神の如くは白と黒6
皇帝にベルネッサのことを報告すると同時にそのベルネッサを紹介した私達、今ではすっかり可愛らしい黒猫に変わったベルネッサを見て皇帝はニコリと微笑んだ
皇帝もどうやら体の調子も戻ったみたいで、もう立ち上がれるくらいにまで回復してる
お姉ちゃんが必死で説得、と言っても皇帝は何の口も挟まずにただ相槌を打ってるくらいだったんだけど、私達の話をしっかりと聞いてくれた上で口を開いた
「そうかそうか、まさか伝承に伝わるベルネッサがそのような愛らしい猫だったとは。ふむ、確かにわしは命を落としかけたが、誠心誠意あやまっている彼を見てわしは、彼を、許そうと思う」
「本当ですか!? ありがとうございます!」
「いやなに、それにしても可愛いではないか、どれ、こっちへ来なさい」
そう言われたベルネッサは戸惑いながらも皇帝の膝上に飛び乗った
「ほっほ、これは何ともフワフワで気持ちのいい毛じゃ。ほほほ、どうじゃベルネッサ、もう害をなさないというならこの国で一緒に暮らさないかの?」
「え、いいの?」
「うむ、この国を守ってくれると言うのなら」
「うん! 僕守るよ! 今まで迷惑かけた分頑張るから!」
ベルネッサがそう言うと、その体が光り始めた
「あ、あれ? なんだこれ」
「陛下! 離れてください!」
お姉ちゃんが皇帝を守ろうと前に出たけど、ベルネッサの光が弱まってその姿があらわになると剣を治めた
ベルネッサの禍々しく捻じれた角は綺麗にまっすぐに伸び、金色の毛を携えた美しい猫に変わっているじゃないですか!
「これは、神獣? 神力を感じる」
「あ、ホントだ、皇帝さん、その子、神獣になってますよ!」
「ほほ、何とまぁ、驚きの連続じゃな」
皇帝の膝に凛々しく座る神獣となったベルネッサはクシクシと頭の毛を解いている
「うん、なんだか力がみなぎってくる感じ。でもなんで僕、神獣になったんだろう?」
「恐らくあなたは元々神獣としてのポテンシャルを秘めていたはず、それが力におぼれたためなれなかったと考えるのが妥当、会心したからこそ神獣にようやくなれた、ってとこでしょうね」
「そ、そうなの? でも僕、神獣として何をすればいいのか・・・」
「この国を守ってくれるんじゃろう?」
「う、うん!」
「なら守護神獣じゃな、ベルネッサ、お前はこの国の守護神獣としてこれから民を守って行って欲しい」
「わかった! 頑張る!」
ふぅ、色々あったけど何とか無事ベルネッサ事件も終息したし、疲れたから一旦帰って少しお休みしようかな?
そんなことを考えていると、急に胸が痛くなるような不思議な喪失感が襲ってきて、今すぐに帰らなくちゃって思いが頭の中をしめた
もしかして、仲間に何かあったのかも
お姉ちゃんも同じように胸を押さえてうずくまってる
「だ、大丈夫か姫たちよ」
「え、ええ、どうやら私達の仲間に何かあったようなのです。失礼は承知の上ですが、これにて失礼させて抱きます」
「ああ、それは心配だろう、すぐに帰りなさい」
皇帝に軽く頭を下げると私達は転移で鬼ヶ島まで帰った
城に戻ると中は大騒ぎになってて、コクウに話を聞くと
「キキが行方不明らしいのです。今アカネ率いる三鬼仙たちが港の方へ探しに行っています」
「それなら私達も行くわよハクラ」
「うん! キキが心配、急ごう」
二人で今度は港へ転移して、そこからアカネの気配を辿って高速で飛んだ
どうやらみんな、昔一緒に遊んでた森の方へ行ったみたい
キキが心配で胸が締め付けられそうだけど、私達はとにかく急いだ
「ハクラ、あそこにアカネの頭が見えるわ」
「ホントだ! あの真っ赤な頭はアカネに間違いないよ。降りよう!」
アカネの前に降りると、懐かしい顔ぶれがキキ以外全員集まっていた
昔はこのメンツでよく遊んでたっけ。大きくなってから(とは言ってもまだ成人はしてない子供だけど)はあまり遊ぶこともなくなって、でも大切な友人たちには変わりない
「ハクラ様! クロハ様!?」
「状況報告をお願いチャダノ」
「はい、現在キキを追跡中、彼女はこの森の祠に封じられていた何かに取り憑かれているようです。それと、彼女と共にいる黒いフードを目深にかぶった女性の目撃報告もあります」
さすがチャダノ、的確に状況を分析して分かりやすく簡潔に説明してくれた
この子って昔っから頭いいのよねー、本とかよく読んでたし
で、キキに取り憑いてるのは何かわからないけど、キキとその黒いフードの女が一緒にいるところを目撃されてる
キキはきっと、その黒いフードの女に何かされたんだ
許せない、私の友達に手を出すなんて
お姉ちゃんも静かに怒っている
世界各地で問題を起こしてる黒いフードの人物たち。一体何が目的なの?
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