第46話 7月7日 七夕

七夕のお祭り当日。俺は1人でマンションを出発した。うん?珠弓と喧嘩でもしたかって?いやいや、珠弓はすでに家を出発している。それも何故か昨日の夜に、、、。


♪♪


「七夕祭の前日に実家に帰りますので、当日はお祭り会場の最寄り駅で待ち合わせしましょう」


というメッセージを数日前。お隣に座っていた珠弓から受けた俺。なんか実家に用事でもあるのだろうか?と思い。俺は特に理由も聞かずに「了解」とだけ言ったが、、、。今頃になってかなり気になっていた俺だった。


「これ、最寄り駅行って珠弓が居なかったらどうしようかな、、、」


とか思いつつ実家方面に向かう電車に乗り込んだ俺。いや、ないとは思うけどさ。珠弓が桃園さんとドッキリ?みたいなのを仕掛けていて実は今珠弓は桃園さんのところに居るのではないだろうかとか。余計な事を考えつつ移動している俺だった。


それからしばらく。七夕の祭りが行われている場所に一番近い最寄り駅に到着したのだが、、、。


めっちゃざわざわ。つまり、、、。


「人が、、、。多すぎる、、、。」


俺がそうつぶやいたが。周りざわざわがすごいので誰にも聞こえてはいないだろう。一応混んでいることは予想はしていたのだが。それを軽く超える人の多さ。何か。電車の中も人多いなとかは思っていたのだが。降りてみたら、、、。人の大渋滞。改札で1人詰まると後ろがまあ大変。という状況だった。


「これ珠弓大丈夫か?」


俺はそう思いつつとりあえず人の波から逃れて。少し人が少ない場所に移動した。時間は、、、。まだ待ち合わせの時間より30分くらい早い。


♪♪


すると俺のスマホが鳴る。珠弓からだろうと思って開いたら、、、。開かなければよかったと今後悔している。


「弥彦!今日はどこにいるんだ?なんで最近留守ばっかりなんだ!っか珠弓ちゃんも一緒か?一緒なのか?どこいるんだよ!」


うるさい奴からのメッセージだった。開いてホント損した。時間を無駄にした。というか。うん。今は見る必要が全くない。無視しておこう。光一からのメッセージを閉じると、俺は珠弓とのメッセージのページへ。今のところ珠弓からは連絡はなし。なので、現状を伝えておくために、、、。


「会場の最寄り駅すごい人だから。とりあえず会場と反対側の出口で集合しないか?多分あっちなら少なそうだから」


とりあえず珠弓にメッセージを送った。


なんかメッセージを作っている時に「もう居るから早く珠弓も来いよ」みたいな感じになっていないだろか、、、。とか、ちょっと気になったが。人混みの中に珠弓が紛れたら見つけれる気がしないので、、、。とか思っていると珠弓からはかなり早く返事が来た。


♪♪


「先輩。連絡忘れてました。もう駅の反対側に居ます」

「、、、。お、おぅ」


まさかのすでに珠弓はこの駅の反対側に居た。というか。ちゃんと人混みは避けていたらしい。って、早くいかないとか。と思い。俺は人の波を逆走する形で駅の反対側に、、、。結構移動するのは大変だったが反対側に着くと、、、。うん。こちら側も空いているとかそんなことはなかった。それなりにこちら側も人は居たが、、、。まあ会場側よりはマシだった、、、。のだが、、、。珠弓はどこだ?


駅前のロータリーをぐるりと見るが、、、。お人形さんの姿が見えない。ベンチなどに座っている人を見ても、、、。いない。あれ?駅を間違えた?とか思っていると。


ツンツン。


「ひゃっ、、、」


いきなり横わき腹をツンツンされた俺。そりゃ変な声出るから。って、そんなことをしてくるのは1人しか浮かばなかった。


「珠弓、、、?」

「、、、」


俺の後ろに居たのは、、、。うん。珠弓だ。珠弓なんだが、、、。


「珠弓。浴衣着に実家行ってたのか」

「、、、」


可愛らしい淡い色の浴衣を着たお人形さんが後ろに立っていた。って、珠弓の浴衣姿、、、。小学生の頃、、、。あれ?記憶がない、、、。もしかして、、、。初?って、、、。うん。まずはこれは言っておこう。


「めっちゃ似合ってるな。珠弓」

「、、、」


俺が言うと、珠弓はちょっと恥ずかしそうに下を向いてから俺の服のすそを軽く引っ張って来た。


「早く行こうと?」

「、、、」


小さく頷いた珠弓。ホント珠弓はとっても七夕のお祭りが楽しみだったらしい。にしても、、、。かわいい。あと、よく珠弓1人で待ってたな。とかちょっと思ってしまった。いや、絶対変な奴が声かけそうな気がしたから。光一とか。光一とか。光一が。


俺は珠弓の後ろを付いて行く形で歩き出す。って、ほらやっぱり注目されてるじゃん。今すれ違った人たちめっちゃ珠弓の事褒めてたし。とか俺が思っていると、、、。


「あれ?」


少し人混みの波に入ると、急に軽く引っ張られていた感じがなくなる。先ほどの人の波の場所。駅の反対側にさしかかると同時くらいに、、、。珠弓が消えた。


「珠弓?」


俺が声をかけたところで、、、。かなりのざわざわ。人いっぱい。そして会場に急ぐ人が多いのか。先ほどから結構人にぶつかる、、、。これはまずい気がする。


珠弓は俺の前を歩いていたから、、、。と、ちょっと早歩きで人をかき分けて進んでいく。すこし進んでいくと。駅の敷地を出てすぐのところで不安そうにキョロキョロしている珠弓が居た。良かった。マジで良かった。


「珠弓」

「、、、」


俺が声をかけると珠弓はすぐにこちらに小走りで来た。


「悪い悪い。人多いからな。注意しないと」

「、、、」


俺がそう言うと珠弓はなぜか俺の手をツンツンしだした。


「なんだよ」

「、、、」


俺が聞いてもまだ珠弓は俺の手をツンツンしている。


「、、、。うん?」


そして、珠弓は俺の小指を握った、、、。うん。小指だけ。そこで分かった。なるほどはぐれるといけないから手を繋ぎたい。という事だったのか。と、理解した俺。さすがに小指だけ引っ張られるのは、、、。だったので。


「迷子になるよりはいいな」

「、、、」


ということで、珠弓の手を握る。うん。すべすべの手。そして、俺が握るとちゃんと珠弓も握り返してきた。良かった。正しかったらしい。ということで、はぐれないようにしたところで、やっと七夕のお祭りが行われている会場。商店街まで歩いてきた俺と珠弓だった。





浴衣バージョンのお人形さんは永久保存版です。

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