妖怪族の国64
次なる目的地、妖蜘蛛族の里
ここは本来観光地じゃないんだけど、精霊族の視察ということで特別に案内してもらえるらしい。というか族長のシオリさんが是非是非来てくださいとのこと
どうやらシオリさんはこの閉鎖的な里を解放して新しい風を吹かせようとしているみたい
それを嫌がる老人たちは多いけど、若者たちはその考えに賛同している
難しい問題だけど、いいようになってくれれば僕も嬉しい
さて、妖蜘蛛族は妖怪族の中でも戦闘に長け、隠密もでき、妖術にも優れた種族だ
シオリさんと同じ女郎蜘蛛族、土蜘蛛族、鬼蜘蛛族、大蜘蛛族、水蜘蛛族など自然に根付いた妖怪族だ
また執念深い種族としても知られ、もし浮気でもしようものなら恐ろしいことに・・・。なんてこともあるらしい
でも浮気する人は極々わずからしい。それは妖蜘蛛族の男性が一途に生涯一人の女性だけを愛するからだって
「ようこそようこそおいでくださいました! 妖蜘蛛族が長のシオリにございます! 精霊様に置かれましたてはわたくしども一同心よりお待ち申し上げていたと共に歓迎の意をここに表明させていただき、敷いてはこの地に精霊様の銅像を建立して生涯称えさせていただきます! わたくし精霊様を一目見たときからその可憐さに目を奪われてしまいまして、もしよろしければわたくしのような若輩にございますがこれより里の案内をさせていただきます! わたくしの里には見るところが少ないと思いますが景色とわたくしたち妖蜘蛛の紡いだ糸が有名でして。今までは観光などは行っていませんでしたがこれを機に世界に発信していきたいと思う次第でして、あ、申し訳ありません。一方的に話してしまいました。わたくしの悪い癖ですね。反省しなければ。反省と言えばこのあいだのことなのですが・・・」
す、すごい勢いで話してくる。止まらない
「えっと、シオリさん?」
「・・・でありましてですね。はいなんでしょう!」
かれこれ十分ほど聞いていたけど一向に止まる気配がなかったから話しかけてみた
「そろそろ案内してくれると嬉しいかなって」
「はっ! そうでしたねそうですね! 申し訳ありません! 反省しなければならないと思っていたばかりですのにわたくしはまたやってしまいました。部下にもよく言われるんですよね。シオリさんは話が長いって。いっつも注意されるんです。でもわたくしだってやる時はやるんですよ? 少し前も里に侵入した魔物を拳で一撃! こう見えてわたくし腕力には自信があるんです! あ、腕力と言えば一昨日わたくしの弟たちが話してくれたんですけど、一週間前にがけ崩れがあり道を塞いでしまったのですが、なんと弟たちがその岩をすべて取り除いたそうなんです。我が弟達ながらその成長に思わず涙がこみ上げてきましたよ!」
「あ、はい」
「あああ! 申し訳ありません! またしても自分事を話してしまいました! 本当に申し訳ありません! 今より口を閉じさせていただき必要時以外開かないよう配慮いたします!」
シオリさんは口をへの字にギュッとつむり、黙り込んだけど口がむずむずしている
「で、では早速参りましょうか」
シオリさんに出会って約三十分ほどこの場にいた気がする
「まずはこちらの製糸工場です。こちらでは女性妖蜘蛛族が自ら作り出した糸をつむぐ工場でして、ここで作られる糸は世界中で服や装備の原料になっているのです」
中に入るとたくさんの女性が指先から出る糸を紡いで棒に巻き取り、それを綺麗に整えて重ねていく光景が広がっていた
糸は銀色に輝いてて綺麗で、なんでも妖力のある糸で、軽くて丈夫
剣や刀でもキレることはない上に、直径一センチほどに結うと、軽く1トンもの重さを吊り上げることが可能らしい
「どうですか精霊様。体験してみます?」
「体験できるの? でも僕達糸出ないよ?」
「そこはご心配なく。精霊様たちに体験していただくのはこちらです」
人数分の棒を渡される。どうやらこれに糸を巻き取ればいいみたい
「それではみなさん。精霊様に向かって糸をお願いしますね」
女性たちが一斉に糸を出すと棒に引っ付いた
それをくるくるとまくっていくとあっという間に毛糸玉のような丸いボールのようになった
「うまいですねぇ精霊様。初めての人は結構失敗するんですけど、すっごくきれいにできてますよ」
これがビギナーズラックというものかな?
体験のお土産としてその糸をもらうことができた
買うところで買えばそれなりの値段がする。どこかで防具に加工してもらうのもありだね
「それとこちらをお持ちください」
渡されたのは金色に輝く糸玉。すごくきれいで神聖な力を感じる
「こちらは神獣
今年はまだ早いみたいだけど、納めれる分量が十分に取れたかららしい
良いのかな? もらっちゃって
「はい! 精霊様のおかげでこの土地は豊かになっているんです。感謝してもしきれないくらいですよ」
土地に加護を与えて肥沃な土地にする。それが僕たちの役目
要するに世界の安定役だ
僕もその役に立てているなら嬉しいね
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます