三獣鬼と三妖鬼15

 なんかものすっごい胸騒ぎがするっす。なんだか大切なものを喪失するような気がしてならないんすよね

 とりあえず怪我も回復したことっすし、ソウカにそれとなく聞いてみるっす

 それにしてもキキは戻ってくるのが遅いっすね。昨日から帰って来てないみたいっす

 それもあるせいっすかね?この胸騒ぎは

 と思ったらソウカも同じように胸騒ぎがするって言ってるっす

「なんだかー、こう心にぽっかりとー穴が開くようなー」

「だよね! あたしもそうなんす!」

 二人で話していると三幽鬼が連れ立ってこっちに来たっす

「あ、アカネっちー、ガキどもの訓練はいい感じ~。サクラっちとセイガきゅんがめっちゃよき! ちょうだよちょう! あ、それとアカネっち気づいてんの? アヤナのこと」

「アヤナっすか? あの子はまだ小っちゃいからゆっくり育ててるっす」

「そうじゃなくてさ、いやそうなんだけど、あの子相当な実力があるよ。もしかしたらハクラちゃんと同じくらいの潜在能力があるかも」

 マリハが真面目な感じになってるっす

 こういう時のこの子は本気だから本当にアヤナがそれだけの実力を持ってるってことになるっすね

 あたしはそういった感知には疎いから気づけなかったっす

 マリハの繊細な感覚があってこその気づきになったんすね

「ところで、あなた達も何か感じませんか? 私は先ほどから体がゾワゾワするのですが」

「そうそう、あーしも!」

「わちきも胸騒ぎがするんだわ。だからあんたらもじゃないかって思って聞きに来たんよ」

「コクウさんはなんて言ってたっすか?」

「コクウ様は何も感じないって言ってたわさ。恐らくわちきらだけが感じてるんさね」

「鬼仙だけがってことっすか?」

「そう思うし。てかキキちゃんは? まだ帰ってない系?」

「そうっすね。聞き込みが長引いてるみたいっす」

「心配です~。みんなで探しに~、行きませんか~?」

「えー、あいつももう子供じゃないんだから自分で帰ってくるわさ」

「心配ですー、探しに行きますー」

「いやだから」

「心!配!ですー!」

「分かったわさ。いいよねチャダノ、マリハ」

「カイラがいいならいいよ」

「あーしもー」


 というわけで港町までみんなで来たっす

 ここは潮風が気持ちいいっすね。まぁ昨日までいたんすけどね

 とりあえずキキを見た人がいないか聞き込みっす

 というか一人目ですぐ目撃者を見つけちゃったんすけど、まぁ早いにこした事はないっすね

「ああ、キキさんなら昨日いろんな人に聞き込みをしてたからね、皆見てるはずだよ。いやぁあの子もすっかりしっかりして。昔はあんなに泣き虫だったのにねぇ」

「あー確かに。泣き虫だったす。でも今はみんなのまとめ役になってくれてるっす。あの子がいるからあたしら三獣鬼も三妖鬼、三幽鬼もまとまってるんすよ。こんだけ個性が強いっすのにね」

「個性が強いは余計なんだわ!」

「あーしなんて無個性の塊じゃーん」

 いや、そんなことは断じてないと断言するっす

「まあ、何とはなくともキキを探さないといけないんだわ。全く、心配させるんじゃないだわ」

「そういえば、ダンジロウさんがフードを着た誰かとキキさんが話してたって言ってたな。ダンジロウさんの家はわかるよね?」

「おお、ありがとうっす! 早速行ってみるっすよ」

 港には魚屋がたくさんあるっすけど、ダンジロウさんの家は網元っす。つまりこの港を取り仕切るリーダーっすね

 昔っから魚をもらったりお世話になってるっす

 ソウカが一番親しくしてたっすから、ここはソウカに聞いてもらうことにしたっす

「でですねー、キキちゃんを探しているんです~。そのフードの人物は~、どこに行ったか見ていませんか~?」

「そうじゃなぁ、わしもちらっとじゃけん詳しゅうは分からんけど、マシラの森の方角へ向かっとったと思うわ」

「そうですか~、ありがとうございます~ダンジロウおじさん~。またお菓子作って~、もってきますね~」

「おう、ソウカちゃんのお菓子はうまいけんのお、楽しみじゃわ」

 ダンジロウさんのおかげでキキがどこに行ったか分かったっす

 それにしてもなんでマシラの森なんかに?

 あそこには祠があるだけで特に何もなかったはずっす。それにフードを着た人物って・・・

 もしかして、あの件の男と関係あるんじゃ!

 だとしたらキキが危ないっす!

「急ぐっす!」

「ええ、この胸騒ぎの原因が分かった気がします!」


 マシラの森

 その奥には小さな祠があって、昔の神様が封じられてるって聞いたっす

 子供の頃聞かされた話

 子供ながらになんで神様が封じられたのか分から無かったすけど、もしかしてその神が今巷で怒ってる事件のように封印を解かれていたヤバいやつだとしたら!

 急いであたしたちはその祠へと走ったっす

 子供の頃はその祠の周りでかくれんぼなんてしていたくらい平和な場所だったんすけど、そういえばここにどんな神様が封じられているのかなんて聞いたことが無かったっす

 というよりここの伝承が残ってなかったって言うのが正しいっすね

 だから危険性は、未知数なんす!

 祠まで来ると、その前にキキが立ってたっす

 あの黄色い髪に小柄な後ろ姿、間違いないっすね

「良かったキキ、無事だったんすね」

 そう言ってキキの肩を叩くと、恐ろしいほど冷たかったっす

「冷たっ! キ、キキ?」

「アハァ」

 振り向いたキキは口が裂けんばかりに笑っていて、目がまるで洞穴のように空虚で、その体から真っ黒な雷を発してあたしに攻撃してきたっす

「キキ! あんた何してるんわさ! アカネは親友でしょうが!」

「くぅ、バチバチするっす。何すかこの雷、キキの今までの雷じゃないっす! こんなに禍々しくないっすよ!」

「キ、キキちゃ~ん、どうしたの~?」

「何かに操られて、いえ、これは乗っ取られています。あの祠、あそこから同じような気配が・・・。恐らくキキはこの祠に封じられていた何かに体を乗っ取られたんでしょう」

「く、どうすればいい、どうすればキキちゃんを救えるの!?」

 キキはめちゃくちゃな動きであたしらを襲ってくるっす

 この力、やばい。このままじゃキキの体が壊れるっす!

 全員で取り囲んでそれぞれが仙術を発動したっす

「仙術! 赤鎖あかのくさり!」

「仙術! 青流あおのながれ~!」

「仙術、茶湊ちゃのそう

「仙術、灰頭はいのこうぶりだわね!」

「仙術! 橙袋だいだいのふくろ!」

 あたしが燃え上がる炎の鎖で縛り、ソウカが激流で動きを止めて、チャダノが音楽をかなでてあたしらの力を底上げし、カイラがキキの頭を灰の塊で殴って気絶させ、マリハの仙力で作り出した袋でさらに縛り上げる

 これなら怪我無く捕縛できるはずっす

 でもキキはあたしらの攻撃をものともせずにそれらすべてを打ち砕いてあたしらに雷を打ってきたっす

 それで舞い上がった土煙で一瞬視界が遮られ、晴れたときにはそこにキキの姿はなかったんす・・・

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