第20話「浦島太郎」
真蔵仙人の自宅。
お茶を飲みながらサトコとの話しが続いている。
「金丹の力は人間界に戻っても使えるのですか?」
「いゃ、残念ながら仙界で身に付けた力は仙界だけでしか使えない。この世界は夢のようなものだからな」
「そうなんですか、残念だ。人間界に戻ったら、あたしはまた半身不随のままですか……」
「この仙界でずっと暮らす事もできるぞ。今のお前は仙界ではほぼ無敵だ!」
「仙界には金丹を越える仙丹はないのですか?」
「金丹は最上級の仙丹だが1種類ではない。9種類あると言われている。さらに似たような物もある。仙丹の種類も多くて、わしでも把握できていない」
「では、まだ、あたしは最強というわけではないんですか?」
「車で言えば、お前がポルシェとしても、それに匹敵する車もあるし、その上のレーシングカーなんてのもある。運転の技術で下のクラスの車に負ける事もあるだろうな」
「なんだ、最強かと思ったのに……」
「お前が仙界をみだすような事をしなければ危険はないだろう」
「何かすると、凄いのが現れるんですか?」
「仙人にも位がある。神仙がきたら、人間界で言えば自衛隊がやって来て大砲やミサイルを射つようなものだ。車なんかひとたまりもない」
「やっぱり修行したら人間界に戻ろう」
「ここで修行すれば人間界に戻っても頭の奥に記憶が残り体の回復は急速に進むはずだ。もっとも、ここでのことは夢をみたように思い出せなくなるだろうがな」
「人間界には金丹のような物はないのですか?」
「う~ん、それがあると言えばあるんだ。仙草や仙石、仙魚なんてのもあるにはある」
「それを食べると人間界でも仙女になれますか?」
「昔話で人魚を食べると不老不死になるというものがあるじゃろう」
「漫画で読みました」
「あれが仙魚じゃ。人魚というのはちょっと難しいが、仙薬となる魚はいるらしい、漁師でも見たことのない奇妙な魚を食べて仙人になったのがいたという。一般的に有名なのは真珠だな。貝だが、天然の真珠を酢で溶かして飲むと長寿になると言われておる」
「真珠……耳飾りにいいな。将来の旦那様に買ってもらうか!?」
「浦島太郎なんてのも仙人の部類じゃぞ」
「おとぎ話じゃないんですか?」
「おとぎ話じゃがな、あの助けた亀が仙魚じゃ。竜宮城は、ここ仙界のような世界なんじゃ」
「竜宮城もあるんですか?」
「ああ、あるよ。わしは行ったことはないが、竜宮城に行って来たと言う仙人は多い」
「仙魚の亀が村の子供にいじめられていたんですか?」
「あれは、たぶんやらせだろうな」
「やらせとは?」
「昔は借金を返せない者が多くてな、そういう時、借金取りはしょうがないので借金してる人と一緒に街中に行ってな、金を持っていて人のよさそうな人がくると『借金返せ!』と怒鳴りながら借金してる者を殴る蹴るとやるわけだ。借金している人は泣きながら『女房が病気で』とか悲しいことを言うんだ。すると金持ちが見かねて『金を出してやる』と言うのを待つんだ。そうなると借金取りは金をもらえるので丸く収まるというわけだ」
「それじゃー、あの亀はわざといじめられて浦島太郎が助けてくれるのを待っていたんですか」
「浦島太郎は、たまたまなのかもしれないが、仙骨を持った人を探していたんだろう」
「仙骨って骨盤にあるやつ? みんな持ってるのでは?」
「その仙骨ではない。仙人になるには、仙骨と言う体質が必要なんだ。それがないと仙草も仙魚も食べると猛毒となり、死ぬか、バケモノになってしまう」
「仙草を食べれば誰でも仙人になれるんじゃないんですか!?」
「仙骨があればの話だ。がんの薬でもDNA で合わなければ効果はでないなんてのもあるだろう」
「それは、分かりません……」
「どうして亀は、そんな手間のかかることをするんですか?」
「竜宮城は最近は大都会らしいが、昔は女性ばかりの世界だったと聞く、そこで亀が使いとなり、仙骨を持った男性を探して竜宮城に連れてゆき、子供を作る計画だったのじゃないかな? くわしいことはわからんが……」
「なんと子作りですか?!」
「わしの想像じゃがな、あの亀も浦島太郎を乗せられるほどの大きさの仙魚じゃ、子供なんかにゃ負けないじゃろう。竜宮城まで海の中を浦島太郎を連れていく神通力はたいしたもんじゃぞ」
「浦島太郎は竜宮城から戻るとものすごい時間がたっていたんですよね」
「そうじゃ、竜宮城で3年過ごして帰ったら人間界では300年たっていたそうじゃ。人間界でも3,000円ポッキリって言われて店に入って綺麗なお姉さん達と遊んで、出ようとしたら30万円請求されるなんてこともあるだろう?」
「なんの話ですか?」
「隣りの家の山本さん、人間界にいた時、歓楽街に二人で飲みに行ったら、綺麗なお姉さんが呼び込みをしていて、2時間飲み放題で3,000円ポッキリだって言うから店に入ったんだってさ」
「うん、2時間飲み放題で3,000円ならいいんじゃないですか?」
「そう思うだろう。店に入るとクラブみたいな店で柔らかいソファーがあって座ると、二人の客なのに八人も女の子が集まって酒を飲んで騒いだんだって、ずいぶんサービスがいい店だと思ったら、2時間後に帰るので会計をすると30万円ですと言われて腰が抜けたらしいぞ」
「3,000円ポッキリじゃないんですか?」
「本人の分は3,000円だけど、女の子の飲んだ分とフルーツや珍味などのツマミの分を足すと30万円なんだと」
「そんな馬鹿な! 女の子の飲んだ分の料金にしても高すぎますよ!」
「それが、店の中のメニューには、品物は書かれているけど、その値段は書かれていなかったんだってさ……」
「それは怖い、怖すぎます……」
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