学園生活22

 翌朝のこと、クロンさんが王都から帰って来た 

 登録を済ませたからあの猫魔物も一緒にね

 その子はヘリアと名付けられた。なんでも百年ほど前の英雄の名前なんだとか

 女の子なのに男の英雄の名前を付けるのもどうかと思うけど、彼女は気に入ったみたいで嬉しそうにナーンと鳴いている

 まぁ本人がいいならいいか

「もう帰るのかシラナミ」

「ええ、この子達と旅行してるからまた次の名所に連れて行きたいの」

「だったらエーフィリアの古城はどう? かつての第二王妃エーフィリア姫が謀略の末殺された悲劇の城よ。噂によるとそのエーフィリア王妃とお付きの侍女達の霊が今も彷徨ってるんですって」

「んにゃ、おもしろそうだにゃ」

「でしょ、さすがミーニャちゃん分かってるぅ」

「わ、私は怖いんですけど・・・」

 私はお化け屋敷とか心霊スポットとか平気で、むしろ楽しむくらい

 でもミナモちゃんは無理かも。この世界本当に霊とか出るし、もしミナモちゃんが危険な目に合うならやめた方がいいかも

「よし、じゃあそこに行きましょう!」

 ちょ、お母様!?

 ミナモちゃんもショックで目を丸くして固まってる

「大丈夫よミナモ、お母さんが霊なんて浄化しちゃうから」

「そういえばシラナミってああいうとこ好きだったわね。ミナモちゃんには悪い提案しちゃったかも」

 すっかりウキウキになったお母さんと顔が真っ青なミナモちゃん

 よし、もし霊が襲ってきたら私が守ろう

 幸いにも私が覚えてる魔法の中に浄化魔法なるものがある

 普通に使えば水を浄化したり毒の治療をしたりする生活用の魔法なんだけど、実はアンデッド系の魔物に非常に有効らしい

 さらにニャフテスやバステト様を祀ってる教会で洗礼を受けるとその効果が倍増するみたい

 でも私洗礼受けてないのに常時威力が五倍って書いてある

 まぁ細かいことは気にしなくていいか

「じゃ、また来るわアニャ、クロン」

「ええまたね!」

「ミナモちゃんもミーニャちゃんもまた来てくれ。子供達も喜ぶ」

「はい!」

「んにゃ!」

 アニャさんたちに別れを告げて、さっそく私達はこの副都から出てる馬車に乗ってエーフィリアの古城を目指した

 あ、そういえばなぜか私の配下の欄にアニャさんとその子供達が加わってるんだけど・・・

 でも配下の欄からさらに分類分けされた友人の欄に加えられてる

 これも爵位に影響しているみたいで、今まだ準子爵だけど、あと百ほど配下に加われば爵位が一つ上がって子爵になるみたい

 そうなると常時私のステータスが1.5倍になる

 これはかなり有益なスキルだよ。何せ爵位が上がるごとに私のステータスがどんどん上がっていくからね

 ちなみに今の準子爵だと1.1倍らいい

 

 スキルを確認してたら馬車が来た

 すぐ乗り込むとまたあのお母さんの胸をガン見する男が一緒の馬車に乗り込んでる

 でも今度はお母さんを見ることなく、何か不安そうな顔をしてた

 まぁ別に関係ないか

「えっと、二時間くらいで着くみたいだよお母さん」

「ええ、冒険者時代は行ったことなかったけど、楽しみね」

「楽しみ、なんだ・・・」

「大丈夫にゃ、ミニャモちゃんはあたしが守るにゃ」

 それを聞いて安心してくれたのか、ミナモちゃんは微笑んで私を膝の上に乗せた

 はぁあったかくて気持ちいい

 そのまま目を閉じて眠ってしまった


 目が覚めると到着したみたいでみんながもう馬車から降り始めた

 私も抱えられてミナモちゃんと馬車を降りる

「うわぁいかにもな城だにゃ」

「う、うん」

 観光客は思ったより多い。こんなに人がいてアンデッドって出て来るのかな?って思ってたけど、入り口に来て私のアンデッドに対するイメージが変わった

「ようこそ我が姫の城へ!」

 入り口はこちらと書かれたプラカードを持った血まみれのメイドさんが元気よく挨拶してる

 この人、レイスだ

 幽霊型のアンデッドの中でも魔法に長けてる魔物

 いやここまで自我が残ってるならもう魔物じゃないね

「おやぁお嬢ちゃん、レイスは初めてかなぁ?」

 ミナモちゃんに気づいてしゃがみ、話しかけて来るレイスのお姉さん

 血まみれで怖いんですけど・・・

 ミナモちゃんはガタガタ震えて口をパクパク開いてる

「あ、ごめんね怖がらせて。でも大丈夫、ここのレイス達は皆襲ってこないからゆっくり観光していってね」

「あわわわ、あ、は、はいぃいい」

 すっかり委縮してるミナモちゃんだけど、段々と慣れてきたみたいで震えは収まった

 で、お姉さんのいる入り口から城に入ると、たくさんのメイドレイスがあくせくと案内しているのが見えた

 彼女たちの説明によると、この場所は確かに悲劇のあった城らしい

 皆殺されたあと恨みで皆レイスになったけど、第二王妃のエーフィリアさんが恨みは何も生まないと諭して復習はしなかったんだとか

 それで誰も殺さなかった彼女たちは自我を取り戻し、今に至る

 ちなみに第二王妃だったエーフィリアさんが殺された理由が、第一王妃の謀略によるものだった

 第一王妃はバステト様に祝福され、次期女王と名高かったエーフィリアさんを妬んでこんなことをした

 でもバステト様に祝福されていたため神の怒りを買って、第一王妃一派は全て呪いによって死んでしまったそうだ

 それで彼女たちは特に浄化されることもなく今までここで暮らしてて、ここ数年で観光名所としてここを開いたそうだ

 なんというか、死んでるんだけどたくましい人たちだ

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