第219話 秘密の居残り練習⑦

「明日はバントの練習したいからまた練習終わりに凄美恋ちゃんに付き合ってほしいなー」


「ええよ。なんぼでも手伝ったるわ! あんたの自己犠牲の精神、うちは好きやで!」


「わー、凄美恋ちゃん意外と見た目通り優しんだねー」


「見た目通りなのになんで頭に意外ってつけてんねん! 普通に見た目通り優しいでええやろ!」


「いっつも喋り方がきついから、見た目はお淑やかだけど中身は怖い人なんだと思ってたー」


「関西弁なだけで別にきつないやろ!」


その反応に咲希がいつもの愛想笑いではないしっかりとした笑みを浮かべていて、その顔を見た真希は少し離れた場所からやり取りをみながら、安堵のため息をついた。


「今のチームメイトならきっと信じても大丈夫なのよね……。でも、もし何かあったら、そのときは絶対にわたしだけは咲希のことを守り続けるから……」


誰にも聞こえないように小さな声で呟いていた真希の方に、凄美恋が手を振りながら近づいてくる。


「真希もさっさと片付けて早よ帰ろや。うちめっちゃお腹減ったわ!」


「あの大量のご飯が待っているのに、あんたよくお腹空かせられるわね……」


「運動したらお腹減るし、あのくらい大丈夫やって! 高校生は育ち盛りなんやからいっぱいご飯食べたらええねん」


「育ち盛りって女子高生にも適用される言葉なの……?」


「されるって、うち高校入ってからも身長伸びてるし!」


「わーすみれちゃん、まだまだおっきくなるんだねー。ちょっと身長わけてほしーなー」


「あ、ちょっとズルい、そんなことしたらあんただけ身長150cm超えちゃうじゃないの……! わたしも分けてもらうわ……!」


「いや、うち分けるなんて一言も言ってへんし、玖麗愛くれあみたいに背高くてカッコよくなりたいねんから、分けるなんてせえへんし!」


「いや、玖麗愛って誰よ……!」


「うちらが全国行って勝ち続けたら絶対会える人やで!」


そんな雑談をしながら、3人は合宿所へと戻っていった。

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