翼人族の国再び3

「それじゃあ頑張ってくださいね! 精霊様、お姉ちゃん!」

「ありがとうナーリャちゃん」

 ナーリャちゃんに見送られながら僕らは迷宮への扉をくぐった

 入ってすぐジャングルのような場所

 たくさんの鳥の声がしてにぎやかだ

「精霊様、道がありますよ。恐らくこれが順路ですね」

「そうだね。注意して進もう」

 道は獣道のようなものだけど、ここ以外がうっそうとしてるから確実に道だね

 鳥の鳴き声はずっと激しく響いていて耳が痛いくらい

 時々姿を見せる鳥はカラフルで幻想的な雰囲気を携えている

 ハクラちゃんもその鳥たちに見惚れてるよ

「魔物の気配は、全然ないですね」

「うん、でも油断しないで。もしかしたら気配のない魔物とか敵がいるかもだし」

「はい!」

 二人で警戒しつつ奥へ進んでいったけど、特に何が出るわけでもなく次の階層への扉前まで来てしまった

 その扉の前に張り紙がしてある

「えーっとなになに、この先に進むにはヘブンバードを連れてくること。だって」

「ヘブンバード? 聞いたことがない、鳥?ですね」

「バードだから多分鳥だよね。どんな鳥なのかわからないから片っ端から連れて来てみよう」

 連れて来ると言ったのは、こう見えて僕は精霊だからだ

 精霊はあらゆる生物に呼びかけることができる。ただ姿が分からないとその一匹のみを呼び出すことはできないから、片っ端なんだ

 とりあえず精霊特有の能力を発動

 地味に初めて使ってみたけどやり方は母さんに習ってる

 一気にここに鳥たちを呼んでみると、恐ろしい数の鳥が集まって来た

 それと同時に扉が開く

「開いたはいいけど、どの子がヘブンバードなのかな?」

「えっと、ええええっと、多すぎて分からないです」

「ねー、どの子がヘブンバードなの?」

 鳥たちは顔を見合わせるとピチュピチュと鳴き始め、そこから一羽の可愛らしい綺麗なコバルトブルー色の鳥が出て来た

 どうやらこの子がヘブンバードらしい

 小っちゃくて綺麗で可愛い

 僕の手のひらに乗るとチチチと千鳥のような鳴き声で鳴いている

 その子は僕の手から飛んでハクラちゃんの肩に乗ってそのまま動かなくなった

「えっと、一緒に行くつもりなのかな?」

「そうみたいですね」

 仕方ないので僕らはそのまま扉をくぐった

 放そうにも全然離れてくれなかったから仕方ないね

 扉の先は今度は植物園のように草花が整って生えている

 まるでゆっくりみて下さいと言わんばかりに多種多様な植物がいて、空気もおいしい

 鳥の鳴き声も聞こえてくる

「ここも魔物の気配がしませんね」

「うん、まぁ戦わなくていいならその方がいいんだけどね。この子もいることだし」

「そうですね」

 ハクラちゃんにすごく懐いているのか、ヘブンバードはずっと頭を擦り付けていて滅茶苦茶に可愛い。というか羨ましい

 ハクラちゃんもその可愛さにメロメロになってる

「はうー、この子、この迷宮を攻略したら連れ帰ってもいいでしょうか?」

「それは駄目だよ。この世界にいない鳥だから生態系が、それよりなによりこの子だけじゃ繁殖もできないから逆に可愛そうだよ」

「そ、そうですよね。残念ですが諦めます」

 あきらめた割にはヘブンバードに頬ずりしまくってる

 さてこの植物園なんだけど、区画ごとに花、木々、草、それから食虫植物に分かれていて、その食虫植物のエリアがおかしい

 そこにいる食虫植物は明らかに大きくて、虫を食べるというより人を食べそうな大きさ

 しかも時々グネグネ動いてる

 はっきり言って恐怖です

「あそこにはなるべく近づかない方がいいですね」

「うん、なんか怖いし」

 とりあえず植物園内を見て回って、花のエリアで扉を発見した

 案の定扉が開いてなくて、その前に張り紙がしてある

「えっと今度は、げっ、食人植物のスレアフェノラスタを持ってくることってかいてある」

「スレアフェノラスタ? また聞いたことの無い名前です」

「僕も知らない。それにしてもあそこ、やっぱり行かなきゃいけないんだ」

「ですね、戦うための心の準備はしておかないとです」

「ヘブンバードちゃん、ちょっと危ないからここで待っててくれる?」

 その言葉を理解したのか、ヘブンバードはハクラちゃんの肩から飛び立つと扉前の立て札にちょこんと捕まった

 凄く可愛いですはい

 とりあえずヘブンバードちゃんにはそのままそこにいてもらって、二人でさっきの食人植物のいた場所まで戻った

 うん、やっぱりこの食人植物たちは怖い

 近づいただけで襲ってきそうな雰囲気がある

「精霊様、どれがスレアフェノラスタなのでしょう?」

「うーん全然わからない。どうしよう、鳥と違って植物だと呼びかけても動けないからなぁ」

「動いてますけど?」

「それはそうなんだけど、植物人なら意思表示とかも容易いんだけど、植物たちは僕じゃまだ語り掛けるのが難しいんだよね」

「そうなんですか?」

 母さんやアスラムや植物の精霊とかだったら意思疎通も簡単にやってるんだけど、僕はまだまだ修行が足りないんだ

 どうしようか悩んでいると、食人植物の下に何やら白いものが見えた

 これって・・・

 僕は恐る恐る近づいてその白いものをのぞき込んでみた

「ハクラちゃんこれ」

「あ、名前のついた立て札ですね」

「なんだ、それなら簡単だったね」

 名前をひとつづつ覗いて行くと、すぐにスレアフェノラスタの立て札が見つかった

 ただこのスレアフェノラスタを連れて行くのが本当に一苦労だったんだ

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