魔族の国26

 火山温泉から帰り、夕ご飯は純和食のような料理を食べることにした

 和食割烹灯篭と言うお店だ

 昔異世界から来た人に料理を習った女性が切り盛りしているらしい

 中に入ると和食の良い匂いがたまらないねぇ

「いらっしゃいませ~」

 おかみさんらしき鬼人の女性が出迎えてくれる

 目の覚めるような美人

「初めてのお客様ですねぇ。おススメで何かおつくりしましょうか?」

「じゃぁそれでお願いします」

 カウンターのような席につくとすぐほうじ茶が手前に置かれた

 あったかくていい香り

「突き出しです」

 最初に出たのは小鉢に入った切り干し大根だ

 甘く煮られていて、よく味が染みている

 食感もコリッとした感触がのこってて歯ごたえもある

「すごくおいしいです」

「あら、ありがとうございます。次の料理も頑張って作りますね」

 次に出たのは魚の煮つけ

 キンメダイに似てるけど、オーロラメルという魚らしい

 甘辛く煮られてて、風味も豊か

 身はホクホクしてて、味がしっかりとしてる

「この魚は目の周りがおいしいんですよ」

 おかみさんの言う部位を食べてみた

 うまい!

 味が濃厚で、身もしっかりとしてる

 ちなみに骨まで柔らかく煮てあるから全部食べれるのだ!

 次は牛肉のしぐれ煮とご飯を混ぜた混ぜご飯

 ごぼうとしぐれ煮が程よく混ざってて、ご飯に合う

 ショウガが入ってるみたいで、それが味を引き立ててくれている

 お次は筑前煮みたいなもの?だ

 入ってる野菜はこの世界特有のもので、色味も筑前煮と違って鮮やかなんだけど

 味はまさしく筑前煮だ

 タケノコに似たポールパルという野菜はコリコリとした食感がいいね

 レンコンに似たオオムバスの根っこ

 本来毒性があるらしいけど、塩でもみ込むと毒が中和されるらしい

 食感はシャクシャクとしてて、これもレンコンっぽい

 最後は鳥の串焼き。焼き鳥串だ

 タレ、塩、みそがあって、炭火で焼かれている

 あっさりとした塩から入って、タレ、みその順で食べた

 炭火の香ばしい風味が口いっぱいに広がって幸せだなぁ

 ちなみに飲み物は僕以外冷酒や熱燗、ビールを飲んでいた

 僕は甘酒と暖かい緑茶をもらった

 甘酒の優しい甘さが心地いい

「美味しかったです! また来ますね」

「満足してもらえてよかったわぁ。私の弟も鬼ヶ島で店を開いてるから、よかったら行ってやってくださいねぇ。あの子はうどんと言う料理を作ってますからぁ」

 おお、うどん屋さんはまだ行ったことないや

 こんど鬼ヶ島に言ったら是非とも食べてみよう

 お腹もいっぱいになったから、宿に戻って温泉に浸かり、ぽかぽかのまま寝た


 四日目

 今日は天空温泉と言うところに行ってみようと思う

 とてつもなく大きな樹の上に温泉が引かれてて、眺めが最高なんだって

 どうやって引いてるのか聞いてみたけど、企業秘密とかで教えてもらえなかった

 でもテュネとアスラムが温泉の流れを読んであっさり見破った

 この樹、温泉を吸い上げて葉っぱに放出する特性があるらしい

 この土地にしかない樹で、ここまで大きいのはこの街にしか生えていない

 というか、この樹があるこの土地で街を作って温泉街ができたらしい

「うわ、遠くから見ても大きかったのに、近くに来ると圧巻だね」

 世界樹ほどではないけど、この樹もてっぺんが見えないな

 どうやって温泉のあるところまで登るんだろう?

「天空温泉はこちらのリフトでお上りください」

 案内のお姉さんが連れて行ってくれたのはリフトだ

 上に登るエレベータのようなもので、魔法で動いてるらしい

 他の観光客の人達と乗り込んで上に上がった

 高速で上がってるのに体にちっとも負担がかからない

 これも魔法なんだろうか?

 温泉のあるところまで登ると、ものすごく広い葉っぱの上だった

 そこにいくつかの囲いがあって、その中に温泉が満たされている

 葉っぱのところどころに温泉が吹き出るのを、その囲いで閉じ込めているとテュネが教えてくれた

 脱衣所で脱いで温泉へと走る。ここは裸で入るみたいだね

 もちろんタオルで体は隠してるけど、ここは男性用と女性用で葉っぱが分かれてるから見られる心配はないかな

 まずは体を浄化魔法で清めてからだ

 ここは洗うところが無いから、それ専門の魔法使いのお姉さんに清めてもらう

 自分で出来る人はその分の料金がかからないみたいだから、テュネに全員清めてもらった

 さぁ体もきれいになったことだし(汗をかかないから汚れてないけど)温泉に入ろう!

 足からゆっくり浸けると、この樹の香りなのか、まるでヒノキ風呂に入ってるようないい香りがした

 浸かりながら景色を見ると絶景かな絶景かな

 地平線の彼方まで見渡せて空と大地の切れ目がしっかりと見えた

 雲の切れ間からは太陽光が差し、光のカーテンが降り注いでいる

 身も心もリラックス

 さらに上にも温泉があるみたいだからまたリフトで登って入ってみることにした

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