魔族の国22

 さぁ、今度は電気風呂

 人体に影響のない程度の微弱な電流を流すこのお風呂は、肩こり腰痛などに効くらしい

 おじいちゃんおばあちゃんがいっぱいいる

 若者もいるけどまばらだ

 僕たちが入ると、おじいちゃんたちの目が見開かれてた

 まぁみられてるのはスタイルのいい三人だったけどね

 おじいちゃんたちには刺激が強いから一分ほどで上がることにした

 肩こりとかないからあまり意味ないしね

 でも、しびれる感じがちょっと病みつきになりそう

「今度はあそこに入ってみましょう」

 エンシュが指さすのは地獄めぐりとかいうお風呂だ

 地獄に見立てたお風呂がいっぱいあるみたい

 血の池地獄と言う名の赤ワイン風呂、かまゆで地獄と言う名の釜風呂

 針山地獄と言う名の針治療、灼熱地獄と言う名のサウナ

 うん、全部入ろう

 赤ワイン風呂に浸かると、なんだか香りで気分が高揚してきた

 僕たちは酔わないはずなんだけど、酔った気分にはなった

 うー、なんだか気持ちいいフラフラ感

 ほろ酔い気分でかまゆで地獄。熱いんだけどそこがいい!

 さっきまでの酔いが抜けて頭がすっきりする

 そのすぐ横には水風呂があり、そっちにも浸かった

 暑さと冷たさの程よいコラボレーション最高

 次は針治療なんだけど、僕たち人間の姿は取ってるけど構造が全然違うんだよね

 僕たちの体はエレメント体だから針を刺しても意味がない

 あきらめようとしたとき、エレメント体専用と書かれた針治療を見つけた

「どうやって刺すんだろう?」

 口に出して疑問に思ってると、店の人が説明してくれた

「こちらで使用される針は店長特製のエレメント針なのです。精霊様も多くご利用いただいております」

 見てみると確かに下位精霊のウィルオウィスプやジャックフロスト、上位の精霊もちらほら見える

 これは幸いと、僕らは隠れて変化を解いてから店に入った

 なかは個室に区切られてて、一人一人治療してもらえるみたい

 やっている人もエレメント体を持つ種族だからエレメント体の構造もわかってるみたいで安心

「じゃぁ後でね」

 五柱それぞれで個室に入って治療を受けた

 裸になってタオルをお尻にかけてもらい、背中から始まる

「精霊様、特に悪いところはないみたいですね。しいて言うなら肩の魔力流がちょっとだけ悪くなってます。体に全く影響ない程度ですけどね。まだ生まれて間もないのですか?」

「あ、わかるんですか? そうなんです。まだ1年経ってなくて」

「お若いですね~。これから長い長い年月生きるのですからたまにここに来て癒されてくださいね~」

 ホントに他愛のない世間話をしてたらあっという間に終わった

 正直に言うとよくわからなかった

 これは多分僕に悪いところがなかったせいなんだろう

 予定より早く終わったので、フルーツ牛乳を買って飲んでいたらみんなが戻ってきた

 みんなほんわかしてる

「気持ちよかったですね~。私~、また来たいです~」

「そうですね。私もこりがしっかりほぐれてます」

 うん、テュネは確かに一番こってそう

 フーレンはどうなんだろう? 一番おおらかに生きてる気がするんだけど・・・

 次に行ったのはサウナ

 汗をかかないんだけど雰囲気だけでも味わっておこう

 中に入るとおじさんばかりでびっくりした

 視線が痛い

 若い女の子はこういうところには入らないのかな?と思ってたら僕らが入ったのを皮切りに何人か入って来た

 どうやらおじさんばかりのサウナに躊躇してたっぽいね

 ストーブの上に石が乗せてあって、そこから空気が熱せられて最高に熱い

 ピリピリと刺すような暑さが心地いい

 すると中に濡れタオルを持った男の人が入ってきて、タオルをまわし始めた

 水滴が石にかかり、水蒸気が発せられて内部に満たされる

 これもなんだか気持ちいいなぁ

 地獄めぐりを堪能して、次は露天風呂に行くことにした

 露天風呂は少し高いところにあって、景色を楽しめるらしい

 長い階段を上がっていくと、露天風呂のある建物が見えてきた

 すぐに中に入って奥へ進むと、脱衣所になっている

 ここは完全裸制、しかも混浴らしい

 うーん、タオルを巻けばいいか

 大き目のタオルを体に巻いて中に入った

 どうやら一人女性がいるだけみたいでよかった

 入ってみて気づいたんだけど、先に入ってた女性はワオニシアで会った花の妖精テュルリスだった

「おお!我が君! お久しぶりです!」

 うぅ、この人ちょっと苦手なんだよね

 なんだか僕たちを見る目が怖いというかなんというか・・・

 手つきもなんかヤダ

「我が君! たまには遊びに来てください! いつでも最高のおもてなしの準備をしてお待ちしております!」

「う、うん、また今度行かせてもらうよ」

 彼女は一方的に僕への忠誠心と愛を語ると去って行った

 激しい妖精だ

 苦手だけど嫌いじゃない

 さてテュルリスも行ったことだし、景色を楽しもう

 露天風呂からまっすぐに前を見ると大パノラマ

 紅葉で赤みがかった木々が美しい。赤と黄色のコントラスト

 はらりと葉っぱがゆっくりと落ちていく

「燃えるような赤、すごくきれいですね」

 エンシュの言うとおりだ

 真っ赤な木々は赤々と燃え上がってるみたい

 景色を堪能して露天風呂を出たらもう夕方だった

 僕たちはゆっくり宿に戻った

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る