アネモネ!!

波乗りフエイ

第1話 新生活!!①

――3月末日 入学式前日


ピピピピッ ピピピピッ


手を伸ばしアラー厶を止める。


カチッ、


──まだ眠い……

──けど、起きない訳にはいかない……



 この部屋には、昨日の夜中に引っ越してたばかりだ。

荷物の整理や部屋の掃除などで疲れ果てた俺は、ベッドを組み立てる気力がなくなり仕方なく地べたで寝る事にした。

案の定、体のあちこちが痛い……

それに結局の所、まだテレビや棚ぐらいしか出せていない。

山のように積んであるダンボールを見ながら、俺は呟いた……


──あれ、どのダンボールに着替え入れたっけ?


 朝の憂鬱な気分に浸りながら、俺はダンボールを1箱ずつ調べていく……

手前の箱には、なかったため奥の方にあるダンボールを手前にだそうと手を伸ばした。


──確かこの辺じゃなかったか?


右側のダンボールが袖に挟まったらしく、上からダンボールが崩れてきた。


ドンッ、ドカッ!


嫌な音がした……

何か壊れたんじゃないかと思い、慌てて荷物を起こして中身を確認する。

幸い、落ちた中身は引っ越す前に捨てようか悩んだ大量の漫画だった。

置く場所もなかったので再びダンボールに敷き詰めることにした。


最後の一冊を入れようと本を持ち上げた時、隙間から一通の封筒が宙に舞った……


──あれ?こんなの入ってたか?


しかも、封筒がテープでしっかり固定してあり開封した形跡はない。

開けて中身を確認しようと思ったが生憎、今はハサミもカッターもどの段ボールにいれたかもわからない……


仕方が無いので開けるのは後にして、目的だったはずの服を探そうと封筒はテレビの前に置くことにした……

 寝間着から着替え、とりあえず朝ご飯を食べようと外に出かける事にした。

家を出る前に時間を確認すると短い針がとっくに12を過ぎている。


──朝ご飯の時間ではないな……




──やっぱり東京は、すっげーな……


車も人も店の数も俺の地元と比べものになんないくらい多い。

流石都会。

何を食べようかと、歩きながら店の看板やメニューを物色する。

すると、同じく何かを探しながら歩いている女性が視界に入った。

黒髪ロングヘアーでニットを着てる綺麗な女性だ。

同い年ぐらいの子だろうか?

身長は165ぐらいで俺より少し小さい。


少し様子をうかがっていていたら、案の定あちらも俺の存在に気づいたらしく、真っ直ぐ向かってきた。

俺はさすがに見過ぎたと思い、急いで目をそらした……が、少し遅かったようだ。


「すみません、道を聞いてもいいですか?」


良かった、怒られるのかと思った、、

そして、離れてたから分からなかったけど、すごい良い匂いする……


「はい、いいですけど、」


久々に家族と幼なじみ以外の女性と話したような気がする。


「ここのアパートに行きたいんですよね。

実は……今日から新しいアパートに住むんですけど、道に迷っちゃって、。」


「あーなるほど、それは大変そうですね」


同じタイミングで引越しなんて、偶然な事もあるもんだ。

彼女はそういうと、ポケットから携帯の写真を見せてきた。


えっ、


驚いた。

彼女が今時、ガラケーを使っていたのも相当驚いたが、それよりもっと驚いたのは、そのアパートの場所だ。

俺が昨日から住んでいるアパートと一緒ぞ?でも昨日、大家に会ったけどそんな事一言も言ってなかったぞ。


「わかりますか?」


彼女は、聞いてきた。


「えーっとー、場所はわかったんですけど、」


「けど?」


別に隠す必要も無いし、正直にいうか……


「この場所、俺の住んでるアパートと一緒なんですよね、」


それを聞いたとたん、彼女はとても驚いた


「えーー!ホントですか?」


俺は1回首を縦に振った。


「では、自己紹介しないとですね!初めまして、私は広瀬七海ひろせななみといいます!今日から202号室に引っ越してきたものです!」


しかも、202号室って、俺の隣の部屋じゃん……


「初めまして、俺は鈴木征達すずきせいたです。実は俺も、昨日隣の203号室に引っ越してきたばかりなんだ」


また彼女は驚いた顔をした。


「同じタイミングで、しかもお隣同士じゃないですか!」


「そうだな、」


やけにテンション高いな……


「では、これからよろしくおねがいしますね!セイタくん!」


ん?


「流石に知らない人にいきなり下の名前で呼ばれるのは、しかも君付け……」


「いいじゃないですか。私もナナミでいいんで!」


まぁ、いいか……


「じゃあよろしく、えっと……ナナミ、」


「はいっ!!」


この人結構軽いな、絶対中学校の時、陽キャだっただろ。


「ちなみにセイタくんはどこに行こうとしてたんですか?」


俺が考えているうちに、質問してきた。


「いや、特にどこに行こうってわけでもなかったんだけど……とりあえず昼ご飯をどこで食べようかって探してるとこだったんだ。」


「それなら、私もご一緒していいですか?ご飯まだなんで。」


「俺は別にいいんだけど、普通会ったばかりの人と一緒にご飯食べに行くか?」


「行くんじゃないですか?」


東京の普通ってすげーな、これが陽キャってやつなのか?


「これからお隣同士になるんですし、いいじゃないですか!これから長い付き合いにきっとなるんですし。」


「それにナナミは、先に家に行かなくていいのか?荷物とか運送屋が届けにくるんじゃないのか?」


「はい、そうですよ!でも、もう荷物なら受け取りました。」


「え?だって、荷物受け取るなら家までいかなきゃいけないんじゃ……」


「家にも一回いきましたよ!」


「ん??」


そして数秒考えた後、一つの答えが浮かんできた。


「てことは、、ナナミは一回行った事のある家の場所を忘れたって事か?」


「正解です!!よく分かりましたね!」


「なんだよそれ、忘れちゃだめだろ、、」


「実は私、方向音痴なんですよねー、テヘへッ、」


「テヘへッって、……。」


外見だけだと、頭も良さそうな感じなのに話してみたら以外と馬鹿だぞ、コイツ……

やっぱり、人は見た目によらないな、


「──とりあえず、いかない?」


「はい!」


その後、俺とナナミは少し歩いた後近くに良さそうな飲食店があったので入ってみることにした。



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