黒の国19

 三十一階層

 燃え盛る炎が床を覆い、気温も非常に高いみたい

 クノエちゃんは毛が多いから早々にばてていた

 そこでフーレンが水魔法のカプセルを作り出してクノエちゃんを包んだ

「涼しい」

 冷たい水がクノエちゃんを覆っているから中は冷たく冷やされているらしい

 さて、問題は炎の床の方だね

 そういえば、二十階層でオークたちがくれた大いなる水ってアイテムがあった

 それを使って進めばいけそう

 僕は懐から水が固まったような石を取り出して使ってみた 

 すると石から水の塊が放出され、炎の床に足場を作ってくれた

「すぐにわたるよ! 時間制限があるみたいだから」

 急いで水の足場を渡り、次の足場を作る

 その最中のことだった

 炎の床から複数の燃え盛るムカデが現れた

 噛みつかれると毒の状態異常になるうえ、炎の体に触れると火傷もしてしまう

「ここは~、私が~」

 フーレンが水魔法を駆使して巧みにムカデの炎を消し、それをクノエちゃんとエンシュがそれぞれ撃墜していった

 ちなみにアスラムの食虫植物はこの場に召喚できないみたいで、出した途端に燃え尽きていた

 なるほど、強くてもこういう弱点があるのか

 だからアスラムは今回はあまり戦いに参加せず、飛んで来る炎の弾を土壁で防いでもらうことに専念してもらった

 おかげで何の苦も無く三十一階層をクリア


 三十二階層から三十五階層も同じように炎の床が広がるステージで、燃えるワイバーンなど結構強力な魔物が襲い掛かって来た

 ガード役は僕とアスラムが一手に引き受け、時折防ぎきれなかった攻撃で出来た傷をすぐにテュネが癒す

 僕たちのチームワークは結構なもので、三十五階層までを素早く攻略していった

 

 三十六階層と三十七階層

 この二つのフロアは燃えた木々が作った迷路だった

 この木々、燃えているというか炎で出来てる

 しかも歩いているだけでダメージを受けてしまうみたい

 フーレンが水のカプセルを全員分作ってくれたけど、それでも数分しか持たない

 そのたびに張りなおしていたおかげで何とかダメージは最低限に抑えられている

 でもきついね。油断してたらすぐに体力が赤くなっちゃうし

 魔物ももちろん燃えている

 フーレンが必死で水魔法をぶっかけてたけど、次から次へと押し寄せてくるから仕方なく逃げたりしながら先へ進んでいった

 ボロボロになりながらようやく三十八階層に着いた


 三十八階層

 焼けた鉄板が一面にひいてある

 なんだこれ? ひとまず水の床を作って進んでいった

 もう少しで鉄板のない床までたどり着くというとき、その鉄板が立ちあがった

「え!?」

 巨大な鉄板だと思ってたそれは魔物だったのだ

 それもあっつあつに熱せられてる

 鉄のゴーレム

 何で熱したの? ねぇなんで?

「ウォータースラッシュ!」

 フーレンが水をかけるけど、まさに焼け石に水でゴーレムに効いていない

「く、これでは攻撃できません!」

 エンシュもだんだん近づいてくるゴーレムにたじたじだ

 じりじりと焼けるような熱が迫ってくるのは恐怖でしかない

 あ、まずい、クノエちゃんが赤くなってる

「ホーリーサークル!」

 僕は結界を張った

 その中でフーレンがさらに水のドームを作り出す

「あぁ、涼しい。これなら動けそう」

 よかったクノエちゃんもちょっと元気になったみたいだ

 テュネがクノエちゃんを回復する

「よし! 反撃するわよ!」

 クノエちゃんが刀を構えると

「氷結式! 大氷河!」

 周囲が一気に寒くなる

 どうやら絶対零度を誇る攻撃をゴーレムに繰り出したらしい

 高温に熱せられた鉄が、急激に冷やされる

 その結果、ゴーレムは砕け散った

「考えたねクノエちゃん」

「え? なにが? 熱いから冷ましただけよ?」

 あ、分からずにやってたのね


 四十階層

 ここには鉄板ゴーレムが二体いた

 でもクノエちゃんの氷結が効くとわかったのであっさり突破

 こんなに簡単に突破できていいのかな? いいよね


 そして四十階層のボスフロア

 燃え盛る炎の魔人、イフリートが立っていた

「おお、サラマンダー様がこのようなところに、恐縮であります」

 イフリートは軍服を着たきれいな女性だった

 ビシッと敬礼しててかっこいい

「ここでは精霊としてではなく一般客として訪れています。遠慮なく攻撃してきてください」

「そ、そうでありますか。では、失礼いたしまして」

 どうやらイフリートさんは仕事モードになったらしい

「ここまでよく来たなであります。私を倒せば次に進めるであります。私はイフリートのフレナであります。さぁ、じんじょうに勝負するでありますよ!」

 フレナさんは拳を構えた

 その拳が炎に包まれる

「ここは私が」

 エンシュが名乗りを上げて足で構えをとる

「行くであります!」

 フレナさんの燃え盛る拳がエンシュに迫る

 それをエンシュは蹴りで受け止めた

 そこから燃え上がるエンシュの足

 僕が慌てると、エンシュはそれを蹴りの風圧で消し飛ばした

「す、すごい」

「てりゃぁあ!」

 エンシュの脚撃とフレナさんの拳が目にもとまらぬ速さで撃ちあっている

 若干フレナさんの方が速くて、エンシュはダメージを負っているみたいだ

「回復を!」

 テュネが回復しようとすると

「待ってテュネ。私だけの力でこの人と戦ってみたいの!」

 エンシュがそれを止めた

 攻撃は受けているけど、そこまでのダメージにはなっていないみたいだ

 長い時間二人の打ち合いが続いた

 およそ一時間が経過し、決着がついた

 勝者はエンシュ

 勝敗の差はスタミナだったみたいだ

 フレナさんは後半ばててきて、エンシュの攻撃が入り始めていたのだ

「完敗、であります」

 残念そうだけど、すがすがしい顔をしているフレナさん

「私も、あなたのように強い人と戦えてよかったわ」

 お互いの健闘をたたえて握手する

 おお、素晴らしいスポーツマンシップ

「ではこれをお持ちください」

 フレナさんがくれたのはグローブだ

 これはどこかにある特殊な壁を壊すのに必要らしい

 エンシュはフレナさんとまた会う約束、というか遊ぶ約束をして次の階層へ上った

 フレナさんが非番の日に二人でショッピングでもするのかな?

 新しい友達ができてよかったねエンシュ

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