魔族の国25

 彼女の後を追うように僕らも道を歩く

 この先が火山温泉なんだけど、また襲われてたよあの人

「ひぃいい、助けてください!」

 僕らの姿を見つけるなりこちらに走って来て僕の後ろに隠れた

 今度は大きな熊型の魔物に襲われていた

 鬼熊と言って、頭に角がある魔物だ

 性格は獰猛、でもランクはDランクで、一般的な冒険者なら普通に倒せるくらい

「えい!」

 僕は軽く小突いて鬼熊を退散させた

「あ、ありがとうございます!」と言って彼女はまた走っていってしまった

 せっかちな人だ

 二度あることは三度あると言うし、また襲われるんじゃなかろうか

 そしてその予想は当たってた

 今度はワイバーンに襲われてた

「あああ、うう、ああ」

 ワイバーンの恐ろしさに腰が抜けているみたいだ

 とりあえず彼女を助けよう

「もう、お姉さん危ないから僕たちと一緒に行こうよ」と提案しながらワイバーンを蹴散らした

 ワイバーンは美味しいから、死体は今度妖精たちに食べさせるために持って帰ろう

「あ、是非そうさせてください」

 お姉さんも了承してくれたことだし、一緒に火山温泉に行くことにした

「で、なんであんなに急いでたの?」

「え?急いでませんよ? 私普通に走ってただけです」

 うん、ただのせっかちさんだこの人

「あ、私、コロネル・マインダーと言います。気軽にコロちゃんと呼んでください」

「あ、うん、コロさんはこの温泉に来たことがあるんですか?」

「いえ~、初めてですよ。だから楽しみで楽しみで。でもまさかこんなに魔物が出るとは思いませんでした」

 そう、この火山温泉までの道中は魔物の群生地なんだ

 一応入山前に確認と同意書を書くはずなんだけど、このお姉さん多分話聞いてなかったな

 で、また魔物が出た

 でも僕らの敵じゃないから一気に倒す

 そんなことを繰り返しつつ火山のふもとまで歩いて行くと、ようやく火山温泉が見えてきた

 ここまで歩いて1時間ほど

 ちょっと遠かったね

 コロネルさんと別れて火山温泉に入る手続きをした

 肉体が熱に耐えれない種族は大やけどをする可能性があるのでそのための同意書だ

 ちなみにコロネルさんは炎人という炎を体にまとった種族だから平気だよ

 同意書にサインしていると、後ろから声をかけられた

「みーつけた!」

「え? えっと、どちら様でしょうか?」

「んとね、君の叔母さんかな」

「え!?」

 あれ? 母さんに姉妹っていたの?

 そのお姉さんをよく見てみると、妖精のような姿をしていた

 でも体のサイズが人間と変わらない

「あ、私はエルリウラ。妖精族の祖神だよ!」

 少し思考が停止した

「え? じゃぁ神様ですか!?」

「そうそう、んでねお姉ちゃん・・・、えとね、シルフェインちゃんに会いに来ててさ。子供が生まれたって言うから会いに来たってわけなのよ。あなたがリディエラちゃんでしょ?」

「はい、そうです」

 エルリウラ様はそれを聞いていきなり抱き着いてきた

「ぬは~可愛い! 私がおばさんだよ~。ナデナデナデナデ」

 う、ものすごいスキンシップだ

 でもなんだかすごく癒される

「かわいいね~、かわいいね~。ムチュ~」

 今度はキスの嵐

「ふぅ、満足満足。それにしてもシルフェインちゃんそっくりだね。また会いに来てもいい?」

 エルリウラ様は満足してくれたみたいだ

 どうやらしばらくこの世界にいるらしい

「ぜひ。今度は僕たちの方から会いに行きます」

「ほんと!? じゃぁ私この世界を色々見て回るからさ。シルフェインちゃんのとこへ帰る時連絡してよ」

 彼女は僕にオーブを手渡した

 通信用だ

「じゃ、私もここの温泉に入るから一緒に行こ」

 この神様が僕の叔母さん・・・

 実感はないけど、どことなく母さんに似ている

 神様はみんな一人の大神様から生まれたらしい

 だからみんな兄弟姉妹なんだそうだ

 あのアマテラス様も二人のお姉さんなんだって

 それから僕らは火山温泉を堪能した

 暑さは感じないけど、すごく気持ちよかった

 僕らエレメント体に作用する効能があるみたい

 なんていうのか、人間でいうところの体の芯まで温められる感じ

 お風呂に入っている間もエルリウラ様は僕にべったりだった

「じゃ、私、色々世界を見て来るね~」

 そう言って飛び去った

 また絶対に会いに行こう

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る