妖怪族の国4

 マジックショーかぁ、異世界人にでも習ったのかな?

 前世ではそういったものを見たことがない。結構楽しみだったりしてる

「ここここ、すごいでしょ? この建物のデザインはおじい様によるものなの」

 クノエちゃんのおじいちゃんはもう亡くなってるらしいけど、建物の装飾から豪快そうな人柄がうかがえる

 十二種族の像が表面に彫られてて躍動感がすごい

 中に入るとキラキラとした装飾と怪しげな雰囲気でいかにも不思議なことが起こることを予感させてくれる

「チケットは取ってあるからすぐに座れるわよ。しかもなんと特等席!」

 最前列で見れるらしい。もしかしたら参加できるかもとのこと

 席に着いてからしばらくすると、辺りが暗闇に包まれた

 ステージに一つだけぽつんと灯るスポットライト

「ようこそ! 妖狐だけにドヤァ!」

 変なダジャレと共に白狐族らしきお姉さんと化け狐らしきお兄さんが煙と共に現れた

 お姉さんは狐耳の上からウサギ耳のカチューシャをつけ、バニーガールの衣装を着ている

 お兄さんは燕尾服に蝶ネクタイ。誰? この二人にあんな衣装教えたの・・・

 十中八九異世界人と思われる。ま、まぁ似合ってるんだけどね

「イズミアンドキイチのマジックショーへようこそ! 今宵お届けするのは摩訶不思議な手品の数々! 最後までどうぞごゆるりお楽しみくださいませ!」

 イズミさんという女性マジシャンの挨拶の後、キイチさんもシルクハットを取ってお辞儀した

「ではまず、私の手にご注目!」

 イズミさんの手を見ていると、その手に突如花束が出現した

「ほら、キイチ」

 イズミさんが花束をキイチさんに投げると、キイチさんが受け取ると同時に鳥になった

 その鳥はキイチさんの指を足でつかむと羽ばたいて空を飛ぶ

 明らかにキイチさんの体重を支えられるような大きさじゃないのに、簡単に持ち上げているのだ

「イズミ!」

 キイチさんが鳥の脚から指を放してもらってイズミさんの丁度上あたりで落ちる

 それをイズミさんがステッキ一本で受け止めた

 キイチさんはステッキの上に片足で立っている

「それっと」

 イズミさんがステッキごとキイチさんを放ると、キイチさんがくるりと回ってステッキと共に消えた

 そしてドラムロールがなり、シンバルがなった

 なんとキイチさんがいつの間にか僕の隣に座っているじゃないか!

 あれ? 横に座ってたクノエちゃんがいない

「え? あれ? どういうこと?」

 クノエちゃんはどうなったのか、舞台の上に立っていた

 皆キイチさんを見てたからクノエちゃんが現れる時を見ていない

 というか肝心のクノエちゃんも何が起こったのか理解できてないみたいだ

「わっち、なんで舞台上にいるのかな?」

 みんなに注目されて恥ずかしかったのか、クノエちゃんは顔を真っ赤にして戻って来た

 ちなみにクノエちゃんがいることに驚いた観客は大盛り上がり

 やっぱりクノエちゃんはこの国でアイドルみたいな存在なんだなぁ

「それそれそれそれ」

 今度はナイフ投げだ

 と言うかやり方間違ってない? あんなのだっけ?

 二人の間でナイフを投げ合い、それを互いに受け取っては投げ合っている

 ちょっとでも手元が狂えばブスリだろうね。はらはらしながら見ているとナイフが消えた

 そして消えたナイフはイズミさんの後ろにある的に全て突き刺さり、可愛い子狐の絵を作り出した

 どうなってるんだろう?

「そこのあなた! 舞台に上がってくれない?」

 イズミさんが僕に向かってそう言った。ちょっと恥ずかしいけど舞台に上がってみる

「これからこの子を兎に変えて見せましょう!」

「あ、ちょ、どうやれば・・・」

「大丈夫、心配しないで、お嬢ちゃんは立ってればいいだけだから」

「まずはこの布をこの子にかぶせます。そして、三つ数えます。一、二、三!」

 僕にかけられてた布がはがされ、観客席が見えた

 あれ? ちょっとまって・・・。視界がなんかおかしい

 背が縮んだ? いや違う・・・。これ僕が本当に兎になってるんだ

「はい、見事に可愛い白兎ちゃんになりました!」

 これ手品じゃないぃいいいいいいいい!!

 心の叫びの後、また布をかぶせられて三つ数えられると、視界が元に戻った

「あの、これ・・・」

「どう? すごいでしょ、私たちのマジックショー!」

「あ、はい、すごいです」

 そういうしかないじゃないか

 これ、妖術だと思うんだけどまぁ楽しいからいっか

 それから様々な妖術、じゃなかった、手品を見て楽しんだ

 ステージにあげてもらった僕は最後に記念として花束をもらえた

 良い匂い

「妖狐族の里はこのくらいかな? 細かいところならもっとあるけど、時間が無いから次は天狗族の里に行きましょ」

 次はあのマスオミさんが治める天狗族の里に行くことになった

 どんな食べ物や観光地があるのか楽しみだ

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