仙術の書
ぢんぞう
第1話「仙術は実在する」
仙術は実在します。
日本にも、中国、韓国、その他いろいろな国に、人類が誕生してから試行錯誤しながらいろいろな国で作られてきました。
どうしたら痛みがとれるのか?
どうしたら病気が治るのか?
体を動かしたり、温めることで治す事ができないかと考えられたのが導引です。
どこまで本当かはわかりませんが……
❃
朝、目を開けたら体が動かなかった。左側の感覚がなかった。
「体が半分なくなった!?」
いや、体はあるが感覚がない。動かすことができない。
右手は動く……
「電話! 救急車……」
今は昭和61年、まだ携帯電話はない。
女性は固定電話まではっていく。小柄でなかなかの美人だ。女優の大原○子によくにている。
「もしもし……」
「はい、こちら119番、火事ですか? 救急ですか?」
「……かっ、かっ、体が無くなったんです」
「……落ち着いて下さい。体が無くなったのですか?」
「ひだり、左側がうごかない」
救急隊員はすぐに理解したようで的確な指示をだした。
「すぐに伺います。同居の方はいますか?」
「……いません……」
「玄関は開けられますか?」
「……大家さんに電話すれば開けられると思います」
「では、今から行きますので玄関を開けられるようにしておいてください」
❃
大家さんに電話して来てもらった。
女性はパジャマ姿だった。しかし、時々、風呂上がりに裸のまま寝ていることがあり、パジャマを着て寝て本当によかった。そんなことを考えていた。
もちろん、裸でも布団はちゃんと掛けて寝ていた。
「オシッコしたい」
膀胱の感覚はあり、オシッコがたまっていた。トイレに行きたいが、とても動けない。
「救急車が来れば病院で看護婦さんにトイレに連れて行ってもらおう」
頭の中はオシッコのことでいっぱいになっていた。
しかし、そこから記憶は無くなった。
次に目を覚ますと病院だった。
「ササキさん、わかりますか?」
「ササキ サトコさん」
「はい……」
「脳出血です。手術はできない所なので薬で様子をみます」
医師が説明している。右脳の中で出血したため左半身が麻痺したそうだ。左の脳で出血してたら言葉がしゃべれなくなる人が多いらしく、言葉に異常がないのはツイているらしい。
22歳で脳卒中になって、ツイているのか……
股間には尿道カテーテルがついていた。
「
❃
半年ほど入院してリハビリをしたが、左足が少し動くようになっただけで左腕はピクリともしない。この状態で退院しなければならない。
目の前には不安しかない。仕事は、生活は……どうしよう、どうしよう。
それでも退院しなければならなかった。
退院後、一人暮らしは無理なので妹が一緒に暮らしてくれることになった。
兄妹は姉、兄、妹、弟と五人兄妹でいっぱいいたが、母親は弟を生む時に出血がひどく、弟を生むとすぐに亡くなった。
サトコは母が死ぬ瞬間を見ていた。息を吸って、そのまま息を吐くことはなく亡くなってしまった。
サトコの中では出産と死が結びつき、子供を生むことに恐怖を持っていた。
男性と付き合ったことはあるが、まだ処女だった。
❃
部屋に戻ったが何もできない。妹に頼よりっぱなしだ。トイレに行くのも大変で、これから、この状態が一生続くと思うと絶望的だった。
そのうち優しい働き者の男性と結婚して子供を作り、家を建てて犬や猫も飼って幸せな生活が待っているものとばかり思っていた。
現実は料理も洗濯もできない、トイレだけでも大変な自分だった。
「お姉ちゃん、『
「何にそれ」
「買い物に行ったら、途中にあったよ」
「ふ~ん、なんかの道場?」
「あれじゃないかな、最近流行りの気功とかヨガとか……健康法教室って書いてあった」
「えっ、ひょっとして、あたしに行けって?」
「うん、うん」
妹は満面の笑みでうなずいている。この妹も小柄だが、なかなかの美人だ。
「病院のリハビリでも治らなかったのよ……」
「今ね、キャンペーンで無料体験できるんだって!」
「無料体験……」
サトコはあまり乗り気ではなかった。とにかく体を動かすのが苦痛だった、できれば薬で治らないかと思っていた。
「無料だよ。無料!」
妹に世話にならなければ生きていけない体では無下に断るわけにもいかず行ってみることにした。
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◐仙術裏話。
仙術は中国で四千年以上前から行われていたと言われています。
昔の人も痛みや病気をなんとかしようと
日本では遣唐使により仙術を書いた巻き物が伝わっていたらしく、江戸時代には職業として行われていた記録がありますが、明治になると政府が医術は西洋医学しか認めなかったため、仙術で病気を治していた者は商売ができなくなり、今ではごく一部にしか残っていません。
この作品はフィクションです。
実在の人物・団体等とは、いっさい関係ありません。
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