私は神獣ではないです2

「なるほど、またしてもニャトラ教団が…。報告ありがとうございますミナモさん」

 そう言ったのはこの街にあるニャフテスを祀るエレア教会の司祭ラートさん

 真っ白な髭を蓄えた小柄な可愛いおじいさんで、にこやかな笑顔が特徴的で安心感を与えてくれる

 そんなラートさんに報告したのは、現在各地で問題を起こしているニャトラ教団についてで、ミナモちゃんが襲われたことも話した

 私のミナモちゃんを傷つけるなんてとんでもないことをしてくれたね。今からでも本部に乗り込んでぶっ潰してあげたいけど、もし私が離れている間に奴らが戻って来てミナモちゃんやお母さん、街の人達に危害を加えるとも限らない

 だからまずエレア教会に報告したんだ

 この教会は教会ながら神聖騎士という騎士団を持っていて、それこそ実力者ぞろい。この街にはいなかったけど、そういうことならとラートさんが呼んで護衛をしてくれるみたい

 もちろんこの街のギルドにも伝えておいたら、私達の護衛ならと驚くほど人が出てくれた

 これでひとまずミナモちゃんは安全だろうから、問題のニャトラ教団をぶっ潰しに行きますかね

 なにせそういう問題ある教団を放置しておいたら私に安静なる日々は来ないと思うんだよね。だから潰します。私のお昼寝満喫ライフのために!


 件の教団の本拠地はこの街から西に数キロほど離れた森の中にあるみたい

 その森は数多くの猫魔物が住む森で、教団員はその猫魔物を使役してるみたいだ。使役ってことはテイマーとかいう職業持ちがいるんだと思う

 テイマーと言うのは魔物を使役して戦う人のことなんだけど、凄い人になると神獣を使役してしまうそうだ

 とはいってもそんな人は極々稀で、普通はあり得ない。なにせ条件が条件だからね

 その条件と言うのは戦って認めてもらい、心を通わせること

 つまり使役している魔物に頼りっきりでは神獣を仲間にすることはできないのだ

 そしてそれは、あんな教団にそんな戦力は無いことを意味している

 神獣なんて勝てる気がしないし、もし出てきたら多分私じゃ無理ゲー

 でも、それでも私は多分戦うんだと思う。それほどまでに私は怒り心頭していた

「どこ行くのミーニャ」

「んな!」

 すぐ戻る、みたいな感じで鳴いて私は駆けだした

 街を出て、スピードをグングン上げて上げて、その森を目指す


 およそ十分ほどで到着。そこには確かにあの時の白いローブの男たちと同じような集団が数多くいて、大きなコロニー型の集落を作っているみたいだった

 その中の一人が私に気づく

「おお、猫魔物か。俺もまだ使役できてないからテイムしてみるか」

 全く警戒せずに近づいてくる男。私は少し飛び上がって男の頬を猫パンチした

 これぞ私の新しい必殺技、幸せ肉球パンチ。これを喰らった者は幸せの渦の中眠りにつく

 まぁただ単に頭に浮かんだスキルである“睡眠”をパンチに込めただけなんだけどね

 このスキルは攻撃に上乗せして相手を眠らせることができるスキルで、相手を殺さずに捕らえるためにはちょうどいいスキルだね。しかも一度眠ると丸一日は眠り続けるという代物

 恨みや怒りはあるけど、私は殺戮をしたいわけじゃない。できることなら殺さずにね

 なんだろう、人間を殺すってことに抵抗が無い気がする。それはこの体だからなんだろうか?

 そういえば初めて魔物を殺したときも動物虐待!なんて感情は湧かなかった

 うーん、猫が獲物を捕らえる感じ? それどころか獲物を倒す瞬間は楽しいとさえ思ってしまった

 これはいかんことですよ。私は猫であるけれど、人間性は残したいんだ

 だから私は殺戮なんてしない

 私に気づいた教団員たちを猫パンチで眠らせていく

 かなりの数の人間を眠らせたけど、それでも一向に減る気配がない。どれだけいるんだ教団員

 案の定テイマーもたくさんいて猫魔物が襲い掛かって来てるけど、私にとっては弱い、弱すぎる

 猫パンチ一撃で沈んでいく仲間を見て教団員たちは次第に逃げ始めた。うんうん、その方がいい

「くそ、なんなんだあの子猫は! 魔物?いやそれにしては強すぎる。魔法を無効化してやがる!」

「うおわっ!こっちに来た!」

「ひぃ、殺さないでくれぇ!」

 殺さないって…

「固まるな! 散れ!散って四方から攻撃しろ! おいなにをしてぷげっ」

 出ずッパてきた指揮官がうるさいから寝てもらう。それにしても指揮官がこれじゃだめだねぇ。逃げることを考えるのも指揮官の務めだって言うのに、引き際が分からないようじゃ失格ですよ

 指揮官が崩れたことで続々と教団員が逃げていく

 森の奥へ奥へと逃げるからその後を追って案内してもらう

 なるほど、森の奥には幹部とか教団のトップがいるのだねぇ

「ゼオン様! 恐ろしい猫魔物が!」

 そんな声が聞こえてきたのは一番豪華な仕様のログハウス。フフフ、あそこが教団長のハウスね

 私はゆっくりとその歩を進めるのであった

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