翼人族の国再び9
まったく、少し登っただけでもかなりの数の鳥魔物に襲われるからゆっくりと休めやしない
少し登っては葉っぱの上で休んでゆっくり登ろうと思ったんだけど、葉っぱの上の魔物の数が尋常じゃないんだ
休もうものならこれ幸いとばかりに鳥魔物が一斉に襲い掛かって来ちゃう
ハクラちゃんも僕も気が休まらないからずっと戦ってる気がする
それでもちょっとずつ着実に大樹を登れてはいるんだよね
「精霊様、この木って葉っぱのとこにだけ魔物がいませんか?」
「た、確かに。ということは幹の部分なら休めるんじゃない?」
そのことに気づけたおかげで、僕が精霊魔法で樹木を少し操って二人分がゆうにくつろげるスペースを作り出せた
そこからは登ってはスペースを作って休んで、また登るって言うのを繰り返した
何日かかっただろうか?
ようやく頂上が見えてきたところで鳥魔物の襲撃回数がグッと増えた
今まで幹の部分までは来なかったはずの魔物たちは僕らを目ざとく見つけると一斉に襲い掛かってくる
それらを振り払いながらとにかく上へ上へと急いで、頂上が見えてから数時間でその頂上へと上り詰めることができた
もはや体力もなくて神経も完全にすり減ってしまった
頂上へ着いたとたん僕らはバタリと倒れ込んだ
眠れはしないけど、しばらく何もしたくないよ
それから体感で一時間ほどが経過して、ようやく僕らも立てるくらいまで気力も回復した
それでやっと周りの景色を見ることができたんだ
まわりには雲もなくて、恐らく雲ができる高さよりもさらに高い位置にいるんだと思う
下を覗き見ると数十メートルくらい下に雲がかかっているのが見えた
「綺麗ですね。まるで天国のようです。天国なんて行ったことありませんけど」
「まぁ伝承にある天国ってこんな感じらしいからね」
下の景色も楽しんで、僕らは頂上にあった大広場を探索し始めた
とはいっても中心に小さな家らしきものが見えるから、確実にそこがゴールなんだろうけどね
一応見て回りたいじゃない?
そして僕らは十分に満足したところで家の扉をノックした
「空いてますわ。どうぞお入りなさいな」
カナリヤのさえずりのように美しい声が聞こえたので、僕は扉を開けて中に入った
家の中は簡素で、小さめのテーブルと椅子、それからその椅子に腰かけている綺麗なお姉さんがいた
翼が生えてるから翼人族?
「まぁ、わたくしは翼人族ではありませんわ。わたくしこそが鳥神ヤコですの。元は神獣鵺でしたけどね」
「え、鵺なのですか!?」
「元ですわよ、元。まぁそのことはどうでもいいですの。あなた達は無事試練を突破しました。まぁ今までに比べたら簡単だったでしょう? わたくしから特に教えられることはございませんから」
「そうなんですか?」
「まぁ飛び方くらいですわね。わたくしは戦闘が得意ではありませんの。そうですわね、あなた方が望むのであればもう少しだけ速く空を飛ぶ方法をお教えしますけれど、わたくしが教えずともあなた方はすぐにわたくしを超えそうですし、そう考えるとやはり何も教えることはございません、ということになりますわね」
どうにもヤコ様は特にアマテラス様からの指令も受けていないらしく、アマテラス様に名を授かった十二神全員で僕らを鍛えなさいと言われただけだからやってるだけ、って感じらしい
「あ、そうですわ。二人ともこちらに座りなさいな。そして今までのあなた達の活躍でも効かせて下さらない? ほらお紅茶にお菓子もございましてよ?」
ヤコ様は椅子を用意してくれると自ら紅茶とお菓子を用意してくれた
どちらもかなりの高級品に見えるけど、実はヤコ様お手製らしい
お菓子のクッキーを一口齧ってみると、まるで天にも昇れそうなほどの美味しさが口に広がった
さらに紅茶の香りも気持ちを落ち着かせてくれるし、砂糖を入れなくてもほのかな甘みがある
ハクラちゃんもほやっとした顔で和んでる
なんかおばあちゃんみたいで可愛い
見た目は未だに十二歳くらいの子供のまま戻れてないんだけどねアハハ
そうやってくつろぎながら僕らは今までの話を長々語った
ヤコ様はご飯も作ってくれたんだけど、これがまた絶品だったんだよね
それに僕らの話を嬉しそうに聞いてくれて、その聞き上手なこと
僕らも次から次へとすっかり話し込んでしまった
気が付くとすでに数時間が経過してたくらい
ヤコ様も満足してくれたみたいでよかったよ
「久方ぶりにいい冒険譚が聞けましたわ。わたくしもこう見えて数十年前まで同じように冒険をしていたのですよ。まぁ呼び出された時のみ戦っていたのですが、わたくしはそこまで強くないので足を引っ張っていましたの。それでも主はわたくしにはわたくしの良いところがあるからと呼んでくださっていましたの。その主は今わたくしたちのリーダーでして、非常に優しい方です。いずれお会いできるかと思いますわ」
ヤコ様にもいろいろ話を聞けて楽しかったな
次は妖怪族の国にある秘迷宮、狐狸の浄園という迷宮に向かうよう言われた
どうやらクノエちゃんのいる妖狐族の里にあるみたいだ
クノエちゃんにも久しぶりに会えるね
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます