはできないでしょう。神々は誰も叶わない世界を裏から支える最強、それがあの方なのですから」

「ではなぜあの時、その方が助けてはくださらなかったのですか?」

「あの時はまだあの方の力が戻っていなかったと聞いています。あの時以前にも、あまり知られてはいないことですが大世界が一度滅びかけたことがあります。それをあの方が防いでくださいました」

「それは、確かに私も知らないです」

「ええ、あなたはその事件以降に生まれていますからね。さてキュカ、少し頼みたいことがあるのですが」

「はい、ラシュア兄様の頼みなら」

「ありがとうキュカ、このレポートをエイシャに届けてほしいのです。エイシャに渡した後は双子にこれを」

 そういってラシュアがもう一枚の紙をキュカに渡した

「これは?」

「これからあの二人にやってほしいことが書いてあります」

「念話で直接話せばいいじゃないですか」

「それもそうなのですが、どうもあの二人は私と話すと緊張するようでしてね」

 気恥ずかしそうに語るラシュア

「まぁそれは兄様とあの子達の問題だから、ええ、分かったわ」

「すみませんねキュカ」

 監視の女神キュカは預かったレポートと手紙を持って妹たちの元へと向かった


 ところ変わり力の女神エイシャの部屋

 エイシャはキュカからレポートを受け取ると中身を見る

「これ、ところどころが見えなくなってる。キュカ姉様、これはいったい」

「さぁ、私にもわかりませんが、兄様があなたに渡すようにと」

「読んでもよく分からないわ。なんでこれを私に」

「取りあえず渡したわよ」

「ええ、ありがとう姉様」

 レポートを改めて読み返すが、その内容はよくわからないものばかり

「エフィレポートNo.21、No.45、No.56・・・、これは一体何? 世界、滅亡、幾度も、それに誰かに宛てた手紙、相当古いものね。一体兄様はこんなものをどこで・・・。私にどうしろって言うの?」

 レポートの全てに目を通して、共通した言葉が出て来ることが分かった

 それは大世界の滅亡が繰り返されているということ

 どうやらこのレポートを書いていた者はその滅亡を何度も繰り返しているような描写が幾度となく描かれていることが分かった

 何度も食い止めようとしたのか、レポートのナンバーが大きくなるにつれて苦悩したかのような殴り書きも見られる

 エイシャはレポートをしまうとそのレポートについて何か知っている者がいないか探すため旅を始めることにした


 キュカはもう一つの手紙を丁度戻って来ていた双子に手紙を渡す

「キュカ姉さん、ラシュア兄さんからですか?」

「ええサニア、指令らしいわ」

「はぁ、またなの?」

「あなた達にしか頼めないことよルニア」

 サニアとルニア姉妹は手紙に書かれていた内容を理解した

「いくわよルニア」

「ええお姉ちゃん、またお仕事の時間ね」

 時空をゆがめて異世界に繋がる扉を開き、世界を救うため彼女たちは再び動き始めた


『エフィレポートNo.152 世界が危ない。私だけではこの大異変を防ぐことはできないだろう。マコーレ、あなたはこれまでの旅のことをもう覚えていないでしょうね。でも私は・・・が。あの何もかもを操作する力を持った何かは、きっとまた世界に影響を及ぼすわ。ああ、マコーレ、またあなたが私を求めてくれるのなら、私はどこにいようとも駆け付けるのに、その願いも恐らくもう敵わないでしょう。ここからが私の最後の仕事になります。そう、最後の仕事です。マコーレ、あなたと私の意思を継ぐ者たちに、このレポートを託します・・・異放の護り手、エフィ・ラニオット』

 謎の女性によるレポートはこれを最後に見つかっていない

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