精霊転生 精霊たちと過ごす異世界旅行記

黒の国16

　次の日、僕たちは大きな塔に来ていた

　見た感じピサの斜塔のような塔だ。まぁ傾いてないけどね

　ここでは体感ゲームのようなことができるみたいで、黒族の若者が修行のために使ってたらしいんだけど、レベルを下げて一般の人でも攻略できるようになっているらしい

　どういうゲームかと言うと、まず塔に入る前に職を選ぶ

　職は全部で十職あって、バランスの良い職を組み合わせるのが攻略の要だそうだ

　その職とは、戦士、魔法使い、聖職者、盗賊、格闘家、ガンマン、脚撃士（足技を使う格闘家）、ディーヴァとディーヴォ（男女の違い）、ファーマー、剣術士だ

　階は百階までで、十階層ごとにボスとなる強力な魔物が配置されてて、体力がなくなればゲームオーバー

　ちなみにゲームオーバーになっても死ぬわけじゃなくて、外に排出されるだけだから安全だね

　一回に入れる人数は十人まで、内部は魔法によって広大な迷路になっているらしい

　前のパーティが10階層に到達、または負ければ次のパーティが入れるようになる

　ちなみに追いつけば共闘もできるとのこと

　なんだか入る前からワクワクしてきたよ

「僕はそうだな、聖職者にしようかな。アンデッドに効果のある呪文、回復呪文を使えるみたいだね」

「では私はディーバを、歌によってさまざまな効果を味方に与えれるようです。回復効果のある歌も歌えるようですね」

　それぞれが職を選んでいく

　テュネはディーバ、エンシュは脚撃士、アスラムはファーマー、フーレンは魔法使い、クノエちゃんは剣術士だ

　脚撃士は蹴り技を主体とした格闘家で、カポエイラのような戦い方をする

　ファーマーは農家、あまり役に立たなそうだけど、土のスペシャリストで、その場で植物を育てて回復用の薬草を作り出したり、解毒効果のある薬草を作り出したり、戦闘では種を植えることで急激に成長させた食虫植物を召喚して戦う。まさにアスラムにうってつけの職だと思う

　魔法使いはその名の通りだね。魔法を使う職

　剣術士は刀、剣など刃物を装備できて、装備した刃物によって使える技が違うみたい

「よし、攻略目指して頑張ろう！」

「「「オオオ――！！」」」

　気合も十分

　あれ？　クノエちゃん戻らなくていいの？　あ、通信切ってるよこの子・・・

　その後待つこと約一時間ほどで僕たちの番が来た

　この塔の運営が始まってからまだ誰もクリアしてないらしい

　よし、僕らが最初の踏破者になってやる

　ちなみに踏破するとメダルがもらえる。このメダルは一年間遊園地遊び放題と、この国の食事が半額になるという特典があるのだ！

　そしていよいよ攻略開始

　第一階層

　ここの敵は相当弱い

　魔法使いや聖職者の杖攻撃で倒せるくらい

　でも油断するとダメージを受けるので慎重にね

　それに、魔力切れもあるみたいだから適度に休憩を挟まないとすぐにばててしまう

　レベルの概念はない。アイテムやそれぞれの職能を生かして攻略するのだ

　あ、でもそれぞれの職に特別な武器が用意されてるみたいで、100階層ボスの前の階層にそれぞれの武器が隠されているから、それを探し出して装備すると、一度だけ特別な力を使える。取っておくといいかも

　そして難なくクリア

　迷うこともなかった。なんせほぼ一本道だったからね

　第二階層も大体同じ、七階層までは敵の強さが少し強くなっていく程度で、僕たちの信頼関係をもってすれば連携も思いのままだからこの辺りなんてちょちょいのちょいですよ

　第八階層

　ここから魔物も連携をとってくる

　寄せ集めの素人だと少し厳しくなるかも

　まぁ僕たちは何の問題もなかったね

　というか、アスラムの召喚する巨大食虫植物が強すぎる

　魔力もあまり消費しないのにこの強さは味方ながらにちょっと卑怯かなとも思う

　でもがんがん進めるからいいね

　九階層も会長に進んでいよいよ第十階層

　ここは前までの迷路じゃなくて、広場になってる

　その中央にボスらしき歴戦の戦士のようなゴブリンが立っていた

　ゴブリンはこちらを睨みつけると背中から剣を抜いた

「来たか、さぁ、正々堂々と私と勝負してもらおう」

　やだ、かっこいい

　何この渋いゴブリン、ほれちゃうじゃない

　あと、普通のゴブリンと違って少し褐色だ

「行くぞ！」

　剣と盾を構えて走ってくるゴブ戦士

　かなり速い

「おっと、危ないわね！」

　クノエちゃんが刀で防いでくれた

　そう、クノエちゃんは刀を使うことにしたみたい

　どうやら習っていたらしい

　クノエちゃんとゴブ戦士が一騎打ちを始めた

　かなりレベルの高い打ち合いで、歯がぶつかり合う度に火花が散る

　剣による斬撃をクノエちゃんが押し返し、そのまま切り返して相手に攻撃をする。それをゴブ戦士は盾で弾いた

　さらに盾でクノエちゃんの胴を殴りつける

「ぐっ」

　クノエちゃんがのけ反った

　そこに剣が撃ち込まれる

　体力が削られたのか、クノエちゃんの体が黄色に染まる

　どうやら体力が減ると体が光りで染まるみたい

　黄色は注意、赤は危険で、それ以上攻撃を喰らうとその人は死亡扱いで戦いに参加できなくなるみたいだ

　でも、聖職者がいれば復活させれるらしい

　ただし復活させれるのは一階層につき一人一回までだ

「よくもやったわね！　刀剣技！九狐牙！」

　おお、すごい

　刀が九本に分裂しているように見える

　それが一斉にゴブ戦士を襲った

「グ、オオオオ！」

　切り裂かれたゴブ戦士は倒れた

　あ、切り裂かれてるように見えるけど、本当の痛みやダメージはないみたい

　「よくぞ私を倒した。次の階層に行くといい。それと、これを持っていきなさい」

　ゴブ戦士はアイテムをくれた

　全体を回復してくれる魔法のオーブで、三回使うと壊れるとゴブ戦士が説明してくれた

　ゴブ戦士に別れを告げて次のステージへと僕たちは進んだ