竜人族の国9

 第二階層と第三階層は第一階層とほとんど同じ感じで、二階層の番人は一階層とは武器が違うだけだったんだけど、魔法が有効だった

 中級魔法のブルーファイアという炎魔法一撃で倒せてしまった

 倒すと第一階層と同じように湯が沸きだして、魔導人形が溶けだした

 今度の効果はスピードアップ

 そしてその通り第三階層はスピードで翻弄して、弱点と思われる首後ろの関節部を破壊したら倒せた

 どう見ても攻撃してくださいって感じでそこだけ赤かったからね

 湧き出た温泉に浸かって、今度は魔力と体力がアップした。ってことは、倒すのに時間がかかる体力や防御力に優れた相手なのかも

「それにしてもなんと気持ちのいい温泉なのでしょうか。大した力を使ってはいませんが、能力が大幅に向上されるのが分かります」

 確かに僕の目から見てもテュネたちがつやつやとうっすら輝いているのが見える

 それにラキアさんは、ラキアさんは、うん、なんか目が怖い

 バッキバキに目を見開いてこちらを凝視してくる姿は、言い方は悪いけど変態さんにしか見えない

「ハァハァ、精霊様、リディエラ様の! ハァハァ、うう、尊い」

 なんだか息遣いも荒くて、本当にちょっとやめてください


 ゆっくり浸かったから次の階層へ

 第四階層へと降りると今度は第三階層までの魔導人形とは形が異なっている

 頑強そうな鎧を着た魔導人形で、その手には大斧が握られていた

「今までのはお遊びと言ったところでしょうね。リディエラ様、私の後ろへ。どんなことがあってもお守りいたします」

 ラキアさんは剣を構えて高く飛び上がる

「先制攻撃!」

 切っ先を突き刺すようにラキアさんの剣が魔導人形の肩を貫いた

 でも魔導人形はそんなことを意に介さないように斧を振るってラキアさんを吹っ飛ばした

 かなり飛ばされたけど、彼女はくるりと空中で回転して着地する

 風魔法で自分の体を包んで威力を殺したみたい

「ふ、やるではないか。今のは必殺の一撃だったんだがな」

 ラキアさんの本気があまり効いていないところを見るに相手はAランクかそれ以上になるのかも

「相手にとって不足なし、我が美剣技、お見せいたしましょう!」

 そう言うとラキアさんは剣の構えを変え、フェンシングのような構えになった

「美剣技奥義、狂い裂き!」

 ラキアさんは一歩前に踏み出して魔導人形の懐に潜り込むと手が残像を残すくらいのスピードで斬りつけ始めた

 その切っ先も残像となってまるで花が狂い咲いているみたいだ

「美剣技奥義、乱裂羅みだれざくら!」

 今度は回転を加えて威力をあげた斬りつけで、同じ個所を続けざまに斬り続け、ついにその腕を切り落とした

「やった! ご覧いただけましたかリディエラさ」

「危ないラキアさん!」

 片腕になっても魔導人形は斧を振り上げてラキアさんに振り下ろした

「うわっと!」

 間一髪それを避けて斧を持つ手を蹴り上げて、その斧を落とさせることに成功

「とどめ! 美剣技秘技、火廻ひまわり!」

 今度は体制を低くし、右足を軸に大きく回転

 そこから地面に剣を擦り付けて炎を弾けさせてそのまま切り抜いた

 烈火の如く燃え上がった剣に胴体を斬られ、魔導人形は真っ二つになって動作を停止させた

「ふっふっふ、危ないところでしたが、リディエラ様のおかげで助かりましたよ。お礼のキスを」

 抱き着いて来ようとしたのでうまく回避

 ラキアさんは残念そうな顔でこっちを見ている

「ほら、温泉が湧いたから入ろうよラキアさん」

「そうですね、入りましょうか、フヒヒ」

 まずその目はやめて欲しいかな

 まぁ害されたことはないから何とも言えないけど、いずれセクハラで変態なこと、いや、大変なことになりそう

「今度は筋力が向上されたようですね」

「げっ!」

 思わず声が出るほどの変化が起きた

 ラキアさんがボディビルダーのような筋骨隆々な姿に!

 イケメンの顔も相まってもう男の人にしか見え、あ、胸は大きいんでしたね。申し訳ないです

 それはともかくとして、なんで僕達精霊までビルドアップされてるんだろうか?

 テュネのムキムキ姿なんて見たくなかったよ

 一番怖いのはフーレンで、ムッキムキの体におっとりとした可愛らしい顔が乗ってるから違和感がすごい。ってそれは僕も同じか

 少女の顔にこの筋力はいらないです


 全員無事? ビルドアップが完了して次の第五階層へと降りていく

 今度は俗に言うタワーシールドを持った魔導人形だ

 大きさもさることながら、その厚さも結構なもので、かなり堅そう

 さらにこの魔導人形、三メートルはありそうなほど大きい

「これはまた厄介そうです。私の美剣技は速さに特化した剣技ですので、相手の鎧を砕いたり盾を破壊するのには適しません」

 確かに相手を見ると強固な鎧が関節部分までを覆っている

 タワーシールドには魔法体制もついているみたいで、魔法も効果が薄そうだ

「それなら私にお任せください」

 アスラム!?

 なんだか自信たっぷりだけど、もともと細くてパワー系のイメージが全くないアスラムが魔導人形の前に立った

「この程度なら。精霊武器、アースサクレフィラ」

 精霊武器? なんだろう、今まで見たことないや

「リディエラ様にお見せするのは初めてでしたね。これは私達精霊が作り出す生体武器でして、その属性を反映させたものです。私の場合はこのように土の属性ですね。そして形は大斧槍だいせんそうです」

 長い槍に斧の刃がついた武器。それがアスラムの精霊武器だ

 かなり重たそうなのにそれを軽々振り回している

「斧槍術、大牙壊だいがかい!」

 タワーシールドでガードしている魔導人形に斧の刃が当たり、ガキィンと金属音が響いた

 衝撃波がすごくて地面が揺れたけど、魔導人形はこれを耐えたみたい

「ふぅ、久しぶりでしたので加減ができませんでした」

 あれ? 精霊武器をしまってる

「え? 倒してないよ?」

「リディエラ様、よくみて下さい」

 テュネに言われて魔導人形を見ると、タワーシールドに切れ目が入って魔導人形ごと縦にぱっかりと切り裂かれた

「す、すごい」

「リディエラ様にもいずれ覚えてもらいますからね」

 テュネがにっこりと笑ってそう言った

 あ、これ結構厳しいやつだ。ものすごく練習しないといけないやつだこれ

 魔導人形を倒してしばらくすると、僕らの筋肉はしぼんでいった

 フーレンが元の可愛らしいお姉さんに戻って本当によかったよ

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