黒の国17

 十一階層

 そこは外と見まごうばかりの密林地帯だった

 深く生い茂る得体のしれない植物や木々が進行を妨げる

 どこに向かえばいいのかも分からない

 いきなり難易度が跳ね上がってる気がする

「どこに行けばいいのかな?」

「何かヒントがあるはずです。やみくもに歩き回っても迷うだけでしょう。何か手掛かりを探しましょう」

「じゃぁ手分けして探しましょう。わちきとリディはこっち。テュネ様たちはあっちをお願いしますね」

「いえ、ここはみんな一緒に行った方がいいでしょう。集合しようにも同じような場所が多いようですので離れ離れになってしまします」

「う、そうなの・・・。じゃぁ仕方ない、か」

 なんだか残念そうなクノエちゃん

 とにかく、皆固まって注意深く進むことにした

 しばらく進むと

「見てください! 木に矢印が刻まれています!」

 それは一見すると木の模様にしか見えないけど、じっくり観察すると矢印になっているのが分かった

 これ、アスラムだから見えた気がする

 僕たちだと本当にじっくりと注意深く見ないと気づかないよ

「この矢印をたどれば目的地に着きそうですね」

 アスラムの導きでゆっくりと着実に進んでいく

 どうやらここに魔物は出ないらしく、矢印の通り進むと次の階層への階段が見つかった

 その階段の前には宝箱があって、そこには魔力を回復するためのドリンクが入っていた

 

