イレギュラーメルカ3

 ここはなんてきれいな世界なんでしょう

 宝石の体を持った人々が行き交い、宝石で出来た生物が地上を駆け回り、空を飛び回っている

 建物も宝石。そしてどうやらこの世界には女性しかいないみたい

 街には行ってみたけど、私を奇異の目で見る人ばかり

 それはそうだよね。だって私の体は宝石じゃないから

 しばらく街を見て歩いていると兵士らしき女性が私を取り囲んだ

「お前は何なんだ! なぜここに入れた!」

 何を言ってるのかな? なぜって聞かれても普通に入れたよ?

「ここにはある方が貼ってくれた結界がある! 外部からの許可なき侵入は不可能なはずだ!」

 そんなに声を荒げなくても・・・。でも結界? そんなものなかったんだけどな

「もしや人型の魔物、なのか?」

「ちょっと、さっきから失礼じゃない? 私はこれでも人間! あ、でも半分は違うか」

「人間・・・。確かあの方たちの中にもいたな」

「うむ、ならば敵ではないのか?」

「全く敵意がない。恐らくあの方たちと同じように異世界から来られたのだろう」

「失礼した。あなたは異世界の方なのでしょうか?」

「うん、そうなるわね。私はマルカ、ただのマルカよ」

 どうやらこの人たちは警戒を解いてくれたみたい

 前にも別世界から人が来てたのが幸いしたのね

「しかし、どうやって結界を? ここの結界は異世界の技術でかなり強固なものなのだが」

 そう言われても私は感じなかったからなぁ

「まぁいい、結界は壊れていないようだし、どうだろう? 観光でもするかね?」

 隊長らしいかっこいい女性がそう言ってくれた

「いいんですか?」

「ああ、君は悪いモノではないようだしな。もし悪しき心を持った者がこの世界に来れば警戒音がなるはずなのだ。それが鳴らない。すなわち君は良き人間だと言うことになる」

 よく分からないけど私を歓迎してくれるみたいだからいっか

 こんなにきれいな国の観光ができるなんて、封印されているときはそんなこと、考えることすらしなかったからすっごく楽しみ


 この世界には国が二つあるだけで、表と裏って単純に呼ばれている

 表の国には女王と王女、裏の国には王と王子がいて、それぞれの国を治めている

 王と王子と言ってもどちらも女性。だってこの世界には女性しかいないから

 王の役目を持った女性と王子の役目を持った女性と言うことになる

 その王子と王女が結婚するとこの世界の繁殖期になるそうで、表と裏の宝石人が表の国に集まって子供を作るみたいね

 その方法は手と手を触れ合うこと。それで二人の間に宝石人の子供がコロリと転がり出てくる

 初めは小さいけど、十年ほどで大人になるみたい

「数年前に繁殖期があってな。この裏の国の王子であらせられるメルレスト王子と、表の国のマテラトラ王女様がご結婚なされた。その時この国の人々は全員表の国へと赴いて意中の相手と子を作ったのだ。私にも子がいてね。マートという子で、表の国にいるんだよ」

 その兵隊長の女性、名前はトーレスさんと言って、嬉しそうにお子さんを話しをしてくれた

 かわいい盛りだそうで、しょっちゅう表に会いに行ってるみたい。ちなみになぜ分かれて暮らしているのかと言うと、この世界の女性たちは男役と女役に分かれているから

 その違いは特にないから自由に選べるんだけど、王族だけは色でわかれるらしい

 金色なら女性、銀色なら男性で、王族は必ず金と銀の双子で生まれるんだって。不思議ね

「そうだ、王に会う気はないかな? 王は異世界の話が大好きでね」

「いいですけど、私の話、そんなに面白くないと思いますよ?」

「日常でいいんだ。王も喜ぶよ」

「分かりました。ではお言葉に甘えさせていただきますね」

 王様は銀色の美しい人で、男装の麗人と言った感じ

 名前はメルレストさんで、前王のアルメストさんが隠居したので王様になった

 で、王子がカルナストさん。すごくしっかりした女性で、キリッとした表情が素敵

 表にいるもう一人のお子さんの王女がアテラトラさん。こっちはまだまだ甘えたがりで、カルナストさんが会いに行くとべったりみたい

 いずれその王女と王子が結婚してまた子供が生まれて・・・

 この世界の二つの国はそうやって続いて行ってる。とても素敵な世界

 王様に私の、楽しかったあの頃の日常を話して聞かせるとすごく喜んでくれて、宝石をくれた

 キラキラと綺麗で、目を奪われてしまったわ

 クラレストと言うこの世界にしかない宝石だって

「ありがとう異世界の友人よ。また私の異世界録に新しい一ページが加わったよ」

 王は本当にうれしそう。私も話したかいがあるわね

 それから表の方も観光して、私は宝石の世界を旅立った。私のお友達なってくれそうなあの子、早く会えるといいなぁ

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