十九話 城なしの体調不良

 城なしは平和だった。

 しかしそれも今日までだった。

 何故なら城なしが荒らされてしまったからだ!



 割れた壺の片付けをしていると、ラビとシノが体調不良を訴えてきた。


「何だかいつもより寒い気がするのです」


「そうじゃな。心なしか息苦しい気がするのう」


「何だ? 二人とも風邪でもひいたのか?」


 城なしは今寒い地方の上空にいるらしく、ここ最近の地上は雪景色だ。


 そんな地上に降りたりしているものだから風邪をひいたのかもしれない。


 ん?


 ラビはともかくシノまで風邪をひくのはおかしくないか?


「なあシノ、妖怪も風邪をひくのか?」


「さあの。少なくともわぁが妖怪になってからは風邪などひいた事がないのじゃ」


「ふむ……」


 もし仮に二人が病気でなかったとしたらどうだろう。


 その場合、ここ城なしの温度が下がり、酸素量が低下しているという事になるんじゃあなかろうか。


 もしかして城なしに何か異常が起きている?


 通常、城なしの周りには見えない壁のようなモノがあって、その壁の内側は外側とは違って温かく、そして息苦しいなんて事もない。


 それは十中八九城なしが何かしてそうなっているに違いない。


 だが、城なしのその機能に異常が起きているのだとしたら?


 もっと悪化してその機能が停止してしまったら?


「おいおい、空の上は氷点下だぞ!?」


「なんじゃどうした突然何を言いだすのじゃ」


「と、突然大きな声をお耳がびっくりするのです……」


「あ、ああ、悪かった。でも、それどころじゃあないんだ。このままじゃ、城なしが氷の大地になっちまうかもしれない」


「氷の……」


「大地なのです?」


 そろって首を傾げる二人。


 けれど、ゆっくり説明している暇なんてない。


「原因はわからないけど、城なしが大変なことになってる。なんでもいいから異常を探して見つけてほしい」


 かいつまんでそれだけ伝えると、俺たちは手分けして異常を探し始めた。




「ご主人さま! まん中のお水が温かくなっているのです!」


 一番に異常を見付けたのは意外にもラビだった。


「なんでまた水源が温かくなってるんだ? 城なしが風邪をひいて熱を出しているとか?」


 いやいや、いささかそれはメルヘンが過ぎるってもんだ。


「主さま。そこかしこに焼けて煤こけた跡があるのじゃ」


「城なしを襲った怪物は火でも吐くのかね」


 でも何のために?


「水がだいぶ減っておるのじゃ。なあ、主さま。その怪物とやらは湯を沸かして浸かろうと思ったのではないかの?」


「怪物が風呂を沸かして入ったって言うのか?」


 これまたメルヘンな話だ。


 だが、水がだいぶ汚れているし、怪物がここに浸かったのであれば、この状況にも納得がいく。


 しかし、問題はどうすれば城なしが再び元気になるのかという事だろう。


「ご主人さま。いつもお水がこんこんと湧いているのに、今は止まってしまっているのです……」


「水か……」


 ふむ……。


 原因はそこにありそうだ。


 ラビの言葉をヒントに思い付いた原因は3つ。


 水が減ったから。

 水が温まったから。

 水が汚れたから。


 どれもそれらしく見える。


 けれど、やることは大体一緒。


 地上に降りて川なり湖なりから水を汲んでくれば解決しそうな気がする。


 もちろん、水を汲むには城なしエディターを使う。


 思い付いたら即行動。


 俺たちは地上へと舞い降りた。

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