妖怪族の国74

 アオイちゃんは僕に懐いてくれたのか、とびっきりの笑顔で僕の後をとことことついて来る

 妹にしたい

「さて、そろそろ行くよ。引き続き警戒お願いね。それとアオイちゃんのこともね」

「はい、お任せください」

 僕は必死について来るアオイちゃんにも別れを告げて、アスラムと一緒に妖狐族の里へ戻った

「ただいまクノエちゃん。いやぁ可愛い子だったよ。とっても純粋で人懐っこくてね」

「それは分かったけど、リディエラちゃん、後ろの子は誰?」

「へ?」

 僕の後ろには、なんとアオイちゃんがちょこんと立っていた

 え? なんで?

「お姉ちゃん! ついてきちゃったよ!」

 アオイちゃんは僕に抱き着いてきてすっごく可愛いんだけど、まずどうやって来たの?

 僕空飛んでたし、アオイちゃんが引っ付いてた感触もなかった

「どうやって来たの!?」

「えっとねー、お姉ちゃんの影に入ったのー。なんかねー、ぶわってなって、ぴゅんって」

 もしかして、妖術をつかったのかな?

「うそ、私でも妖術が使えるようになったの十二歳のころなのに。それでも最年少って言われてたのに」

 クノエちゃんが言うには妖怪族で五歳にして妖術を使えるようになった子はいない

 つまりアオイちゃんは史上最年少ってことだ

 クノエちゃんの記録を大幅に塗り替えてね

「で、この子がその新種の妖怪族の子なの?」

「うん、どう? 種族分からないかな?」

 クノエちゃんはキラキラした目で見つめて来るアオイちゃんをじっくりと観察する

 その間アオイちゃんはずっと尻尾を振って嬉しそうな顔をしている。可愛い

「やっぱりわかんない。お母様なら何かわかるかも」

 ということでタマモさんにアオイちゃんを会わせてみることにした

 タマモさんは現在私室に籠って昔の資料をあさり、海狼のことを詳しく調べているらしい

 とりあえずティアンヌにアオイちゃんが来てることを連絡しておいた

 案の定心配でそこかしこを泣きながら探し回っていたらしい

 タマモさんの部屋に来るとタマモさんは本を睨んで難しい顔をしていた

「タマモさん、ちょっといいですか?」

 僕が声をかけると本からこちらに目を移して顔をほころばせた

「王女様、実は今海狼について色々調べていたのですが、あの時の様子が鮮明に書かれた古文書が見つかったのです」

 タマモさんは机いっぱいに古文書を広げる

 古びててところどころが破けてるけど、なんとか読める

 目を通してみると・・・。前言撤回、達筆すぎて読めなかった

「始めの方は海狼との戦いについて書かれているのですが、中ごろから後編にかけておかしなことが書かれているのです」

 タマモさんが要約して説明してくれた

 海狼との激しい戦いの末に多数の犠牲者を出しながらも討伐に成功、無事脅威は去ったと書いてある

 あれ? でも伝わってる話は封印だったはず

「ここからなのです、問題は。海狼は子供を身ごもっていたのです」

 その子供は海狼の死の間際に生まれ、人型をしていた

 青銀の毛色のその子供は、赤ん坊のうちに社に厳重に封印された

 まだ何も知らない赤ん坊で、殺すのをためらったんだと思う

 そしてその子は以来何千年も、社に封じられていた

 その社の場所は、ティアンヌのいた場所にほど近い

「どうかなさいましたか?」

「いや、うん、大丈夫、何でもないよ」

 そうだ、アオイちゃんは突如現れた新種の妖怪族

 そして、記述にあった青銀の毛、青銀の毛を持つ妖犬族はいない

 これが指し示す答えはつまり、アオイちゃんは、海狼の娘ってことだ

 アオイちゃんは相変わらず僕の足にひしと抱き着いて離れない

 すごくいい子で人懐っこくて、でももし、アオイちゃんが海狼だってばれたら

「あら、その子はもしかして噂の」

「アオイだよ! お姉ちゃんもすっごくきれいだね!」

 タマモさんに向かってすごいなこの子

「まあまぁ、なんてかわいい子でしょう」

 タマモさんはアオイちゃんを抱き上げて膝の上にのっけた

「よしよし、アオイちゃんって言うのね。アオイちゃんはどこから来たのかな?」

 さすがタマモさん、子供の扱いに慣れてるみたいだ

「えっとねー、ティアお姉ちゃんのとこー。果物がねー、すっごくおいしいんだ!」

 タマモさんはニコニコしながらアオイちゃんの話を聞いている

「それでリディエラ様、この子のことですが」

 ああ、やっぱりわかっちゃうよね

「うん、そうだと思う」

「え、なに? どういうこと?」

 この場で若干一名わかってない狐娘がいるけど気にせず話を進める

「海狼の子供で間違いないよ」

「え!? そうなの!?」

 クノエちゃん、ちょっとおとなしくしててね

 それでとりあえず話し合いになった

 アオイちゃんはタマモさんの溢れるママ感に安心して、足の上で丸まって寝始めている

「では、この子のことは精霊様にお任せしてもよろしいのでしょうか?」

「うん、ティアンヌも本当の娘みたいに可愛がってるから、きっと優しくいい子に育つと思うよ」

 結果アオイちゃんはそのままティアンヌが親代わり、もといお姉さん代わりに育てることになった

 妖術の扱い方については、六歳になったころにこの里の学校に通わせると言うことで落ち着いたよ

 タマモさんもアオイちゃんを見て安心したみたい

 まぁ見るからにいい子だし、子供に罪はない

 でも一応定期的にタマモさんとティアンヌは連絡を取るって

 まぁ落ち着くところに落ち着いてくれてよかったよ

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