妖怪族の国8

 全員で小舟に乗り込む

 この小舟は特殊な魔法素材で出来ていて、モンスターに攻撃されると少しずつ削れていく

 削れれば当然船は小さくなっていくんだけど、もしそこから落ちれば川にかかった妖術によって入り口に戻される

 足場がなくなっていくわけだから、ゴールする前に仲間が落ちてゲームオーバーになる可能性もあるってことだ

「まぁBランクの魔物なら楽勝よ。なんてったって精霊様がいるんだもの」

 余裕とばかりに小舟の中央に立ったそのとたん、クノエちゃんはカプセルに包まれた

「リーダーを設定しました。リーダーが川に落ちればその時点で終了となりますのでお気を付けください」

「え? ちょ、私が!? ままま待って!」

 あ、だめだ。全員乗っちゃってるからスタートしちゃった

「うそぉおおおおおお」

 そのままものすごい勢いで小舟が打ち出された

 そう、出発したんじゃなくて、あまりの川の流れの速さで弾丸のように発射したんだ

「は、速っ!」

 水しぶきと風で前が見にくい

「ウォーターシールド!」

 テュネが水のシールドを全体に張ってくれたおかげで水しぶきと風は遮られた

 ようやく前が見えると、巨岩が迫っていた

「あわわわわ前前!!」

「フレアシュート!」

 クノエちゃんの魔法が岩にあたったけど、一部が崩れただけだった

「あらら、失敗しちゃった」

「クノエちゃん、フレアシュートはこう撃つのです。見ていなさい」

 エンシュのフレアシュート。クノエちゃんと威力が段違いで、岩を砕いて周囲の水も蒸発した

「エンシュ様、凄い・・・」

 憧れのヒーローを見るかのような目で見るクノエちゃん

 そうだ、この旅行が終わったらクノエちゃんの魔法の修行、エンシュに見てもらえるよう頼んでみよう

 クノエちゃんは炎魔法を使うみたいだから適材適所だと思うんだ

 少しすると川がくねり始めた

 それぞれの立ち位置で魔力を込めるとそっちに向かうようになっているので、それを利用して操作してるんだけど、これがなかなか難しい

 普段から息の合ってる僕達精霊は何とかなるんだけど、いつも一緒にいるわけじゃないクノエちゃんと、会って間もないナゴミちゃんとのタイミングがなかなか合わなくて、時折岩にぶつかりそうになるのを魔法で攻撃してカバーした

「申し訳ありません。私が未熟なばかりに」

 泣きそうな顔でナゴミちゃんが謝ってるけど、気にしてないから謝らないで欲しいと告げる

 それでやる気になったのか、魔力操作が精密になったみたい

 どうやらナゴミちゃんは天才肌のようで、攻撃魔法に至ってはクノエちゃんよりもうまいかも

「なかなかいいですよ。あなたは氷結魔法が得意なようですので、雪の精霊セツに魔法を習うといいかもしれません」

 テュネがナゴミちゃんを気に入ったみたいで、師匠となる精霊を紹介していた

 セツなら多分大丈夫だろう。教えるのがうまいかどうかは分からないけど・・・。  

 あの子口下手だから

 くねる道を抜けると川幅が少し広くなった

 それに伴い魚系の魔物が飛び出してくる

 船への攻撃を魔法で伏せいでカウンターで攻撃。どうやらこの攻撃方法が有効みたいで、次から次へと魔物を倒していった

「船への損害は最小限に抑えれましたね」

 アスラムの土魔法、アースニードルは飛んで来る魔物にとって脅威だったろうね。なにせ近づかせてくれないんだから

 苦し紛れに水鉄砲を吐き出していたけど、テュネとフーレンによる防御用魔法によってこちらに全く届いていなかった

 ただ、タマタマ不意を突かれた最初の一撃だけ船をほんの少しだけ削った

 まぁ問題ない程度だね

「あ~、あれ見てください~」

 遠目の効くフーレンが何かを見つけた

 近くまで来るとそれが門だとわかった

 あれだけ速かった船の動きがゆっくりとなり、やがて門の前で止まる

 するとどこからともなくアナウンスが聞こえてきた

「第一関門へようこそ! こちらでは問題に答えていただきます。全二十問中十問正解すれば門が開きます。正解数が十問以下の場合終了となりますのでご注意ください」

 なるほど、ゲーム性を増すためにクイズがあるのか。これは楽しそう

 こっちにはテュネやアスラムがいるから大丈夫、なはず

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