 十二階層

 今度は道のある密林だった

 入り組んでいて、行き止まりが多い

 それに植物系の魔物や、魔甲虫と呼ばれる特殊な甲虫がしょっちゅう襲い掛かって来た

 魔甲虫はその名の通り魔力を帯びた甲虫で、その硬さは鉄に匹敵する

 この魔甲虫に対してはフーレンの魔法が役に立った

 炎に弱い魔甲虫は、フーレンの炎魔法によって焼き尽くされていく

 本当なら炎の精霊であるエンシュが焼くんだけど、この塔では本来の力は封じられているので仕方ないね

「焼き尽くすって~、気持ちいいですね~」

 などと危険なことをのたまいながらフーレンは次々と魔甲虫を焼いていた

 でも、ペースは速くていいね

 あっという間に階段まで到着した


 十三階層

 ここはどうやら中ボス?のような魔物の部屋だったみたい

 広い草原に巨大な蜘蛛型の魔物が蠢いていた

 うわ、気持ち悪い

「来ます!」

 蜘蛛はこちらに気づき、糸を照射し始めた

「あ」

 クノエちゃんが糸に絡め捕られて上からつるされてしまった

「キャァアア! たーすーけーてー!!」

 芋虫のようにくねくねと助けを求めるクノエちゃん

「任せてください~」

 フーレンが魔法を放った

 ウォーターカッターと言って、水の刃を放つ魔法

 水の刃はクノエちゃんのぶら下がっている糸に向かっていく

 しかし蜘蛛がそれをはじいて阻止してしまった

「やりますね~。ではでは」

 フーレンは炎の魔法を準備する

 その間僕たちでフーレンを守らないと

「エンシュ、攻撃をお願い、僕は後ろから光魔法で援護射撃するよ。テュネはみんなに強化を、アスラムは何体か食虫植物を召喚して!」

 僕の指示通りにみんなが動き始めた

 エンシュの脚撃が蜘蛛の胴にクリーンヒットする

 カキンと金属音がして蜘蛛が少しだけのけ反った

 蜘蛛はすぐに体勢を立て直してエンシュを襲おうとする

 そこに僕の光魔法、ライトスピアが飛ぶ

 威力はさほどないけど、当たった時に出る激しい光で蜘蛛の目をくらませた

 テュネはエンシュに強化の歌を歌う

 綺麗な歌声で、思わず聞き入ってしまいそうだ

 エンシュは再び蜘蛛の腹下に潜り込むと、今度は連脚をお見舞いした

 一足蹴るごとに蜘蛛は浮かび上がり、上へ上へと蹴り上げられていく

「よ~し、いきますよ~!」

 どうやらフーレンの準備ができたみたいだ

「これが今の全力です~! フレアインパクト!」

 蹴られたことで宙に浮かんでいた蜘蛛めがけて大きな炎の塊がぶつかって弾けた

 蜘蛛は黒焦げになって地面に転がる

「倒せたみたいだね」

 蜘蛛を倒したことにより、部屋の中央に宝箱が現れた

 中からは蜘蛛の絵が描かれたメダルが出てくる

「何だろうこれ」

 説明書きもなかったからどういうアイテムなのか分からないけど、持っていて損はないと思う

 そのまま階段を上って次の階層へ


 十四階層から十八階層は十二階層までと同じようで、密林型の迷路を魔物を倒しながら進んだ

 魔物も少し強くなっているみたいだね。でも、連携や弱点を突いてうまく対処できた


 十九階層

 ここは少し休憩できるフロアみたい

 迷宮に似つかわしくないおしゃれなテーブルに椅子、紅茶セットにクッキー

 ここで少しリラックス

 それにしても、ここに入ってから半日くらいたつけどいまだに前の人も後から入った人にも会わないな

 前の人はどこかでゲームオーバーになったのかも

 紅茶セットでリフレッシュして、次の階層へ

 

 二十階層

 ボスフロアだ

 中央にいるのは三人のオークらしき人達。このオークたちも褐色だ

「むむむ、来たのですね。次は僕たちが相手です」

 そう言ったのは真ん中の背の高いオーク

 凄く丁寧な口調で、優しそうな印象だ

 手には小型のナイフ、背中には弓を背負っている

 オークレンジャーだね

「さぁ、俺たちに力を見せてくれ」

 右にいた筋肉隆々の大柄なオークがそう言った

 斧をもっている。さしずめオーク戦士かな 

「では、行きますわよ」

 グラマラスな美人

 本当にオークなの?ってくらい綺麗

 本来のオークは太っている人が多いらしいんだけど、このオークたちはしっかりと鍛えてるみたい

 まぁこの世界のオークにはまだ会った事ないんだけどね

 ちなみに女性オークさんは魔法使いみたい

 まずオーク魔女が仲間たちを強化していく

 速度強化、攻撃強化、防御強化、魔法防御強化

 それを合図にオーク戦士が走り出す

 斧を一振りして僕に斬りかかって来た

「うわわ」

 危ないところだった

 エンシュが蹴りで斧の軌道を変えてくれてなかったら当たってたかも

「リディエラ様、お下がりください!」

「う、うん」

 みんなの後ろに隠れるようにして下がる

「解除のアリア!」

 テュネが相手にかかっている強化を歌声で解除してくれる

 解除にはしばらく歌い続ける必要があるので僕たちで守らなきゃ

「ホーリーサークル!」

 僕は光魔法で物理攻撃と魔法攻撃を軽減してくれるサークルを出現させた

「でりゃぁああ!!」

 オーク戦士が突進してくるのをエンシュが食い止める

 その後ろからオークレンジャーの矢が飛んできた

 屋はまっすぐにテュネへと向かう

「させないわよ!」

 クノエちゃんが刀で矢を撃ち落とす

 結構早い矢だったのに、クノエちゃんの動体視力ってすごい

「あっちは任せて!」

 クノエちゃんは走ってオークレンジャーと一騎打ちを始めた

 オークレンジャーのナイフ使いは素晴らしく、クノエちゃんの刀を器用にそらしていた

「ダークネスプライム!」

 オーク魔女の魔法攻撃も始まった

 それは僕の光魔法とフーレンの魔法で撃ち落とす

 そうこうしているうちにテュネの歌が終わった

「く、強化が・・・」

「てりゃぁ!」

 エンシュの脚撃がオーク戦士の腹部に突き刺さった

「ごふぅ!」

 オーク戦士は倒れた

 残り二人!

「マンイータープランツナイト!」

 アスラムが食虫植物を数体召喚

 ナイト型で、大きくて硬い巨大な葉っぱの盾を持っている

 プランツナイツたちはオーク魔女の魔法を防ぎつつ彼女の方へずんずんと進んでいった

「ちょ、ちょっと、卑怯じゃないそんなの」

 オーク魔女が魔法を放ちながら叫ぶ

 うん、僕もそう思うよ

 でもね、これ、戦いだから仕方ないんだよ

「あふん」

 彼女はプランツナイトに掴まってツルでぐるぐる巻きにされてしまった

 残るはオークレンジャーただ一人、なんだけど、そっちももうすぐ決着がつきそう

 クノエちゃんが刀で彼のナイフを弾き飛ばした

「う、ぐ、僕の、負けですね」

 潔いね

 三人に見事勝利!

「僕たちの負けですね。こちらを持って行ってください」

 オークが渡してくれたのは大いなる水というアイテム

 これは、床が炎に覆われていた場合に水の足場を作ってくれるものだ

 ただし制限時間があるから一度出したら早めに渡り切らないと、途中で落ちちゃうから気を付けないとね

「この先、もっと厳しくなると思うけど頑張ってね」

 オークたちに見送られ、次の階層への階段を上った

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