翼人族の国再び4

 まずこの食人植物はずっと動いてて危ない

 というのも魔力の宿った棘が生えてて僕ら精神生命体でも触れば傷を負う

 それから多分だけど食べられたら僕らでも危ない

 どうやって捕まえようか考えているとハクラちゃんが立て札から解決法を見つけ出した

「精霊様、ここ読んで下さい」

「ん? えっとなになに、スレアフェノラスタはアンモニアに非常に弱く。おしっこを、かけると、動きが止まります」

「お、おしっこを、ですか?」

「うん、いや、うん、そうは言われてもそもそも僕ら出ないし、ねぇ」

「あ、私出ます。ちょっと待っていただければ」

「え?」

 そういうとハクラちゃんは近くにあったしげみに入り込んでいった

 まだ精神生命体になったばかりで少し体の機能が残ってるのかな?ってそんなこと考えてる場合じゃない! 乙女としてそれは何としても止めないと!

「ちょ、待った待った! 別の方法考えるから!」

「え、でももう出かかってまして」

「ストップストップ!」

 こういうことを恥ずかしげもなくするからあまり姫って見られないんじゃ

 これからじっくりその辺も話し合っておこう

 クロハさんがあまりにも箱入りで育てちゃうからこんな子に・・・

 まわりもコクウさん以外女の子ばっかりだからなぁ

 もしかして他のみんなも?

 ああ頭が痛いよ

「そうですか、ではどうしましょう?」

「ハクラちゃん、凍らせればいいんじゃない?」

「あ、そうですね」

 ふぅ、最初からそれを思いついてればよかった

 とりあえずタオルを渡して拭かせてからハクラちゃんの神力を使ってもらった

「大氷林!」

 単純に凍らせるだけの技みたいで、周囲がカチコチに凍り付いた

 そのまま動かなくなったスレアフェノラスタを根っこから優しく取り出すとさっき見つけた門まで連れていく

 よかった、ちゃんと門が開いた

 その扉の上に泊まっていたヘブンバードちゃんもまたハクラちゃんの肩にとまり直す

「それでは次に行きましょう!」

「うん、ハクラちゃん後でお話しようね」

「え? はあ、あれ? 精霊様怒ってます? あの、私何か」

「うーん、ハクラちゃんには少し常識を教えたいからね」

「常識、ですか? それならお姉ちゃんに」

「クロハさんの言うことは常識からちょっと離れてるかな?」

「そ、そうなんですか!?」

 とりあえず常識はこの迷宮をクリアしてから教えるとして、この階層に集中しよう

 そういえばこのスレアフェノラスタはどうしたらいいんだろう?

 そう思って周りを見てみると、立て札に「スレアフェノラスタはこちらへ植え替えてください」と書いてあった

 体よく働かされたような気がする

 その指示通りに植え替えて氷を解いてあげると異様に元気にうねりだした

 その後は周囲を探索

 ここはさっきのジャングルほどじゃないけどうっそうとした森で、相変わらず鳥の声がよく聞こえる

 たださっきまでの可愛らしいものじゃなくて、ギェエエエとかギャアアアアとか、ギョギョギョギョとか不気味な感じ

 ハクラちゃんもびくついてる

「精霊様、何だか不気味ですね」

「うん、まあ魔物が出るなら倒すだけ。ハクラちゃんも魔物なら大丈夫でしょ?」

「は、はい、ゾンビとかアンデッド系は駄目ですが」

「まぁアンデッドなら僕の方が倒せると思うよ。光魔法得意だし」

「その時はお願いします」

 ここからは魔物が出る可能性が高い

 なにせ気配がそこかしこでして、見られてるみたいだしね

 とにかく先に進まなきゃ話にならない

 ハクラちゃんに服の裾を掴まれつつ少しずつ進むと、案の定魔物が襲い掛かってくる

 どうやらアンデッドじゃないみたい

 出てきたのは鳥型の魔物で、鋭いくちばしにぎょろついた目、大きさは2メートルほどはあるかな?

 空を飛ぶための羽は無くて、首の短いダチョウみたいだ

 そいつは僕らを見つけるなり嘴で攻撃してきた

 地面に穴が開いて煙が出る

 どうやら嘴に毒があるみたいだ

「ハクラちゃん!」

「はい!」

 すぐに刀を抜くハクラちゃん

 鋭く嘴でハクラちゃんを狙ってきたけど、刀でいなしてその首を切り落とした

 さすがにこのくらいの魔物ならハクラちゃんの敵じゃないね

「また来ました! どうやら群れで狩りをする魔物みたいです。精霊様はそっちの三匹をお願いします!」

「うん!」

 ハクラちゃんの方は四匹。僕は目の前にいた三匹の怒涛のついばみを結界で防ぎつつ炎魔法でカウンター

 ダチョウみたいな魔物は燃えてその場に倒れた

 焼き鳥のようないい匂いがする

 ハクラちゃんはさすが、刀であっという間に四匹を倒してしまった

「ここの魔物はそんなに強くないね」

「はい、でも連携は目を見張るものがありましたね」

「そうだね、簡単に囲まれちゃったもんね」

 警戒はしてたはずなのにいつの間にか囲まれてた

 狩りのために気配を消すのになれてるのかもしれない

 もしSランクの魔物がそんな連携を取ってきたらただじゃすまなかったかも

 もっともっと警戒しないとね

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る