三話 俺の後ろにヤバいヤツがいる!

 転生して。

 色々あったけど空飛べた。

 でも俺の後ろにヤバいヤツがいる!



「ヤバいヤバいヤバいヤバい!」


 コイツはヤバい!


「ルガアアアアアア!」


 背後でライオンも真っ青な咆哮をあげるのは空飛ぶトカゲ。


 いやドラゴンだ。


 いやいや腕がないから飛竜ワイバーンだ。


 まっしろなカラダで、太陽の光を浴びて銀にも見えるのがすごくカッコいい。


 けれど、体重数万キロはありそうな体で空を飛んでいるのは許せん。


 そんな巨体で飛べるか!


 絶対に謎パワーで飛んでいる。


「重力に万有引力、そして宇宙の法則に謝れ!」


「ルガアアアアアア!」


「うひぃっ、怖っ! すまん俺が悪かった! 謎パワーで飛んでもいいからそう吠えないでくれ!」


 くっ、ひれ伏してしまった。


 まったくどうしてこんなヤツに追いかけ回されにゃならんのか。


 調子に乗って鳥が即死するレベルの高度を飛んでいたのがいけなかったんだろうか。


 寒いし息苦しいだけだったのにこんな事にまでなるなんて踏んだり蹴ったりだ。


「ルガアアアアアア!」


 ああ、とうとう咆哮が直ぐ後ろから聞こえた。


 もうダメだ!


「生きたまま胃酸に溶かされるとかグロい死に方はしたくないから、せめて噛み殺してから飲み込んでくれ!」


 俺は生きるのを諦めて死に方に注文を付けると目をつむった。


 そして、飛竜が俺を……。


 俺を……。


 まだ……?


 ……。


 あれ? 襲ってこない?


 どうなっているのかと振り向こうとしたところですぐ脇を通って飛竜が俺を追い越していく。


 すれ違いざまギョロりと俺の頭よりデカい縦長の瞳孔で俺の瞳を一瞥する。


 そして、荒く鼻を鳴らす。


「フン……!」


 フンって……。


 なんだか誇らしそうだ。


 あるいは俺をバカにしたのだろうか。


 飛竜はどんどんどんどん俺の前を行く。


 そしてそのまま帰って来ることはなかった。


「いったい何なんだよ……」


 意味わからん。


 でも助かったから良いか。


 いや助かったか……?


 ここどこよ?


 いかん必死で逃げ回ったせいで迷子になってしまった。

 

 帰るべき場所さえもうわからない。


 そんな時にソレと出会った。


「ん? なんだアレは? 空に岩が浮かんでる?」


 いや、島といった方が正しい。そう、例えるなら天空の城! の、土台部分。


 なんでこんなものが浮かんでいるんだろう。


 しかしまあ空を飛んで疲れた体を休ませるには、大変よろしいのでは無かろうか?


 なら着地しよう。


 休憩だ休憩。


 しかし、城のない天空の城か……。


 よし、それなら『城なし』と名付けてやろう。

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